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【書籍発売中】あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
二章 一色夏鈴

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第26話 怪しい二人

「待たせたな」


 トレイをテーブルに置くと三人は瞳を輝かせる。


「めっちゃ美味しそう!」

「うん。食べる前から美味しい!」

「酒のつまみにもってこいだな」


 こうして海鮮バーベキューがスタート。

 さっそくトングを片手にホタテを網に載せて焼き始める。

 しばらくすると身が音を立てて踊り出し、上に載せておいたバターが溶けた頃に醤油を垂らす。瞬間、醤油の焦げる音とともに香ばしい香りが辺りを包んだ。


「やばっ。めっちゃいい匂いがする!」

「ごはんが欲しくなる香りだね!」


 空いたお腹には酷すぎるくらいの食欲をそそる香り。

 三人はイナダのお刺身をつつきながら焼き上がるのを見守る。


「もう少しだから待ってな」


 続いてサザエに少量のお酒を注いで火にかける。

 ぐつぐつと音を立てながらひと煮立ち、火が通ったらポン酢を掛けて完成。

 こうして同じ貝でもこってり濃厚な味に仕上げのホタテのバター醤油焼きと、ポン酢でさっぱりした味に仕上げるサザエの対照的なコラボレーションが完成。

 さっそく味わってもらおうと皿に取り分けて三人に差し出す。


「もう食べていいの!?」

「ああ。熱いから気を付けてな」

「「「いただきます!」」」


 お行儀よく三人揃って手を合わせてからホタテをぱくり。

 噛り付いた瞬間、三者三様、個性豊かに美味しさを表現する。

 夏鈴は声にならない声を上げながら足をばたつかせ、悠香は手に口を添えながら感極まったように夜空を仰ぎ、菫さんは新たに缶ビールを開けると一気飲み。

 女の子が美味しそうに食べる姿って魅力的だよな。


「サザエも食べ頃だぞ。殻が熱いから気を付けてな」


 サザエを網から下ろして用意しておいたポン酢をひと回し。

 トングで掴んで皿に載せるとすぐさま三人が箸を伸ばす。


「すごくさっぱりしてて美味しい!」

「コリコリした食感もいい感じだね」

「もっとビールを持ってきてくれ!」


 旬の海産物を食べてご満悦な三人。

 だけどメインディッシュを前に満足してもらっちゃ困る。

 空いた網の上に伊勢海老ずらいと並べて塩と胡椒を振りかける。

 しばらく火にかけていると次第に殻が真っ赤に染まり、半透明でぷりぷりしていた身に火が通って白く焼き上がっていく。

 伊勢海老は素材の味を活かすべく塩と胡椒だけにするつもりだったんだけど、人数分で五匹もあるし、せっかくなら別の味付けも試したい。

 そんなわけで、一匹はバターの余りを載せ、もう一匹はマヨネーズ。

 さらに一匹は冷蔵庫に入っていた薬味用の酢橘を絞って振りかける。


「そんなの絶対美味しいに決まってるじゃん!」


 それを見ていた夏鈴が瞳をキラキラさせながら歓声を上げた。


「夏鈴、もしかして柑橘系が好きなのか?」

「うん。柑橘系は全部好きだけど、一番はオレンジかな。薬味なら柚子胡椒が好き」

「ああ、確かに。柚子胡椒も伊勢海老に合うだろうな」


 さすがに用意がなくて残念だけど仕方がない。

 もしかしたら、夏鈴とは食の好みが近いのかもな——なんて思いながら伊勢海老を焼いていると、留まることを知らない女性陣の食欲を前に危機感を覚えた。


「みんな、俺と莉乃さんの分も残しておいてくれよ」

「「「あっ……」」」


 気づいた時にはもう遅かったらしい。

 気まずそうに声を揃える三人の視線の先には残り一つのサザエとホタテ。あれだけあったのが嘘のようにテーブルの上には空になった殻が散乱していた。


「ごめん……美味しくて食べすぎちゃった」

「いや、出されたものは全部食べていいものだと……」


 申し訳なさそうに肩をすくめる夏鈴と菫さん。


「気にしなくていいさ。俺はいいから、莉乃さんの分は残しておいてくれよ」


 みんなが夢中になるほど美味しかったなら、俺の分はなくてもいい。

 美味しそうに食べるみんなを見ていたらそれだけで満足——とまでは言わないけど、伊勢海老もあるし、この後に莉乃さんがアクアパッツァも持ってきてくれる。


 気を取り直して伊勢海老を焼き上げようとした時だった。


「凛久」

「ん?」


 不意に呼ばれて顔を上げる。

 すると、俺の口元にホタテを差し出す悠香の姿。


「私の食べかけだけど半分あげる」

「いいのか?」

「はい、あーんして」


 言われるままに口を開けてホタテをぱくり。

 食べた瞬間、想像していた以上の美味しさに驚いた。

 口いっぱいに広がるバター醤油の濃厚な旨味と、噛めば噛むほど溢れるホタテ特有の甘みが混ざり合い、後味と一緒にほんのり香る磯の香りが鼻から抜けていく。

 思わず口から零れたのは。


「……うまぁ」


 なんとも語彙力に乏しい感想だった。


「サザエも食べていいよ」

「ありがとうな」


 今さらながら思いっきり間接キスだけど、悠香とは何度もしているから抵抗ないし、今さら恥ずかしがるのも変な話。むしろ照れる方が不自然だろう。

 あの日以来、悠香とこの手のことをするのに抵抗がなくなったのは、叶わなかった恋の答え合わせをしたことで二人の距離が縮まったからだと思う。


 だけど、時と場所を選ばなかったのがまずかった。


「……怪しい」


 夏鈴が目を細めながらぼそりと呟いた。

 怪しまれるのは水着のお披露目に続いて二度目。


「その長年連れ添った夫婦みたい空気はなんなの?」

「な、長年連れ添った夫婦って……そんなことないだろ」

「そそそそそうだよ。そんなこと全然全く本当にないから!」


 いやいや悠香、さすがに動揺しすぎだろ!

 全力で否定しすぎて逆に怪しい。


「「えっとぉ……」」


 どう誤魔化そうか必死に頭をフル回転させる。

 いい言い訳が思い浮かばず困り果てていた時だった。


「お待たせしました」


 最高のタイミングで現れた莉乃さん。

 アクアパッツァとアヒージョを手に戻ってきた。


「おや? どうかしましたか?」

「いえ、なんでもありません!」


 渡りに船とはまさにこのことだろう。

 心の中でお礼を言いながらお皿を受け取りテーブルへ。


「これも美味しそう!」


 見た目にも美しい料理に釣られる夏鈴。

 直前のことなんて忘れてアクアパッツァをつつく。


「はまぐり最高~♪」


 安堵に胸を撫で下ろしながら思うこと。

 今後は人前での悠香との接し方に注意しよう。


 その後、俺たちは遅くまで海鮮バーベキューを楽しんだ。

 美味しい海の幸に舌鼓を打ちながら、海で遊んだ時の話をしたり、菫さんからナンパ男たちの文句を聞いたり。他愛のない話に花を咲かせながら夜は更けていく。

 気づけば日を跨ぎ、菫さんが酔い潰れた頃にお開き。


 色々あったけど、なんだかんだ楽しい一日だった。

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