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最後(期)の外泊、出来るかしら

 入所の為の面接をしたのは、コロナ真っただ中だったため、老健とオンライン面会でした。

 先ずは夫から

 聞き取りずらい、唾液を流しながら口ごもったような声でしたが、しっかりと答えてくれました。まあまあ、車いす姿勢よく乗車されていて、穏やかな感じ…

「トイレにひとりで行けないんだよ、車椅子にも一人で乗れない、脚がダメなんだよ~」

「こちらにも、介護員が居りますので、お手伝いしますよ」

「そうか、それは良かった。一人じゃ出来なくなってきたんだよ、脚がダメなんだよ~」

「手は大丈夫ですか?ご飯は美味しく召し上がれますか?」

「食べるのは出来る」

といって、なんとなく、手を動かして見せてくれました。

 次は上の階(認知症の階)から、妻が

「もう、話は出来ません。食事もほぼ介助。旦那さんの事もわからなくなっています。あ、もういいですか?こんな感じですから…」

 バタバタと腕を振っているだけで、施設の職員と視線を合わすこともありません。


 入所の時

「ご夫婦なんだから、同じ階の方がいいかしら?お食事の席は隣に出来るし~」

でしたが、もう、奥さんの方は夫を認識できていないこともあり、違う階に。ただ、おやつの時だけでも一緒にと奥さんを下にお連れしたことがあり、その時、驚愕のお言葉が夫より

「これは、○○じゃない!」

え~~~~確かに歳取ったとは思うけれど~まさかの…

 この謎は、最近わかりました。そりゃあわからないわ、これじゃあ…

 ご家族が二人の旅行の時の写真を見せてくれたのです。それを

「ほかのスタッフにも見せていいですか?」とお預かりしたようで

「は~い、これは誰でしょう?」

わかる人いませんでした。

「ヒント、この施設に入所中です」

「え?誰かの奥さんか夫ってこと?」

「いえいえ、二人ともここに入所中」

夫婦で特養入所しているのは、今二組、かつて何組かがありましたが…

「うっそ~このお化粧ばっちりの髪クルクルが?○○さんなの?こりゃあ、夫が「違う」って言うのもわかるはね~」でした。


 入所後、妻は食事中食べ物で遊んでしまうため、初めから食介とされてしまいました。食事中、歯ぎしりをし出すともう、口を開けてくれません。そこまでが勝負。口も大きく開けてくれず、吸い込むような食べ方です。それでも、あまりむせることはなく、調子が良い時には8割がた食べれるようになりました。そうそう、面接の時「話は出来ません」だったのに、、ごく稀ですが「おはよう」と言うと「おはよう」とほんとにちっちゃな声で応えてくれます。

 施設では、ほとんど話せない方でも

「痛い!」は言える方がいます。でも、○○さんから、その言葉は聞いたことがありません。こちらの言っていることをおオム返しする感じで、会話にはなりませんが、それでもこの可愛い声を聞けると

「お、今日はいい日」

なんて思っちゃいます。


 夫の方はやはり誤嚥しやすい…唾液なのか痰なのかいつも口の中にため込んだまま食べていきます。なんとか、咳をして自分で痰は出せるのですが、危なっかしい…

「無理に食介をしないように」というのが、送られていますが、上手くスプーンが持てない時など、本人からのアイコンタクト?食事介助してもらっている時もあります。


 発熱したことがあり、家族に連絡すると「受診して、必要ならば入院治療をお願いします」

 この話、過去に書いていたかしら?結局、救急搬送となり、私が付き添い、家族を待ち…かなり待たされました。

 三週間ほどで、回復。肺炎もでしたが、尿路感染も起こしていました。


 退院後も、食事に関しては、危なっかしいままでした。それでも、ご家族が面会に来ると

「チョコレートが食べたい」

等々、食欲は旺盛です。

 血液サラサラ系の薬を飲んでいることもあり、内出血班が出来やすく、そこの表皮が剥けて出血!なんてことがたびたび起こります。ペロリと剥けた皮膚を戻してステリ―テープ固定、メロリン・フィルム保護。それだけではなく、脂漏性湿疹なのか、黄色いかさぶたが頭に出来、それを引っ搔くものだから、タラ~と血が頭から…ちょっと手のかかるおじいちゃんですが、処置が終わると

「ありがとう」なかなか良い笑顔です。


 一か月ほど前、また発熱してしまいました。食事は取れており(食べたがり…)サチュレーションの低下もなかったのですが、痰がらみがあるため、聴診するとなんとなく変な音?がするような…

 そうこうしているうちに、臀部から背中にかけて真っ赤になってきました。

「これって、蜂窩織炎?だから発熱していたのかな?」

 嘱託医にも診察してもらい、

「肺炎起こしているようには聞こえないけれど~蜂窩織炎で熱が続いているから、抗生剤出しておくよ」

薬は粉薬、水分ゼリーで解熱剤と共にしっかりと内服できていました。


 三日経っても、熱は下がらず、蜂窩織炎の方は少し治まってきたようには思うのですが…

「もしかして~やっぱり肺炎の方かな?家族に連絡して、どうするか?相談した方がいいかも」

と、その日のリーダー看護師に振りました。


 たぶん、私が家族に連絡したらば、

「施設で様子を見てください」

だったと思います。なんとなく「大丈夫オーラ」を出してしまうので…

 その日のリーダー看護師、ぼそぼそっと、深刻そうに話すものだから

「受診!」ってなりました。


 肺は真っ白だったそうです。サチュレーションも、急速に下がっていったようです。

「間に合ってよかった」なのか…


「今度はダメなのかもね」と話していた頃に、病院から連絡が入りました。

「お看取りで退院できますか?」

もう、食べれるような回復は望めず、家族は胃瘻を望んでいない。痰の吸引が頻回、点滴もしていない。

と、病院の看護師から、言われたそうです。夜間帯、痰の吸引が出来ないことだけ伝えて、お看取り退院は可能だと返事をしたそうです。


 退院日も決まり

「え!まだまだ日があるのに、点滴していないって、どういうこと?食べている???」

でしたが、翌日、妻の面会にご家族が来る予定になっていたので、その時に聞こうということになりました。


 「肺炎だけではなく、全身に炎症があり、もう、食事は難しい。まだ、面会に行くとこちらの言っていることはわかってくれる様子がある。自分たちとしては、胃瘻や中心静脈栄養になり、このままの状態、食べれないまま永らえるのはかわいそうだと思う。抹消点滴を続けるために療養型医療施設に行ったとしても、この点滴では栄養が入らないと聞いたので、長くない…だとしたらば、施設に戻ってきて、母にも会って、ここで亡くなる方がいいのではないか?と思いました」

 痰の吸引については、最近減ってきているということなので、輸液の量も絞っているのかもしれません。

「そうなんですね、よくそこまで頑張れました。入院するその時まで、美味しそうに食べていらっしゃいました。入所する時、最期の時は家で過ごさせたいと書いていらっしゃいましたが、点滴を抜いての退院となると、そう長くはないかと…お家に帰るのは、いかがですか?」

「療養型医療施設に入れたくないことの一つに、母に会わせてあげられなくなるもあったのです。ここに帰って、母に会わせてあげたいんです」

「もし、○○さんがお家に帰るのをお望みで、ご家族がそれに対応できるというのならば、まず、病院からここに帰って来て、お母さんと面会して頂き、その後家に帰るということも出来ると思います。お家が近いので、嘱託医が死亡診断書を書きに行くことも可能です」

「そうですね~退院までの間に家族で相談してみてみます」


 え~と、お父さん、お母さんにあんなこと言ったなんて言えませんがけどね…


 さてどういうことになるかな?ここでのお看取りだとしても、静養室で寝泊まりできますが、もし、もし「お家」が認識できるのならば、お家でもいいかと…退所ではなく、外泊ってことで、…


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