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不服なパートナー ⑤

「こんにちは、グスタフ。・・・あら、ケイネス、あなたもいたのね。」


思考の世界に埋没していたケイネスであったが、彼の目前にソラウが現れたことで唐突に現実へと引き戻された。


「二人でなんのお話しをしていたのかしら?」


ふとした調子で無表情のままソラウは尋ねたが、それにグスタフが応答した。


「いやなに、近々に開催される魔術戦大会のパートナー表が掲載されたので、ケイネス殿と一緒に眺めていたところでした。」


それを聞いたソラウは、ゆっくりと掲示板のほうへ目を向けた。


「ソラウ殿は大会には出場なさらないのですかな?」


グスタフは掲示板の張り紙を眺めるソラウに問いかけたが、彼女は大会に対してさして興味が惹かれるといった様子ではなかった。


「魔術戦大会なんていう野蛮なお祭りは殿方たちにお任せするわ。私のような線の細い魔術師が出る幕ではないでしょう。」


「ふうむ、最近では女性魔術師の参加も以前より増えていると聞きますが、残念ですな。ソラウ殿なら上位入賞も十分に狙えますでしょうに。」


ソラウの棘を含ませた返答をグスタフは意にも介さない様子で、むしろ彼女の不参加を心の底から惜しむような表情を見せて答えた。たしかに、ソラウの魔術師としての実力を鑑みれば上位へ食い込むことも可能だろうが、そもそも魔術戦のような荒事に彼女自身が好き好んで参加することはないだろう、とケイネスは思った。



「それで、あなたたちは意中のパートナーと組むことが叶ったのかしら?」


ソラウが再び問いを重ねると、


「私はエルンスト殿と組むことになりました。いや、なんとも頼りがいのあるパートナーを得たものです。ケイネス殿のパートナーを務める光栄なお相手は、フィリッツ殿のようですな。」


グスタフが呑気な面持ちでそう答える一方、ケイネスの頬の筋肉は不愉快そうに僅かに動いた。


「あら、ケイネス。フィリッツは努力家だし、なにより奢ったところがなくて健気でいい子だわ。だから、彼をそんな邪険に扱わないでちょうだい。」


自分では平静を装ったつもりであったが、ソラウには心の奥底を見透かされているようであった。ケイネスは自分の本心を隠すことに早々の白旗を上げ、本音を吐露することにした。


「そうは言うが、魔術戦大会で私の前に立ちはだかる敵たちを打ち倒すために、優秀なパートナーがいるに越したことはない。フィリッツでは戦力としてまるで期待できないではないか。」


心の中に抱いていた不平を愚痴るような口調であった。それを聞いたソラウはケイネスの方へ向き直った。


「あなたのことだから、この大会で敗退することなんて微塵も考えていないのでしょう。要は勝てばいいのよ、ケイネス。たとえフィリッツの支援を享受できなくても、あなた自身の実力のみで勝てばいい。それが難しいと言うならば、フィリッツの潜在能力を生かすような作戦を立てるしかないわ。」


ソラウは冷たい微笑を浮かべながら、ケイネスの弱気に大鉈を振るうように断じた。無論、彼は自分一人でも勝ち抜くつもりでいたが、彼女の挑発的な指摘は多少なりとも彼の神経を逆なでするものがあった。このまま唯々諾々と相手の論説を聞き続けるのも癪であり、なにか効果的な反論はないものかとケイネスは思考を巡らすのであった。


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