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MAIDes―メイデス―メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で、最弱クラスのまま人類最強に。  作者: 有郷 葉


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61 [ユイリス]軍神、駆け回る。


 旧暦二五四八年八月上旬。


 季節は夏のまっただ中となり、気温も一気に上がってきた。ある程度の魔力を保持している人間は気温の影響なんて受けない。しかし、半人前の戦士だとそうはいかなかった。

 私の自室にて、目の前ではアリエルが額に汗を浮かべている。


「涼しげなお姉ちゃんの顔を見たら少しは涼しくなるかと思ったけど、全然ダメだ……。お姉ちゃん、氷出して」

「はいはい、〈アイスレイ〉」


 私が手をかざすと机にゴトリと氷の塊が落下。これに早速アリエルが飛びつく。


「ありがと、じゃかき氷を作ってくるから待ってて!」


 夏でも元気な妹は氷を抱えて走っていった。


 私は火属性の他に水属性の魔法も習得している。こちらも最近は初歩魔法しか使う機会がなく、しかも生成した氷の大半がかき氷として消費されていた。

 アリエルもここ何年か戦士の訓練を積んでいる。いざという時に戦えるように、と本人は言っているけど。私だけを戦わせているのが申し訳ない、という思いがありありと伝わってくるわ。絶対に戦場には出したくないけど、アリエルはまだ【ウォリアー】レベル4。レベルが10に達するまでは絶対禁止と言いつけてあるので、あと十年はその心配もないだろう。実戦で命のやり取りをしないとレベルはなかなか上がらない。


 それで現在、トラドネザム王国の戦場がどうなっているのかというと、相変わらずあちこちにいくつもの戦線があった。攻めてくる敵の人数は減ってきているが、困ったことに回数は逆に増加傾向にある。つまり、敵対する国々は戦力を分散してきていた。


 こちらで怖いのは私だけだから、何手にも分けて狙いをつけられなくさせてやろうという魂胆でしょうけど、甘いわ。私の機動力なら全てを潰せる。

 そんなわけで、私はこの真夏に国中を走り回っていた。別に体力的には全然平気なんだけど、なんか気分が重いのよね……。さあ、今日もそろそろ行くか……。


 装備を纏って裏口への廊下を歩いていると、かき氷を手にアリエルが追いかけてきた。


「もう行くの? かき氷は?」

「私はいいから門の前の人達に作ってあげて。あと、それ食べたら暑くなる前に帰るようにって」


 そう言って廊下にゴロンと追加の氷を転がした。


「軍神様の生成した氷なんて、皆さん泣いちゃうかも」

「大層ね、じゃあ行ってくるわ」


 屋敷を出るとそのまま一気に王都を駆け抜けた。


 私が向かう戦場は予め決まっていて、行くルートも別動隊に伝えてある。別動隊は先々の中継ポイントで私に状況を伝える役目を担っていた。

 私は戦場と中継ポイントを走って回るんだけど、うーん……、軍神なのになんか泥臭くない?

 空を飛べる魔法でもあればいいのに。現在、空中に足場を作る〈ステップ〉という魔法があって私も習得しているものの、飛行魔法は存在しなかった。〈ステップ〉は私の〈魔法倍化〉にあまり適さない。足場が二つに増えるだけだし。これに対して、飛行魔法なら倍の速度で飛べる可能性があるわ。なかなか難しそうだし、開発されるのはずっと後の時代かしらね。


 結局、一番頼りになるのはこの脚ということ。

 馬の数倍の速さで草原を走っていると、前方に身長二メートルを超える大男が立ちふさがっているのが見えた。後ろには何百人もの戦士を引き連れている。

 またあいつか……。いい加減にして……。


 大男は背中の戦斧を抜くとブオンと振り回す。それの先端で立ち止まった私を指した。


「待っていたぞ、軍神赤神シェリル!」

「ガドウィン……、こりないわね」


 彼は傭兵団のリーダーでガドウィンという。不屈の傭兵なんて呼ばれていて、その名の通り何度も私に絡んでくるうっとうしい輩よ。

 普通に殺せばいいんだけど、そうもいかないのよね……。だってこいつ、私と戦いたいだけって言うし。私には理解不能な人間だわ。


「あなた、傭兵だったらどこかの国に雇われて攻めてきなさいよ」

「仕事になどできるか。オレは純粋にお前と勝負がしたいんだ」


 ガドウィンは誇らしげに胸を張った。


 この乱世に、純粋な勝負……? ……理解不能だわ。

 そこまで言うなら相手してあげるわよ!〈アイスレイ〉!


 私が放った冷気はガドウィンの体にぶつかるなり即座に氷に変わる。大男をさらに大きな氷柱の中に閉じこめた。

 かき氷用とは比べものにならない私の本気の〈アイスレイ〉よ。

 だが、氷はすぐに全体にひびが入り、あっという間に粉々に砕け散る。ガドウィンはあっさり復活を果たした。


「ふはははは、このオレにその程度の魔法が効くか。むしろいい感じに涼しくなったぜ」

「だったら、今度は熱くしてあげる」


〈ファイアボール×魔法倍化〉。


 二つの大火球を続け様に撃ちこむ。大男を中心に地面が吹き飛び、巨大な火柱が燃え上がった。

 しかし、激しく燃える炎の中に動く人影が。ガドウィンが平然とした顔で出て来た。


「ふふ、効かんな。この夏の暑さに比べたらぬるいくらいだぜ」


 そんなわけないでしょ。こいつ、本当に嫌……。






今回はメイデス関連の短編を書きました。

ミレディアがどうやって女王になったかのお話です。

彼女の固有魔法も明らかに。

あとポンコツなオルセラも出てきたり。

ヴェルセ王国最後のエピソードにして、おそらくメイデス関連でも最後のエピソードになります。

この下の「ミレディアのエピソードへはこちらから」をクリックでどうぞ。

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書籍化しました。なろう版へはこちらから。
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陰キャ令嬢が沼の魔女に。

社交界で沼の魔女と呼ばれていた貴族令嬢、魔法留学して実際に沼の魔女になる。~私が帰国しないと王国が滅ぶそうです~




書籍


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ヴェルセ王国 エピソード1
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メイドが発現した固有魔法はまさかの国家規模!?

どうもすみません。孤児院出身メイドの私が王子様と結婚することになりまして。




ヴェルセ王国 エピソード2
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肩書きだけだった公爵令嬢が権力の頂点に上り詰めるまで。

公爵令嬢、お城勤め始めました。婚約破棄するために権力の頂を目指したいと思います。




ヴェルセ王国 エピソード3
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王妃オルディアの命を狙われ続ける日常。

聞いてません。王国に加護をもたらす王妃になりましたが、近隣諸国から毎日暗殺者が送られてきます。




ヴェルセ王国 エピソード4
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11歳のオルセラが主人公です。

公爵令嬢、メイドになります。 ~無自覚モテ令嬢のハタ迷惑な生態~








本編の五年前、リムマイアのエピソード
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― 新着の感想 ―
やせ我慢じゃないだけにたちが悪いしつこさww
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