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第59話 王子、三たび失態

「また、同じ場所にいます」


 ミアが窓の外を見た。


 向かいの路地。街灯の光が届くぎりぎりの場所に、暗い外套の人物が立っていた。


 こちらが視線を向けると、顔を伏せる。買物をする様子も、誰かを待つ様子もない。


「今日で、7日目っす」


 ロウが小さな記録札を出した。


「毎日ではないです。僕が見たのは4回。ミアさんが3回。夜の10時から11時の間が多いっす」


「同じ人だと言い切れる?」


「背丈と外套は似ています。でも、顔は分からないです」


「それにしても、隠れるのが下手ですね。毎回同じ角、同じ立ち方、同じ外套です」


「怪しい人の制服でもあるんすかね」


「そんな制服、どこで支給するのよ」


「『初心者向け監視セット。外套、深くかぶる帽子、意味もなく壁にもたれる権利つき』とか」


「権利はいらないでしょう!」


 ツッコミながら、笑い切れなかった。下手でも、見られている事実は変わらない。


 私は、追いかけたい気持ちを抑えた。


「声をかけたり、取り押さえたりはしないで。私たちが記録するのは、見た時刻と行動だけ。その人が何を考えているかは書かない」


 アンナが警備隊の連絡先を確認する。


「店員の帰宅経路を変え、二人以上で移動させます。警備隊には巡回を相談しますが、犯罪者として扱うよう求めてはなりませんね」


「ええ。見ているだけなら、不気味でも犯罪とは限らないもの」


 自分で言いながら、胸の奥は落ち着かなかった。


 ヴェルナー商会の妨害が終わり、議会の停止案も退けた。ようやく店を育てることへ集中できると思った時に、また誰かの視線がある。


 成功し続けなければ、今度こそすべてを取り上げられる。


 そんな古い恐れが、窓に映る自分の背後へ立っていた。


「リリアーナ様、手が冷たいです」


 アンナが記録札を受け取るふりで、私の指へ触れた。


「平気よ」


「そう言う時は、平気ではありません」


「……少しだけ、怖い。でも、今度は一人じゃないわ」


「はい。ですから、一人で追いかけるのも禁止です」


「そこまで無謀じゃない!」


「第1話からの実績を踏まえた判断です」


 反論できない。私の信用、薄い。監視者より先に、味方から行動制限を食らった。


◇◇◇


 翌朝、王都の街角にビラが貼られた。


『夜明けの星は、魔族勢力の侵入を助ける工作組織である』


 根拠として書かれていたのは、魔族客が来ること、国境店の相談をしたこと、交易語を学ぶ店員がいること。


 事実を3つ並べ、その間を恐ろしい言葉でつないでいた。


「私が交易語を勉強したら、工作員になるんですか」


 ミアが、剥がされたビラを見つめる。


 怒っているというより、傷ついていた。


「ならないわ」


「おにぎりを売って、肉まんを蒸して、交易語を覚えたら国家転覆……忙しすぎません? 工作員って、もっとこう、黒い服で屋根を走ったりするんじゃないんですか!」


「それはたぶん別の職業よ」


「私、屋根なんて走れません。昨日だって平らな床でつまずきました!」


「そこで潔白を証明するのはやめて。別の不安が生まれるから」


 ミアは笑いかけたが、ビラへ目を戻すと唇が震えた。


「でも、信じる人もいますよね」


「もしお客様が来なくなったら、私が交易語を勉強したせいですか。ガルスさんを採ったせい? ヴォルガーさんと一緒にご飯を食べたせい? そんなのおかしいって分かってるのに……悔しいです。やっと普通に話せるようになってきたのに!」


「いるかもしれない。確かめる材料がなければ、不安な話ほど心に残るもの」


「でも、あなたが誰かと話したことを恥じる必要はない。説明するのは、私たちの営業と計画よ。あなたの友情を裁かせはしないわ」


 店頭へ反論の紙を貼る前に、アンナが私の筆を止めた。


「ビラの文章をすべて転載すると、こちらが噂を広げることになります」


「では、何を書く?」


「確認できる事実だけを」


 国境店は未決定で、現地調査前であること。店内へ両国の軍事施設を置かず、顧客情報を監視目的で渡さないこと。現在の営業許可と監査窓口。疑問があれば、店員個人ではなく責任者へ問い合わせること。


 ヴォルガーにも、弁明のために店頭へ立ってもらうことはしなかった。


「私が『危険ではありません』と言えば、役に立つでしょうか」


「あなたに、自分が安全な客だと証明させたくありません」


「ありがたい言葉です。ですが……正直に言えば、またか、とも思いました」


 ヴォルガーの指が、折り目を強く押した。


「店へ入るたびに、武器はない、敵意はない、常識はあると証明し続ける。私はただ、夜食の大根にするか卵にするか悩みたいだけなのですが」


「そこは両方でよくないですか?」


「予算という強敵がいます」


「国家より身近で手強いやつですね……」


 ミアの返事に、ヴォルガーの口元がやっと緩んだ。


 ヴォルガーはしばらく黙り、やがてビラを小さく畳んだ。


「ありがとうございます。ですが、必要なら商業連合として、国境協議の記録は公開します」


「その時は、私たちと同じ範囲でお願いします」


 噂へ怒鳴り返すのではなく、確かめられる扉を開ける。


 それが最初の対応になった。


◇◇◇


 昼過ぎ、3人の税務調査官が王都店へ来た。


「匿名の通報により、緊急の帳簿確認を行います」


 店内にいたロウが身構える。


「どなたからの通報ですか?」


「通報者に関する情報は開示できません」


 調査官は冷静に答えた。


 私は、身分証、調査命令の番号、対象期間、持ち出す書類の範囲を確認した。王宮の税務窓口へ別の伝令を送り、命令が正規のものだと確かめる。


「営業中の現金と、確認する帳簿を分けます。原本を持ち出す場合は、預かり証をお願いします」


「当然です」


 調査は3時間に及んだ。


 売上札と入金。仕入れ代金。従業員賃金。物流センターの改修費。寒波支援で無料提供した食品の記録。


 調査官は、集配センターの初期費用と運用費を別に記載するよう、1か所の修正を求めた。税額へ影響する不正ではなかった。


「重大な申告漏れや、二重帳簿は確認されませんでした」


 責任者が結果書へ署名した。


「匿名通報の内容は、虚偽だったのですか?」


「調査した範囲で、裏づけは得られませんでした。それ以上は申し上げられません」


「分かりました。職務へ協力いただき、ありがとうございます」


 外向きには優雅に。元王女らしく。にこやかに。


 内心は、3時間返してぇぇぇっ! である。


 帳簿をそろえ、質問へ答え、客へ頭を下げ、その間にもおでんは煮え、肉まんは蒸し上がる。営業は止まってくれない。悪意ある誰かは匿名の紙一枚。こちらは3時間と何人分もの手を取られる。腹が立たない方がおかしい。


「顔が笑っていませんよ」


 アンナが小声で言う。


「頬は笑ってるわ」


「目が帳簿を投げたがっています」


「投げない。帳簿に罪はないもの」


 店に問題がないからといって、調査官を敵扱いすることはできない。通報があれば確かめるのが彼らの仕事だ。


 けれど、3時間分の対応と、不安そうに帰った客は戻らない。


 虚偽の通報には、帳簿へ載りにくい被害があった。


 その夜、開店準備中の扉へ、一枚の命令書が貼られていた。


『王命により、夜明けの星全店舗の営業を即時停止する』


 王宮の紋章。赤い封蝋。硬い文体。


 紙を見た瞬間、広間の床へ落ちた追放命令書が脳裏に戻った。


 何を言っても聞かれず、決められた言葉だけを渡された日。


「リリアーナ様?」


 アンナの声が、遠く聞こえる。


「……ごめんなさい。今、触れないで」


 私は紙から一歩下がった。


 以前なら、平気な顔を作って一人で剥がしたかもしれない。


「アンナ。確認を、お願いしてもいい?」


 助けを求めた自分の声が、情けないほど細かった。


「この紙が本物だったら、また全部なくなるって……頭では違うと分かっているのに、足が動かないの」


「動かなくて結構です」


 アンナは迷わず私と紙の間へ立った。


「今度は、命令書一枚にリリアーナ様を一人で向き合わせません。確認する者も、記録する者も、証人もおります」


「……ありがとう」


 喉の奥が熱くなった。昔は、紙を突きつける人ばかりだった。今は、紙から私を守り、正しいか確かめてくれる人がいる。


「もちろんです」


 アンナは扉の前に縄を張り、誰も紙へ触れないようにした。レオナルド・ブランクが、離れた場所から様式を確認する。


「王宮文書として不自然な点があります。ただし、私の判断だけで偽物とは断定できません」


 正規窓口へ命令番号を照会し、警備隊と王宮書記官を呼ぶ。


 書記官は、紙と封蝋を記録したあと、はっきり告げた。


「この番号の停止命令は存在しません。紋章の配置も、現行様式ではありません」


 偽文書は証拠袋へ収められた。


 私たちは、書記官が署名した『営業許可は有効である』という確認書を入口へ掲げ、予定どおり午前0時に店を開けた。


「本当に、大丈夫なんですね?」


 最初の客が尋ねる。


「はい。こちらが王宮の確認書です。不安でしたら、記載された窓口でも確かめられます」


「でも、王宮の紋章がありましたよ。俺たちみたいな普通の客に、偽物かどうかなんて分かりません」


「分からなくて当然です。だから、見抜けなかった方を責めません。今後は入口に正規命令の確認方法を常設します」


「信じなかったって、怒らないんですか」


「私だって一瞬、信じかけました。怒るなら、確かめにくい偽物を貼った相手へ怒ります」


 私の言葉を信じて、とは言わなかった。


 信頼してほしい時ほど、相手が自分で確かめられる道を示したかった。


◇◇◇


 翌日、偽文書を印刷した店の主人が、印刷業者組合を通じて司法部へ届け出た。


 発注者は「王子の代理」を名乗り、急ぎ料金を現金で支払った。主人は王宮文書を街の印刷所へ頼むことを不審に思い、依頼票と紙の切れ端、受取人の署名を保管していた。


 ビラを配った者の一人も、賃金の支払いが途絶えたため、雇い主との受領札を持って警備隊へ相談した。


「発注票を残して、署名もして、私印まで使って、配布者への支払い札もあるんですか?」


 ミアが指を折りながら数える。


「ええ。証拠が、こちらへ向かって整列して歩いてきてるわね」


「ザッ、ザッ、ザッ! 証拠一同、ただいま到着しました!」


「楽しそうに行進させないで。まだ王子が命じた証拠とは限らないわ」


「でも、もう少し隠す努力はしてほしいっすね。調べる人も肩透かしっす」


「犯罪者へ改善提案しないで!」


「これで、ローラン王子の仕業だと証明できますか?」


 ゼルドが尋ねる。


「いいえ」


 司法官は首を振った。


「『王子の代理』と名乗る者が、本当に王子の命令を受けたとは限りません。誰かが王子を陥れるため、名を使った可能性も調べます」


 その慎重さに、私は救われた。


 私がローランを疑っていることと、罪が証明されたことは別だ。


 数日後、王宮の侍従エドガルドが証言を申し出た。


 彼は最初、私へ直接会いたいと言った。しかしアンナは、司法官と証言者保護を担当する官吏の同席を求めた。


「店主が証言を誘導した、と言われないためです」


 記録室で、エドガルドは顔色を失っていた。


「私は、ローラン殿下の命令で、ビラの文章を清書しました。印刷所へ行く者を手配し、税務への通報文も届けました」


「最初のビラを渡した時、私は止めませんでした。内容が幼稚だから、誰も信じないと思った。偽通報も、調査すれば問題なしで終わると。そうやって一つずつ、『大した被害ではない』と自分へ言い聞かせたんです」


 エドガルドの爪が、手の甲へ食い込んでいた。


「でも小さい悪事を運び続けた先に、偽の王命があった。突然ひどくなったんじゃない。私が『これくらいなら』と何度も道を作ったんです」


「偽命令書については?」


 司法官が尋ねる。


「止めるべきだと言いました。それでも命じられ、王子の私印を代理人へ渡しました」


「命令を示す記録はありますか?」


「王子の執務帳に、支払いの記号があります。私が帳簿の写しを保管しました。原本の場所も証言します」


 声は震えていたが、言葉は具体的だった。


「なぜ、今になって話すのですか?」


「偽命令書を見た客が、店の前で泣いていたと聞きました。私は命令に従っただけだと思おうとした。でも、紙を運び、金を渡したのは私です」


 エドガルドは私へ向き直った。


「申し訳ありません」


「謝れば許されるとは思っていません。証言したから勇気ある者だと褒められたいわけでもない。……いえ、嘘です。心のどこかでは、今からでも善人に戻りたい。そんな自分が一番、卑怯で悔しい」


 すぐに「許します」と言えなかった。


 私の前で頭を下げる人を許さなければ、狭量に見えるかもしれない。けれど、許しは見栄のために差し出すものではない。


「証言してくださったことには、感謝します」


 私はそれだけを答えた。


「でも、傷ついたのは私だけではありません。責任については、正式な判断を受けてください」


「はい。そのつもりです」


 エドガルドには保護場所が用意され、店との接触は審理が終わるまで止められた。


◇◇◇


 司法部は、エドガルドの証言だけで結論を出さなかった。


 王子の執務帳に残る支出。印刷所の依頼票。代理人の署名。私印の貸出記録。ビラ配布者への支払い。税務通報文に使われた紙。


 それぞれが照合され、複数の証人が別々に聴取された。


 ローランにも弁明の機会が与えられた。


 彼は最初、侍従が勝手にしたと主張した。けれど、自筆の修正と支払い記号について説明できず、偽造命令書を作らせた事実が認定された。


 王都新聞は、『ローラン王子、王宮文書偽造の疑い』と報じた。


 確定前の記事には「疑い」と書かれ、証言者の保護場所や家族の名は伏せられた。


 ある新聞社は200人の街頭調査を行い、王子を次代の王にふさわしいと答えた者が5%、継承候補から外すべきだと答えた者が70%だったと載せた。


 けれど、王都の一角で行った小さな調査だ。王国全体の意思ではないし、それが罪を決めるわけでもない。


 店では、ローランを笑う乾杯を断った。


「因果応報だろ?」


 ディランが言う。


「処分が決まるまでは、事実だけを見ましょう」


「店長は、悔しくないのか」


「悔しいわ」


 私は正直に答えた。


「怖かったし、腹も立った。でも、相手を笑うことと、店を守ることは別よ」


 ミアが、偽命令書の跡が残る扉を布で磨いた。


「私は、二度とあんな紙を見たくありません」


「ええ。だから、次から確認にかかる時間をもっと短くしましょう」


 感情を消すのではなく、次の手順へ変える。


 全店舗に、行政命令の照会先、営業継続を判断する責任者、証拠を保全する方法を配った。


◇◇◇


 数日後、国王と王族評議会の名で正式な処分が発表された。


 ローランは、王位継承権を剥奪された。


 その一文を読んだ瞬間、胸の奥で何かがドスンと落ちた。


 やった。終わった。ざまあみなさい。


 叫びたい私も、確かにいた。


 悔しかった。役立たずと捨てられ、立ち上がるたびに足を引かれた。何度「もう放っておいてよ!」と叫びたかったか分からない。


 けれど、紙を握る手は少しも晴れやかではなかった。


「喜んでも、いいんですよ」


 ミアが遠慮がちに言う。


「喜んでるわ。これでも」


「複雑な喜び方ですね」


「私の感情、在庫整理が追いついてないのよ」


「では、今夜は棚卸しですね」


「感情の棚卸しに残業代は出る?」


「出ません」


 アンナの即答だけは、いつもどおりだった。


 王宮の役職と予算を失い、王都から退去する。期限は定めず、自ら王都へ入ることも、王都に住むことも許されない。


 新聞は大きく『永久追放』と書いた。


 ただし正式な命令には、国王による召還、司法上の召喚、国家緊急時に護送されて入都する場合を除く、とある。本人の都合で戻れる余地はないが、王国が必要とした時まで扉を消してはいない。


 その条文を読んだ時、安堵より先に、胸の奥へ空白が生まれた。


 追放の日から、いつか彼に間違いを認めさせたいと思っていた。


 実際に彼が地位を失っても、あの日の私が救われて広間から戻ってくるわけではない。


「終わったのでしょうか」


 アンナが尋ねる。


「この妨害は、終わったわ」


 私は答えた。


「でも、私の人生は、ローランが落ちたから上がるものではない。明日も店を開けられるから、前へ進めるのよ」


 アンナは、静かに私の手を握った。


「はい。私たちは、明日の準備をいたしましょう」


◇◇◇


 審理が終わったあと、エドガルドには命令への関与に応じた処分が下された。


 職を解かれ、一定期間の公職就任を禁じられる。一方、自発的な証言と証拠保全が考慮され、拘禁ではなく監督付きの社会奉仕となった。


 その期間を終えた彼は、夜明けの星の通常採用へ応募した。


「王宮へ戻るつもりはありません」


 面接の席で、エドガルドは言った。


「ここで正義を学びたい、とは言いません。そんな言葉で、自分をよく見せるのはやめます。命令へ疑問を持った時に、立場を失うのが怖くて従いました。次は、記録し、相談し、断れる人になりたい」


「夜明けの星に来れば、それが自動的にできるわけではありません」


「分かっています」


「王宮で知った非公開情報を話さない。証言者であることを宣伝に使わない。あなたの件を知る店員が、同じ部署を望まなければ配置を分ける。それから、ほかの応募者と同じ研修を受ける」


「はい」


 選考の結果、エドガルドは第2期の研修生として加わった。


 英雄としてでも、王子を倒した功労者としてでもない。


 一度、間違った命令に手を貸し、次は止まる方法を学ぼうとしている一人として。


 午前0時、私はいつもどおり王都店の扉を開けた。


 偽の命令書があった場所には、小さな傷が残っている。


 隠そうと思えば、新しい板へ替えられた。


 でも、しばらくはそのままにすることにした。


 正直であることは、傷がなかったふりをすることではない。


 傷を確かめ、同じ場所へ次の紙を貼らせない仕組みを作ることだ。


「いらっしゃいませ!」


 ミアの声が、夜の通りへ響く。


 長い争いのあとにも、店で最初に交わす言葉は変わらなかった。


 私は入口の傷へ一度だけ指を触れた。


 怒りは消えていない。


 傷つけられた事実も、エドガルドが手を貸した事実も、研修を受けるだけで帳消しにはならない。


 それでも次の判断を、過去の役割だけで決めたくはなかった。


「いらっしゃいませ」


 今夜の客へ向き直る。


 許すことと、手順の中でやり直す機会を渡すことは別だ。


 その違いを忘れないため、入口の小さな傷はまだ残しておいた。

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