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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
盾の継承の章
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第95話:鉄壁の名1

 ルークの二つ名である「鉄壁」。

 これはルークが使う土の精霊術「ウォール」が、鉄壁の様に非常に守りが堅固である事から付けられた名である。

 二つ名が付けられると云う事は、その名の由来となる活躍をした訳であり、大変名誉な事だ。

 二つ名を持つ冒険者達は、過去も現在も憧れの対象として一目置かれる存在となるのだ。

 それが例え15歳になったばかりの少年の面影を残した者だとしても・・・




リアース歴3238年 10の月26日11時過ぎ。


 交易都市ルーラを出発して4日目。

 他の護衛者達とのギクシャク感はまだ続いている。

 前回の護衛依頼時はこんな事なかったんだけどなぁ。

 まぁ、そんな事は後で考えて、今は周りの警戒任務に集中しなくちゃ。

 荷商隊の先頭で馬型鉄人君を走らせながら、一行は南東へと進んで行く・・・


 太陽の傾きから見て、11時くらいであろうか。

 突然、イナリの鼻が慌ただしくヒクヒクし出した。


「イナリ、どうした?」

「キュキュキュ!」

(何者かの臭いだ!)


 イナリが荷商隊の右側前方の方に何かいると訴えている。

 魔物か?それとも盗賊とかか?

 俺は鉄人君を止める。


「ストーップストーップ!」


 俺は後ろを振り返り大声で叫ぶ。

 俺達の後ろを走っていた荷台が慌てて止まり、護衛のリーダーの人が俺達に駆け寄って来る。


「鉄壁殿どうした?何かあったのか?」

「イナリが、右側前方に何かいると言っています!」

「何っ!それは本当か?」

「キュ!」

(うん!)

「イナリの鼻は確かです!今までに間違った事は1度もありません」

「分かった!信じよう」

「俺は後続に知らせて来る。鉄壁殿はもうしばらくここで前方の様子を伺っていてくれ!」

「了解しました!」


 護衛のリーダーは慌てて後続の方へ走って行く。


「全員戦闘準備だ!前方で何かがいる様だ。早くしろ!」


 今までののんびり気分が急に慌ただしくなる。

 あちこちで声が上がり、戦闘準備が始まる。

 護衛全員を引き連れてリーダーの人は戻って来た。

 全員が緊張で顔が強張っている。


「どうだ?向こうに動きはあったか?」

「今のところない様です!」

「分かった!これから全員に指示を出す。悪いが文句を言わずに俺に従ってくれ」

「「「「おぉ!」」」」


 リーダーの人は次々と指示を出して行く。

 落ち着いて指示を出す姿は場慣れした感じで安心感が生まれる。

 俺達夫婦は荷台の上に上がり、周囲を警戒する様に言われる。

 4台ある荷台の周りには8人の護衛が就き、残り半分の8人がゆっくり前方へ様子を見に進み出す。

 その時だ・・・


「かかれ~!」

「「「おぉ~!」」」


 イナリが指示していた場所のやや手前からかなりの数の人が飛び出して来た。

 距離として50mくらいかな?

 こちらが止まって戦闘準備をしている間に距離を詰めて来ていたのであろう。


「盗賊が来たぞー!」


 護衛者の誰かが叫ぶ。

 そう、襲って来たのは盗賊だった。

 紛れもない本物の盗賊だ。

 何処かのお笑い盗賊団とは違う本物の盗賊である。


「キュキュ!」

(こっちからも来る!)


 イナリが右側面の茂みの方を示す。

 たぶん、正面の奴らは囮だな。

 茂みに隠れながら回り込んで不意を突く気だろう。


「右の茂みの方にも隠れている奴らが居るぞ!」


 俺は大声で叫ぶ。

 荷台を護衛していた者達が一斉に身構える。


「ちっ、バレた!行くぞ野郎ども!」

「「「おぉー!」」」


 茂みの中から盗賊が飛び出す。

 盗賊は正面に20人くらい、右横から10人くらいか。

 こっちは正面に向かって行ったのが8人、荷台に居たのが俺達も含めて10人。

 人数差では不利だなぁ・・・

 正面から来る奴らはまだ距離があるな。

 よし、ならば!


「出でよ壁!『ウォール!』」


 俺は迫り来る正面の盗賊達の間にお得意の土壁を立ち上げる。

 高さは2mを越え、厚みは50cm、幅は30mある土壁を3重にだ。

 壁を超えるにしろ、回り道をするにしろ、時間は少し稼げるはずだ。


「今の内に側面の敵を蹴散らすぞ!」


 護衛のリーダーは俺の意を汲み取って味方に叫ぶ。

 側面から来た敵は10人ほど、こちらは18人だ。

 これで数はこちらが有利。

 各個撃破は戦術中の基本だからね。

 

 側面から攻めて来た盗賊達との交戦が始まる。

 荷台に居る俺は刀で戦おうとはせず、へっぽこ弓で応戦する。

 無我夢中で放った俺の矢が、盗賊の一人のお尻に突き刺さる。


「ギャっ!」


 フフフフフ!俺のへっぽこ弓もたいしたもんだぜ。

 俺の活躍を見てくれたアイシャ?

 俺は隣りにいるアイシャを見る。

 アイシャは弓を構えたまま固まっていた。

 あ!まさか・・・

 俺達が相手をしているのは人だ。

 魔物何かじゃない。

 俺もそうだけど、アイシャが人と戦うのは初めてなのだ。

 魔物でさえ躊躇するアイシャだ。

 人と戦うなんて無理かもしれない・・・

 でもそう云う訳には行かないんだ。

 やらなきゃやられるんだ!


「アイシャ、ダメだよ!」


 俺は優しくアイシャの肩に手を乗せる。


「貴方・・・」

「辛いのは分かる。でも覚悟はしていたはずだよ。

 冒険者として続け行けば、いずれ盗賊と・・・人とも戦わなきゃならないって」

「そ・そうね・・・」

「ここは地球じゃないんだ。こっちがやらなきゃ俺達がやられてしまう」

「そ・そうだけど・・・」

「俺はやるよ!君を護るために」

「私を護るために?」

「そうだ!君のためにだ。このまま負けてしまったら俺は殺され、アイシャは奴らの慰み者にされるかもしれない。そんな事は断固としてさせやしない。

 俺はこの世界で何処までも君と生きて行くと誓ったんだ!アイシャもそうだろ?」

「うん!」

「だったら戦わなきゃ!これからも生き抜くために」

「分かったわ!私戦う」


 そうだ!戦うんだアイシャ。

 俺達は弓を構えて矢を放つ。

 俺達の未来を護るために・・・


次回『第96話:鉄壁の名2』をお楽しみに~^^ノ

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