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第弐拾陸話:ナターシャと神秘薬

「これは・・・。」


「攻略完了時に出現する。魔法陣よ、でも私たち以外誰もここを通ってないわ。」


「迷宮はいくつもの道に分かれているの、恐らく相当強い冒険者が別ルートで最下層のボスを倒したのでしょう。」


別ルート・・・あながち間違ってはいないけどね。


そう思っていると視界が急に真っ白になり、気が付くと俺たちや迷宮内にいた冒険者らしき人たちや重武装の警察官が迷宮の門の前に立っていた。


門は俺たちが戸惑っている間にすーっと消えていった。そしてそこには、引き込み線へと続くトンネルが口を開けていた。


「おお、門が消えていく!」「ひとまずこれで帝国は救われたぞ!!」「大日本帝国万歳!」


それを皮切りに周囲から万歳三唱が沸き起こった。


「・・・ともかく、ここは関係者以外の人が多すぎる。話の続きは内務省の警察局(この世界でいう警察署)で聞かせてもらいますよ。ナターシャさん。」


「だ、ダー(ハイ)。」


御剣さんはうなだれるナターシャさんを物々しい武装をした警察官に引き渡した。


「お巡りさん!ちょっと待って!」


ナターシャさんを連れて行こうとした警察官は立ち止り振り向いた。


「彼女に渡したいものがるんです!父さん、ポーションの空瓶持ってる?」


「ん?ああ、持ってるぞ。」


そう言って父さんは俺に空き瓶を渡してくれた。


「ありがと!」


そして俺はその空き瓶に神秘薬を半分ほど入れた。


「おい!あの子が持っているのって神秘薬じゃないか!?」


「マジだ!やっぱりあの迷宮にはあったのか・・・先に進まなかった俺を殴りたい。」


「ねえ、坊やその神秘薬ちょうだい?同じ冒険者は報酬を分けあう者よ。」


2,000年代前半特有のけばけばしい化粧や髪型をしたガングロの女性冒険者が俺に近づいてきた。


格好はビキニアーマーそのものなのでいろいろとヤバイ!


すかさず森少佐率いる軍人さんたちが止めに入った。


「まて、この子には必要な物なんだ。それに、迷宮内で手に入れた魔物の核は国、それ以外は獲得した冒険者の物になる。冒険者保護法にもあっただろ?」


「ああーん!?あーしらの活躍の場を奪って偉そうな口きくんじゃないよ!この金食い虫が!!」


「言わせておけば貴様!」


森少佐は、部下の女性が銃を構えるのをやめるよう手で合図をした。


「ふふ、聞き分けが良い軍人さんね。じゃあ、坊や・・・等価交換でどう?あたしの体は高いけど、坊やだったらいいわ♡」


唖然として動けなくなってる俺の顔に彼女の指が触れた瞬間俺との間に日本刀の刀身が割り込んだ。


「なっ!」


「お前みたいな汚れたヤマンバ。誰が欲しがるって言うのかしら?今すぐその子から離れなさい!さもなくばその汚い首が宙を舞うわよ。」


御剣さんは今まで見たこともない形相でガングロ姉貴の顎に刃先を近づけた。


「君、一つだけ忠告しておこう。ここで妙な気を起こしたら内務省と陸軍の2大勢力を敵に回すことになるぞ?」


こっちもこっちで顔が怖い!!


まあ、面と向かって罵倒された挙句目の前でいたいけな子供に対する窃盗、強姦が始まろうとしてたから当たり前だが・・・。


「わ、わーったわよ!冗談よ冗談!!あーだる。帰ってもう寝るわ。」


数名の男性冒険者が膨れながら帰っていく彼女の後についていき、こちらに頭を下げながら帰っていった。


パーティメンバーであろう彼らの健闘を心から祈りつつ、ナターシャに神秘薬を渡した。


「え?これって・・・。」


「それで国に帰ったらお母さんに飲ませてね!その量だったら直るのに十分だと思うよ。」


ナターシャはすすり泣きながら何度も俺に頭を下げた。


「スパシーバ。スパ・・・シーバ・・・吾。」


「あれは良いんですか森少佐・・・。ってえ?」


森少佐は涙と鼻水を流しながら頷いた。


「グズ・・・ズズッ!!ああ、許可しよう!」


静かになった駅構内ではしばらくナターシャの泣き声と森少佐の男泣きする声が響いていた。

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