表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/49

42 話『終焉の序曲:B1 最終防衛ライン』

 B2は、もはや施設ではなかった。

 解き放たれた十の災厄が、秩序という概念そのものを内側から食い破っていく。

 断続的に響く破砕音。短い悲鳴。途切れる通信。

 すべては「処理済み」へと変わっていく。

 ダリストは振り返らない。

 そこはもう、自分の領域ではない。

 彼の外側で稼働する“機能”だ。

 ――破壊。制圧。攪乱。

 すべて、予定通り。

 黒翼が脈動する。

 多足が壁を掴み、重力を踏み越えて垂直に駆け上がる。

 翼の内側。

 三つの小さな鼓動。

 キラー。ゼウス。イシュタル。

 彼らはまだ知らない。

 この下で何が崩壊しているのかを。

 ただ一つだけ理解していた。

 ――この怪物の中だけが、異様に静かだということ。

「……もうすぐだ」

 低い声。地の底から響くような音。

 赤眼が上層を射抜く。

 配置。火力。射線。指揮系統。

 それらはもはや情報ではなく、“構造”として見えていた。

(ここが、頭だ)

 天井のハッチが迫る。

 その向こうには、明確な殺意の密度。

 ――迎撃ライン。

 アバラの腕が展開する。

 高圧ガス。毒性流体。生体触媒。

 すべてが一点へ圧縮される。

 ――解放。

 轟音。

 ハッチが内側から破裂し、構造ごと吹き飛ぶ。

 白い光が視界へ流れ込んだ。

 B1。

 無菌でも混沌でもない。

 ――“勝つ側”が定義する空間。

 ダリストは静かに着地する。

 多足が床を捉え、金属が短く鳴る。

 その瞬間、世界が“固定”された。

 視界の先。

 整列した数百の自動歩兵。

 揺らがない銃口。

 そして中央に立つ一人の男。

「……確認した」

 淡々とした声。

「B3単独突破。B2制圧。管理権限奪取」

 一拍。

「脅威度、最上位」

 銃口が同時に咲く。

 心臓。喉。脳。関節。翼の付け根。

 すべてが“殺害前提の座標”として固定される。

「ここで処理する」

 ダリストは翼を閉じる。

 その内側。

 三つの命が息をしている。

(今度は、落とさない)

 その思考は感情ではない。

 既に積み上げられた“結果の予測”だった。

 腕が動く。

 一つは地面へ。

 一つは空間へ。

 一つは自身の内部へ。

 大気が変質する。

 毒が“式”に変わる。

 肉体が“媒介”へと書き換わる。

 視界の奥で弾道が走る。

 数百の未来。

 その中から一つだけが選ばれる。

 ――最も「喰える軌道」。

 赤眼が完全に開く。

「……来い」

 それは挑発ではない。

 確定済みの未来の呼び出しだった。

 男の手が振り下ろされる。

 同時に、世界が焼ける。

鋼鉄の獅子:リアム(改訂)

 空間が潰れた。

 白が圧力へ変わる。

 その中で、男の肉体が“剥がれる”。

 骨が再構成される音。

 装甲が肉を飲み込む音。

 やがて現れるのは――

 鋼の獅子。

 赤い金属皮膚。

 獣の頭部。

 機械化された胸郭。

 四枚の制御翼。

「教えてやろう」

 複数の声が重なる。

「軍の完成体とは何かを」

「我は実験体Z……リアム」

 ダリストは構える。

 多足が沈む。

 翼が閉じる。

 その内側に三つの命。

「俺は……ダリストだ」

 世界が破裂した。

 ――ドォンッ!!

 リアムが“消える”。

 次の瞬間、目の前にいる。

 衝突。

「――ッ!!」

 受ける。

 逃げない。避けない。

 四本の腕が衝撃を止める。

 骨が軋む。装甲が割れる。

 床が沈む。

 リアムが嗤う。

「守るか」

「それが未完成だ」

 翼が震える。

 不可視の斬撃。

 ダリストの翼が裂ける。

 血が散る。

 それでも。

 一歩も退かない。

(解析完了)

 赤眼が一点を捉える。

 胸部装甲。

 その奥の鼓動。

(そこだ)

 踏み込む。

 銃火。

 破片。

 弾道が重なり合い、空間が“閉じる”。

 逃げ道は消える。

 リアムの動きが止まる。

 ――0.1秒。

 ダリストのすべてが収束する。

「……全部」

 低い声。

「喰らう」

 B1の白が消える。

 残るのは――

 赤と黒と、火花だけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ