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「この状態で受診すれば、施設に戻れなくなる可能性が…」お伝えしましたよね

 あの日、家族へ電話する看護師の脇で、私はメモを渡しながらフォロー。二人で目を合わせてはため息…

「私の親だったらば?ということですか?」

声が震えていました。 

 彼女は数年前にお母さんを自宅で看取っています。お母さんから「病院は嫌、家に帰りたい」と言われ、回復する病ではなかったので、痛みのコントロールだけで、帰宅。兄弟が代わる代わる介護して、一か月ほど、みんな集まっている時に亡くなりました。そんな経験のある彼女ですが、他人の親をどうこうなんて言えません。なんでそんなこと聞くかな~

 「病院に行けば治る!前の状態に戻れる」

ご家族はそう思っているのでしょうが、その「前の状態」が既に「そろそろ」と言う状態だったのです。


 一年半ほど前に入所されました。その前は有料に入っていて、家で介護されていたのは既に5~6年前なのでしょうか…入所希望された時、あまりの体重で

「うちの設備では無理じゃない?」

と、入所を先延ばしにしていました。それが、その有料が潰れる?ということで、入所が再浮上…

「少しは瘦せたそうだよ、謎だけど申し込み、ここ一本なんだよね~」

相談員さんからの情報では、リクライニング車椅子、食事は軽介助、昼夜オムツ、特に大声は出さない…


 入所時、仙骨部にフィルムが貼ってあり、褥瘡の跡がありました。

「褥瘡になりやすい方なので、体位交換をしっかりお願いします」

と、伝えたのですが、どうしても側臥位になってくれません。無理に体位を変えようとすると手が出ます。

「あ、申込書に、配偶者への暴力って書いてあったもんね~」

 男性に対しては手が出ないのですが(夫じゃないから?)女性が介助すると叩いてきます。私達看護師も褥瘡が出来てしまった時、処置していて何度も叩かれました。


 入所して一か月後ぐらいだったかしら、家族が面会に来ている時

「なんか、熱いんですけど、熱あるんじゃないですか?」

測ると38.5度…食欲はあるけど…咳もしていたので、コロナの検査をしてマイナス、その時はカロナール内服で、下がりました。


 その後も度々発熱、サチュレーション低下もあり、食形態を落とし、時々吸引していました。入所時は自分で食べていましたが、病気のせいもあり、上手くスプーンを動かせなくなってきて、半年ほどで食介になりました。


 蜂窩織炎や帯状疱疹にもなったな~褥瘡は何度も再発して、その度に叩かれながら処置

「そんな言い訳をして、噓つくんじゃないわよ!」

え~と、お尻の肛門のだいぶ上に穴が開いています。噓じゃありません!

何ですけれどね~自動で体位交換が出来るベッドに変更しましたが、ベッド、頑張ってあちこちが上がるのですが、本人は完全仰臥位のまま、びくともしません。


「なんか~吸引してからじゃないと食べさせられないね、既に口の中粘っこい唾液でいっぱいだもの」

だったのですが、吸引なかなか嫌がられます。

「奥の方はやらないから、口の中だけ」

 毎回は出来ませんでしたけれど、介護員さん達もゴロゴロしている状態からの食事介助は怖いからと

「吸引お願いします」と、医務室に連絡が入ることが多くなりました。


 10月末、オンコール当番の看護師に夜連絡が入りました。


「○○さん、口から泡を吹いて、ゴロゴロと苦しそうです!」

「どんな?音聞かせて」

凄い音だったようです…だめだこりゃって感じ…

 たまたま、家が近い看護師だったので、施設に戻り吸引して事なきを得ました。これが、電車通勤をしている看護師では間に合わなかったと思います。吸引する前はサチュレーション70台チアノーゼが出ているような感じだったそうです。


 その翌日、私が早番だったので様子を見に行くと、ケロッとしています。がっつり引いてもらったためか、口腔内に唾液も貯留しておらず

「どうしますか?朝ご飯食べれますか?」

と聞くと

「食べます!」

サチュレーションも97%

「ゆっくりと食事介助おねがいします」


 「一応、家族に知らせておこうよ、又こんなことになった時、間に合うとは限らないし~」

ということで、、連絡してもらいました。でもね~なんというか、家族、危機感がない。ご迷惑かけましたでもない…とりあえず、面会に来てもらって、食事の様子とか見てもらおと言うことになりました。


 月に一度ぐらいのペースで高熱が出ていました。ペースト食まで落としましたが、口の中に唾液が溜まっていて、飲み込みも悪いものですから、「夜は早配膳で栄養プリンと水分ゼリーだけにして、看護師が帰る前に吸引する」という対策を取りました。食べたい人の前で他の人に食事介助は可哀想と言う意見も出て、早配膳で食介されている人が見えないよう配慮もしました。


 12月に入り、家族面会、その時は比較的元気だったと思います。口の中に唾液が溜まって飲み込みも悪くなってきていることはわかっていただけたと思います。庭の柿を持ってこられて

「好きなんです、食べさせてください」

と言われて…すりおろしてとろみをつけてと、工夫したのですが

「まずい!これは柿じゃない!」

と…

「まったく~可愛くないんだから!」

まあしょうがありません、柿のイメージってものがありますものね…


 今年に入り、施設内でインフルエンザAが大流行!

「うつらないといいね」

と心配していたのですが、第一陣の次の次位のタイミングで、うつってしまいました。

 ゾルフーザ、五人分しかなく、それを使い切ってしまい、薬局にお願いするも品切れ…嘱託医の先生が医院にあるものをズボンのポケットにねじ込み?持ってきてくれたのが追加の5人分、さて誰に使おうか?

「優先順位…」

まだ何とか飲み込めるということで、使いました。


 効いたのでしょうか、食欲は戻り、熱も下がってきました。それが、又高熱になり

「インフルエンザというよりも、誤嚥性肺炎起こしたのかしら?」

ということで、家族に連絡、それが、この電話です。


 インフルエンザ罹患してからの経過を説明して

「痰がらみが酷い状態で、吸引しています。お食事はもちろん、水分も十分には取れていない状態です。日中は看護師が吸引しますが、夜間帯はおりません。水分量が減っているので、夜間の痰は減ってくるとは思いますが、又先日のようなことがあると、対応が難しいと思います。インフルエンザにかかる前から、だんだんと飲み込むのが難しくなってきて食事量も減っていました。もしかしたらば肺炎を起こしているのかもしれません。ただ、それを治したとしても、食事が出来るようになるかどうかは、わかりません。今、ゴロゴロはしていますが、苦しそうなご様子は見られません」

そんな話をして、ご家族からの話を聞いている間

「受診と言われても、受けてくれる病院、この感染症が流行っている中、ないと思う」

「もし、行くならば、家族付き添いで救急搬送かな?」

「入院して、点滴とかになったらば、もう食べることは難しくなってきて、ここに帰れないと思うよ、その覚悟あるのかな?」

などと、メモを渡して…


 長い電話の結果

「他の兄弟と話し合って決めます」

となりました。

 それから二時間後ぐらいに連絡があり「病院へ」

 ご家族付き添いで、救急搬送

 救急隊員の方からは

「○○病院(けっこう何でも受けてくれる病院)すらも、ベッドがいっぱいで…難しいかな~遠くになると思いますよ」

と言われましたが、幸いなことに近場の病院が受けてくれました。タイミングが良かったのかな?


 ご家族が来て、再度伝えました。

「肺炎かどうか?先ずは検査になると思います。週末は検査技師がいない病院なので、月曜日。それまでは病院なので吸引も点滴も出来ます。先ずは安心ですね。ただ、点滴の期間が長くなると、食べる事が今まで以上に難しくなってくると思います。口から食べれるようにとリハビリもしてもらえますが、点滴を続けるとなると療養型医療施設に移ることになると思います」

「元気になって、また戻ってこられるといいんですけど…」

…ん~ん、難しいと思うんですけど…


 ご家族が病院から戻られて

「病院に着いて酸素してもらったらば、顔色も良くなりました!」

…ん~ん


 点滴抜かないようにと、拘束されているんだろうな…



 入院から二週間弱、どうしているかしら?と思っていたらば、ご家族から連絡があり

「転院するので、施設は退所します」


 大好きだという柿も食べれないんだよね、それどころか、栄養プリンさえも食べれない…

 拘束されて、吸引されて、天井だけ見ていて…


 うちには時々しか面会に来てくれなかったけど、せめて週一ぐらいは面会に行って欲しいな。

 命を永らえる選択をしたんだから…


 


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