第二十二話
今週の実紅は、俺と一緒に必ず登校するということはなくなった。
実紅は閃光魔法石と爆弾魔法石の作成をするためだ。
それらの作成を行ったり、調べ物をしてくれていた。
彼女がした調べ物の一つは、俺のステータスの限界突破について。
それについては、現在何の情報もなかった。
ただ、歴史上見ても、S(100)のステータスに到達した人がいないというのも、一つの可能性ではないか、と彼女は見解を示した。
だいたいの人は、そこに到達する前にレベルアップするか、成長の限界に到達する。
だから、実は誰でもSS、SSSに到達する可能性は秘めているのではないかということだ。
これはもしかしたら、少なからず当てはまるのかもしれない。
最初に誰かがS(100)が限界なのではないか? と予想し、いつの間にかそれが真になってしまっただけという可能性もある。
そして、次に調べたことが俺のサモン能力についてだ。何かを召喚できるスキルはサモン系と言われる。
数こそ少ないが、まったくないわけではない。ただ、それらと俺の召喚の仕方は違うらしいが。
サモン系スキルは、基本的に初めに召喚した魔物のみが使えるらしい。
俺のように、何かを指定して召喚するわけではなく、それらのサモン系スキルは完全にランダム。
ドラゴンが出ることもあれば、ゴブリンが出ることだってある。
最初の契約次第だ。まさに、サーヴァントカードと同じガチャだ。
正直いって、当たり外れの多いスキル。スキルのランク次第で契約出来る魔物の幅も広がるみたいだが、あくまで広がるだけ。
ランクがあがっても、ゴブリンが出る可能性は残る。そこでゴブリンを引いたらほとんど死にスキル、とまで言われる悲しいスキルだ。
そんなサモン系スキルと、サーヴァントカード。
この2つは、現在発見されている魔物の一覧がネットにあったそうだ。
実紅が教えてくれたサイトをざっと見たところ、ゴブリンとスライムはその一覧にあった魔物だ。
逆に、ゴブリン亜種、スライム亜種、プラントは、これまでに確認されていない魔物たちだった。
つまり、俺のスキルもこれらと同じで仲間にできる魔物が決まっているんじゃないか? ということだ。
そして、ウルフはその魔物一覧に載っていた。だから、仲間にできるのではないか? という予想もあり、俺たちは先に第八階層に行こうとしていた。
もしも駄目だったら、せっかく実紅が調べてくれた情報が無駄になる。実紅を落ち込ませないためにもウルフには仲間になってもらう必要がある。
第八階層についた俺たちは、いつものようにウルフを探す。
できれば一体――ただ、ウルフは実紅の魔法も通用するし、二体でもどうにかなると思う。
結局、妥協して二体で行動していたウルフを見つけ、俺たちはゆっくりと近づく。
ウルフの鼻がぴくりと反応した。やはり狼なだけあって、鼻が良い。
毛は薄めの茶色だ。体は大人が乗っても問題なさそうなくらいしっかりしている。大型犬……より少し大きいかもしれない。
あれに飛びつかれたら、じゃれるでは済まなそうだ。
こちらに気づいたウルフたちの唸り声を合図に、戦闘が始まった。
剣を振り抜くが、ウルフはそこにいない。
ぐっ。痛いな。
タックルだ。
すぐに体勢を戻し、剣を振る。しかし、速い。
今の俺でも、どうにか目で追えるくらいだ。
大振りは当たらない。
小回りがきくように剣を振る。
ウルフが噛み付いてこようとするので、それだけは絶対に避ける。
二体の相手は厳しかったかもしれない。
そのとき、ゴブッチが閃光魔法石を持ち上げた。
良い判断だ。
「頼むっ」
俺が声をあげると同時、ゴブッチが魔法石を投げた。
俺はちゃんと目を覆っていたが、ウルフたちは気づかない。
その場で暴れるウルフを無視して、三人で一体を集中的に狙う。
閃光が途切れそうになったところで、実紅の魔法が一体を焼き尽くした。
いいぞ。俺はすぐに素材を吸収する。スキル等の確認は後回し。
ステータスが向上したのがわかった。おかげで、もう一体のウルフを捌けるくらいになった。
俺にひきつけ、隙ができたところでゴブッチとスラスラが仕留める。
素材を回収したところで、一度階段へと避難する。
深呼吸を繰り返し、呼吸を整えながらさらに素材と魔石を吸収する。
そして、ステータスカードを取り出した。
鏑木健吾『竜胆実紅の敵にのみ使う』
レベル0
物攻SSS(178)物防SSS(174)魔攻SSS(167)魔防SSS(169)敏捷SSS(180)技術SSS(176)
スキル
『吸収:EX』
→『ゴブッチ レベル1』
→『スラスラ レベル1』
→『ウルフ』
やはり、ウルフは仲間に出来た。
たぶんだが、実紅の予想どおりなんだろう。さすが実紅だ。こんなことに気づくなんて本当天才。そして自分の予想が当たったことを喜ぶように笑って、こちらを覗きこんでいる。めっちゃカワイイ。
「やったわね」
「ああ、実紅の言っていたとおりだね」
実紅とハイタッチしつつ、俺は早速ウルフを召喚することにした。
召喚すると、ウルフはすっとおすわりした状態で現れた。階段で召喚するには少し大きかったな。
スラスラとゴブッチ二匹よりも大きいウルフは、俺に気づくとすりすりと体を寄せてきた。
まさに犬みたいなヤツだ。ベロベロと舐めてくるので、俺は頭を撫でてやった。
ていうか、うまく扱わないとこのまま押し倒されそうだ。
「ウル!」
これで鳴き声がワンだったら完全に犬だね。
実紅もウルフに目を輝かせ、顔を近づける。
ウルフが気づくとすりすりと体を寄せている。実紅もすりすりとお返ししていた。もふもふを堪能しているようだ。
羨ましい……ウルフが。俺も実紅にすりすりしてみたかった。だが、そんなことを口に出したら引かれてしまうのでは?
最近まずい気がする。引かれてしまうのでは? リストを作ったらずらっと箇条書きが並びそうだ。
「名前は決めているのかしら?」
「うーん……ポチとか?」
「ウルウル」
ウルフはぶんぶんと首を振った。……どうやら駄目らしい。
「ウルウル…………ルフル?」
「ウル!」
実紅の提案にウルフは頷いた。
実紅がどこからどう変換してルフルにたどり着いたのかは気になったが、ウルフが気に入っているようなのでそれでいい。
実紅のネーミングはどれもカワイイ。やはり本人の可愛さが出ているんだ。
「じゃあ、おまえはルフルで」
名前が決まると、ステータスカードの表記も変わっていた。
よし、とりあえずウルフのレベル上げから始めないとな。
「……ねえ、健吾。私天才的なことを思いついちゃったわ」
「何だ?」
「ルフルにのって移動できないかしら」
「ウル!」
ルフルはやる気十分だ。確かに……ここまでの階層を移動するとなると、さすがにもう徒歩だと移動だけでも結構時間がかかる。
実紅は天才か……と思ったけど、彼女の場合ただただ乗りたそうであった。そのうずうずとした姿は可愛らしい……。俺がウルフになれれば、実紅を背中に乗せて走りまわってあげるのに……。
とりあえず七階層にあがり、ルフルの背に乗る。
そして、走り出した。……うおっ! 思っていたよりもかなり速い。
毛皮を反射的に掴んだが、ルフルは……大丈夫そうだ。
ルフルは楽しそうに、鼻歌でもうたうように走っている。
……これなら、一階層あたり五分とかからず横断できそうだ。
「あははっ! 私、小さい頃から犬の背中に乗って走るのが夢だったのよ!」
楽しそうだな、実紅は。
実紅は俺にくっつくように乗っているため、俺ほどふんばりはいらないんだろう。
今の実紅はなにかに似てると思ったら、鯉のぼりだった。




