第二十八話
スラスラがその液体特有の体を弾丸のように打ち出した。
うちのパーティーで中距離、遠距離に攻撃できるのはスラスラだけだ。
スラスラはそれを理解していたのだろうか。スラスラがこの一週間で、特に鍛えたのが中、遠距離というのはスラスラなりにうちのパーティーの欠点を補おうとしてくれたのかもしれない。
スラスラの放った弾丸は前よりも速く、正確だ。
横に跳んでかわしたクラウスへ、弾丸の雨は降り注いでいく。機関銃の連射とでも言おうか。それらを彷彿とさせるかのような連撃がクラウスを襲う。
クラウスは大剣の腹を盾に見立てるようにはじきながら、迫ってきた。スラスラの連射を受けても、怯む様子がないのは、さすがだった。
ゴブッチとルフルがとびかかる。だが、クラウスはそれを剣を振ってはじき。あっさりと動く。今のゴブッチたちの攻撃でさえ、あれで捌けるのか。
ゴブッチたちにかわり、俺が突っ込んだ。お互いの武器がぶつかる距離。そこで振りぬいた。
キンッ! という激しい音が響き、俺がよろめく。だが、クラウスもまた怯んだ。
力は互角……以前と違い、全力が出せている。……だから、勝つ!
武器の強度だって、負けていない――いや、超えているはずだ。
この武器を作った司の思いが伝わってくる。彼の名を汚さないためにも、俺は剣を振りぬく。
以前とは比べ物にならないほどの頑丈さだ。
よろめいたクラウスは笑みを浮かべ、踏み込む。
立ち直りが早い。俺も負けじと体勢を戻して、剣を振りぬいた。
近距離での打ち合いだ。一度でもはじくのをミスれば、腕がしびれ、まともに動けなくなっていたかもしれない。
だが、すべて捌いていた。そこへ、
「ウル!」
ルフルが背後から噛みついた。
クラウスの動きが鈍る。クラウスは表情を一切乱さなかったが、痛みは確実にあるはずだ。
怯んだクラウスの肩に俺の剣が当たる。
ゴブッチの武器がクラウスの頭を背後から殴りつける。
クラウスはすべてをまともに受けながらも、視線を俺に向けていた。
「周囲に攻撃するから、離れたほうがいいぞ?」
クラウスのアドバイス。それらを理解した俺たちが後退する。
彼が周囲を薙ぎ払うように大剣を振り回した。
斬撃が周囲数メートルを襲う。かわしきれなかったゴブッチの左腕を捕らえた。
「ご、ゴブ……っ」
ゴブッチはしかし、すぐにポーションを使って回復する。その隙を狙うようにクラウスが迫ったが、スラスラの弾丸が二体の間を妨害するように放たれた。
クラウスの背後へ、ルフルが飛びつく。回るように大剣を振り回したクラウスの一撃に、ルフルが切り付けられ、その体を両断される。
うちのパーティーで仲間になった順番はルフルが最後だ。やはりゴブッチたちと比較するとわずかに能力が低かった。
だが、それでも十分すぎるだけの活躍をしてくれた。
ルフルが作ってくれた隙へと突っ込み、俺は剣を突き刺した。
クラウスの胸に剣が突き刺さると、クラウスはごぼっと血を吐きだした。
視線がこちらを向く。
「まだ……終わりじゃない。気を付けるんだ」
……人間とは違う、ってわけか。
心臓を貫いたはずだ。それでいて、まだ動ける。
彼は大剣とともに振り返ってきた。
たたっと地面を蹴りつけ、後退する。
次の瞬間だった。クラウスの剣が光を放つ。
あのとき食らった連撃を思い出す。俺は彼を注視しながら、スラスラをステータスカードに戻し、再召喚を行っているとクラウスが動いた。
彼の体がぶれる。残像が見えるほどだ。それはあまりの速度ゆえの残像――。
右から大剣が襲い掛かってきた。気づいた次には、左から。
即座に反応し、俺は受けていく。
彼の剣は速く、重たい。だが、それでも、自分のステータスを信じる。今の俺は彼を超えているんだと、強く強く思い続ける。
迷いなく剣を振りぬき、そして、切り上げる。
正面から突っ込んできた彼の突きをはじき上げた。
驚いたように目を見開いた彼は、口元を緩めた。
「今のを捌ききったんだな」
クラウスの体を袈裟斬りしたにもかかわらず、彼は笑っている。
その腹へと、ゴブッチが突っ込んだ。
同時、スラスラが俺の近くにやってきて、ポーションをかけてくれる。
ゴブッチの一撃を受けたクラウスは一瞬よろめいたが、踏ん張る。
今のでも、仕留めた、とはいかないか。
だが、通じている……。
前ほどの絶望感はない。
クラウスは俺たちから距離をあけるように後退し、大剣をすっと構えた。
地面と平行になるように持ち上げた彼の構えは、初めてみるものだった。
「次はさっきよりも、速い。だから……気を付けるんだぞ」
それは忠告だ。
クラウスの言葉を受けた瞬間、俺のほうにスラスラが近づいてくる。
クラウスの体を注視していた俺はその体がぶれるのを見て――すぐに剣を振りぬいた。
キンッ、という金属音が響いた。
彼の剣を受けた俺は、あまりの重たさに顔をしかめる。
体勢が不利だったのもあるかもしれない。クラウスの剣に抵抗するように力を込めた俺だったが、はじきあげられた。
剣を握りしめ続けた点に関してだけは、自分を評価できた。
だが、両腕は隙だらけにはじき上げられ、無防備にさらされた胴へ、クラウスの大剣が振り下ろされた。
「がぁっ!」
痛みが襲った。だが、すぐに俺は剣を握りしめる。
ぐっと奥歯をかみ、クラウスをにらみつける。そして、剣を振り抜いた。




