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不服なパートナー ④

「グスタフ、君のことだから魔術戦大会には当然参加するのだろう。誰とパートナーを組むのだ?」


ケイネスは頭痛の種から一時的にでも目を逸らすように話題を転じる質問をした。それを聞いてグスタフは掲示板へと歩み寄り、大会参加者の組み合わせ表をじっと見つめ、掲載されているはずの自分の名前を探し始めた。しばらくの時間が経過したのち、彼は嬉しそうに口を開いた。


「ふうむ、私のパートナーはどうやらエルンスト殿のようですな。これは心強い。」


それを耳にして、ケイネスはさらに自分が抱えた不遇な悩みが大きさを増したような気がした。魔術戦大会は二人一組のチームごとに競われる。そのため、対戦相手の能力だけでなく、自身と共闘する者の実力も勝敗を左右する重要な要素となる。パートナーの実戦能力が高く、さらに互いが実力を補い合う、ないし高めあうような相性を有していれば、そのチームの総合力はより盤石なものへとなるわけだ。

 そのような意味で、グスタフとエルンストの組み合わせは脅威的だとケイネスは即座に分析した。容赦なく相手へ向かって突進していき、接近戦へと持ち込むことは信条のグスタフに、遠距離から相手の嫌がる攻撃を的確にしかけるのが得意なエルンストの支援が加われば、少なくとも攻撃面においては全く隙のないチームが出来上がるだろう。それは、今回の大会で優勝候補の一角を担う恐るべきチームが生まれたことを意味する。


「そうか、君はエルンストと組むのか・・・。」


ため息交じりにケイネスは呟いた。大会参加の応募は自由だが、パートナーの組み合わせは出場者ではなく主催者側、つまり時計塔内の当局により決定される。参加者の選出およびパートナーを決定する方法は公表されていないが、その決定に異議を唱えることは許されていない。つまり、ケイネスはこの大会を頼りないパートナーであるフィリッツとともに勝ち進めなければならないのであった。

 ケイネスはもはや魔術戦大会を単独で勝ち抜くための算段を始めていた。自分のパートナーが戦力として計算できない以上、自分一人の実力で優勝をもぎ取らなければならない。有象無象の参加者たちはケイネス一人の戦力でも十分な勝算が見込めたが、目の前に立ちはだかるグスタフのチームにはどう対処すべきか。頭の中で様々なシミュレーションを展開させて勝ちへとつながる糸口を探し始め、次第にそれに意識を集中させていった。


「グスタフの近接攻撃に対処すべきだろうが、その際に遠方から飛来するであろうエルンストの攻撃にどう対処すべきか。先にエルンストの身動きを封じるべきであろうが、その際にグスタフの猪突な攻撃をどのようにしのぎ切るか。攻撃と防御を同時に叶えるために適した魔術を組むためには・・・。」


ケイネスの意識は近い将来に繰り広げられるであろう彼らとの戦いへと向かっていき、隣にいるグスタフの存在すらも忘却してしまうほどであった。彼の想像力の船は次第に速度と大きさを増していき、周囲の状況から急激にかけ離れていくのであった。



戦略の立案に没頭していたその時であった。


「おや、ソラウ殿ではありませんか。ご機嫌いかがですかな。」


グスタフのその一言を聞いた瞬間、遠い海の水平線の向こう側に沈んでいたケイネスの意識は急激に現実へと引っ張り出されたのであった。


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