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リアース戦記 ~鉄壁のルーク~  作者: ナナすけ
盾の継承の章
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第91話:盗賊

 リアース歴3236年 10の月21日18時。


 教会からの帰り道。

 辺りはかなり薄暗くなり、急に冷え込み出して来た。

 俺とアイシャはピタっと密着しながらお互いの温もりを服越しに感じつつ足早に歩く。

 お腹は空腹感を訴えており、スープの様な温かい物でも食べたい気分になる。

 人気の少ないこの暗い1本道を抜ければ、明るい街灯がある大通りの道までもうすぐ。

 建物の影から急に人影が現れ、俺達の進む道を塞ぐ。


「アンタが鉄壁殿かい?」


 声の主は女性の様だ。

 暗いのでハッキリと顔は分からないが、身体の女性らしい丸みを帯びたシルエットなのでたぶん間違いないであろう。

 女性らしき影の後ろには2人の男性らしき影も見える。

 一人はひょろっとした背が高い男。

 もう一人は対照的にガッシリした身体付きだが背が低い男。


「そう云うアンタ達は何者だ?

 人に名を尋ねるなら、まずは自らの名を名乗るのが礼儀だって教わらなかったかい?」


 俺は不機嫌な声で答える。

 この暗い道であえて俺達に声を掛けて来る様な連中だ。

 真っ当な連中でない事は想像がつく。


「く!生意気なガキだよ全く」

「お互い様!」


 挑発的な態度を取るお俺。

 何時でも戦えるようにとアイシャとイナリに目で訴える。

 アイシャとイナリは黙って頷く。

  

「キーーー!あたしゃガキじゃないわよ」

「お・お嬢、落ち着いて下さい!」

「そうでげすよお嬢!」


 お嬢ねぇ・・・他の2人の男はこの女の取り巻きか何かなのかな?

 取りあえず、この3人の頭は女の方の様だな。


「名乗る気がないならそこをどけ!」


 俺は大きな声で威圧をかける。


「な・泣く子も笑うダリア一家とはあたし達の事さ!」

「「え!・・・」」

「キュ!」


 何だその恥ずかしい二つ名は?

 俺は急に力が抜けてしまった。


「泣く子も笑うって・・・アンタらお笑い芸人か何かか?」

「違うわよ!盗賊よ盗賊!」


 え!盗賊が泣く子も笑わすの?

 何だそりゃ?


「それってアンタ等馬鹿にされてない?」

「う・うっさいわね!気にしているんだから放っておいてよ」


 こいつアホだな!

 気にしているならそんな変な二つ名使って名乗るなよ。


「あぁ、何だか馬鹿らしくなって来た。アイシャ、イナリ行こうぜ!」

「そ・そうね!」

「キュ!」

(へ~い!)


 俺達は来た道を引き返す。

 周り道をして帰ろうっと。

 これ以上こいつ等に係わるのは馬鹿らしいや。

 あぁ、腹減った!


「ま・待ちなさいよ!」

「嫌だね!出でよ壁!『ウォール!』」


 俺達とあいつ等に間に3mくらいの壁を立ち上げる。

 これで追ってはこれまい。

 なんせこの道は1本道だしな。

 ウケケケケ!


「ま・待ちなさいよ~!お前達、何とかしなさい」

「お嬢、無理ですよ!」

「そうでげすよ~!」

「キーーー!覚えてらっしゃい~」


 でたよ、悪党の捨て台詞!

 まさか生でこんな捨て台詞を聞けるとは思ってもいなかったわ。


「嫌だよ~!じゃあねぇ~」

「ムッキーーー!腹立つ~!」

「ウケケケケ!」


 いや~久しぶりに気分爽快だ。

 こんなからかい甲斐のある奴は初めてだよ。

 フォッカーさん以上の逸材だな。


「あの人達、盗賊って言っていたけど、何が狙いなのかしらね?」

「さぁ?」

「私達、盗賊に狙われそうなものって何か持っていたかしら?」

「ないと思うなぁ・・・」

「そうよねぇ・・・」

「キュキュキュー・・・」

(だよねぇ・・・)


 本当に何が狙いだったのかな?

 これって又向こうから絡んで来そうだよねぇ。

 ウザそうで嫌だなぁ。



 ここで突然現れて、あっさりとルーク達に逃げられてしまったダリア一家の話を少ししておこう。

 ダリア達は3週間ほど前にルーク達の事を知り、一度エターナの町へと向かった。

 しかし、町に到着してみれば、ルーク達はすでにルーラに向けて旅立った後であり、入れ違いとなってしまった訳である。

 慌ててルーラにとんぼ返りする羽目になったダリア達。

 路銀は無駄に使うし、道中魔物に出会って追い掛け回されるし、もう散々な目にあった彼女達であった。

 この怒りは自然とルーク達に向けられる事となる。


 ルーラに戻ったダリア達は、ルーク達の居所を必死で探し回った・・・主にズラビスが。

 行方を全く掴めずにいた彼女達であったが、天のお導きかどうか分からぬが、偶然に、本当に偶然にもルーク達と出くわした・・・あの人家の少ない1本道で。

 目の前にあの白いモフモフがいる。

 思わず小躍りしたくなった3人であった。

 ダリアは盗賊らしくしようと少し気張ってルークの名を聞いた。

 舐められる訳にはいなかいからだ。

 だけど簡単に舐められてしまった。

 全くの計算外である。

 ルークの威圧に慌てて、正直に通り名をつけて自分達を名乗ってしまった。

 笑われた!

 ダリアは恥ずかしくて溜まらない。

 年下の少年にいい様に弄ばれている。

 こんな屈辱は初めてだ。

 このままではいけない。

 年上としてビシっと言ってやらねば。

 逃げられた!

 ビシっと言う前に。

 呆気にとられる3人。

 この時からルーク達に対して執念の様なものを抱く様になったダリアであった。


 これがダリア一家との最初の遭遇であった。

 以後、ルーク達とダリア達は浅かならぬ関係となって行く事となる・・・


泣く子も笑わす盗賊ダリア一家の登場^^ 

ちなみにモデルはタツノコプロのあのお三方ですw

次回『第92話:小悪魔』をお楽しみに~^^ノ

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