18.不穏な招待状
アレンが定期的に訪問する――それは私だけではなく、離宮について来させられた侍従たちをもざわつかせた。
身体の弱い王子妃を離宮に追い遣り冷遇している王子が、急に訪ねてくるようになった――と。
傍から見れば意味が分からないことこの上ない。
事情を知っている私ですら意味が分からない。
そして、もっと意味が分からないことが起きてしまった。
私のもとに、とある招待状が届いたのだ。
それはまさしく、離宮ライフを脅かす第二の刺客でしかない。
「王宮の庭園でお茶会しませんか、ってことね」
丁寧にしたためられた文章はたくさんの言葉で飾られていたが、そうするにそういうことだった。
差出人の名前には覚えがない。侍女に聞いてみると、それは第一王子派閥の公爵令嬢とのこと。
第一王子ということは、アレンの兄だ。
それがわざわざどうして、第二王子の妻であるレティを招待したのか。
「出席しないといけない……?」
「ご気分やお身体が優れないようでしたら、その旨でお返事いただければと思いますが……」
髪を梳かしてくれている侍女が首を傾げた。
ああ、出た方が良いのだろう。それはそうだろうけど、究極に面倒くさい。
ただでさえアレンが訪問するせいで自由な時間が削られているというのに。
表向きは交流会とはいえ、平民上がり(ということになっている)レティを値踏みする気満々なはずだもの。
そんな女達が犇き合っているような戦場に突撃したくはない。
でも、ちょっと興味はある。
第一王子派閥のご令嬢がどんな意図で招待してきたのかも気になる。
アレンが隣国の件をごく一部にしか伝えていないと言っていたけれど、王宮内の状況も少し気になる。
(……完全に興味本位だけど)
私は鏡越しに侍女を見た。
「……出席します。そう伝えていただけますか」
「はい。かしこまりました」
面倒臭いけど、好奇心が勝った。
一度くらい出席しておいても良い、はず。
「レティ様」
侍女が少し心配そうにしながら言った。
「ご招待くださった方を含め、ご出席される皆さまのお名前とお顔を知っておく方が良いかと思われます」
「……そう、よね」
「はい。一度確認の上、お伝えさせていただく形でよろしいでしょうか?」
「……お願いします」
確かに何も知らないままだと、厄介なことになりそうな気配はしている。
ああ、面倒ごとが増えてしまった。
私のげんなりとした顔をどう勘違いしたのか、侍女は更に心配そうに言った。
「もしお身体に障るようでしたら欠席をお伝えいたしますので、当日でもお申し付けください」
「ええ……大丈夫です。でも、そのときはお願いします」
そう、私はカラダが弱くて第二王子に冷遇されている地味な娘。
アレンが離宮に通うのなら、少しくらい王族としての務めを果たす必要もある、はず。
それは分かっているけれど、急速に気が乗らなくなってきた。
でも、仕方ない。
好奇心は確かにあったから。




