第89話:ウィンドショッピング
リアース歴3236年 10の月16日17時。
2人で一泊銀貨1枚となかなか高めの宿に7日間泊まる事に決めた俺達は、早速夫婦の営み・・・とはならず、一先ず街に出て近場の商店街を見て歩くことになった。
前世の時からウィンドショッピングが大好きだったアイシャは、今も興奮しながら俺の腕を引っ張り、商店街を見回っています。
俺としては10日間ご無沙汰だったムスコちゃんを思いっ切り解放してあげたかったのだが・・・
「ねぇ貴方、あれお米じゃない?」
「え、お米?」
「ほら、あそこに!」
アイシャがお店の奥を指さす。
乾物の食品を扱っているお店かな?
メインとなる正面の3段になっている低目の棚には魚の干物やキノコ類が置いてあり、アイシャが指差す奥の壁に備え付けてある棚にお米らしき物が入った袋が目に入った。
あの袋の大きさだと10㎏くらいかな?
お店の中に入って行く俺達。
「すいませ~ん!この袋に入っているのはお米ですか?」
「お米?それはゴーハンって云う物だよ」
「「ゴーハン!?」」
「そう、ゴーハンよ!」
「「・・・」」
恰幅の良い店屋のおばさんに尋ねるとお米ででは無くて、ゴーハンと言われました。
ゴーハン・・・ん~、見事に日本人的なネーミングだね。
俺とアイシャはその場で固まってしまったよ。
「日本人の転生者が名付けたのかな?」
アイシャが俺の耳元で小さな声で話して来る。
「そうじゃない?いかにもってネーミングだし・・・」
「そうよね!やっぱり私達やクロードさん以外にもいるんだね」
「そうみたいだね!」
俺達夫婦のひそひそ話が続く。
「あの~、お客さん!どうするんですか?買うんですか?」
店屋のおばさんが渋い顔をして聞いて来る。
「あっ、ハイハイ、買います買います!お値段は幾らでしょうか?」
俺は慌てて答える。
「その10㎏入りの袋で銀貨2枚だよ!」
「「・・・」」
高っ!何だその値段は?10㎏で銀貨2枚だと!?
高級コシヒカリ並みの値段じゃねぇかよ。
美味しいのかなぁこのお米?
ん~、どうも疑わしい・・・
「どうする?銀貨2枚って高過ぎじゃね?」
「そうよねぇ・・・」
俺とアイシャは再びぼそぼそと話し出す。
「お客さん!本当にどうするんだい?冷やかしだったら止めておくれよ!」
ヤベっ!お店のおばさんが怒り出した。
「買います買います!ハイ、銀貨2枚」
「毎度あり~!」
素早く銀貨2枚を引っ手繰られ、代わりにゴーハン10㎏が入った袋を受け取る。
う~、買ったのは良いが、これを旅の道中持ち歩くのかぁ~。
思ってたより荷物になりそうだな・・・
荷物を持ってお店の外に出る。
「何だか勢いで買っちゃね!」
「あのおばさんの重圧に負けた・・・」
「そ・そうね・・・」
俺達はハァーっとため息を付いてウィンドショッピングを再開する。
本当にいろいろな物が売っているんだなぁ。
エスニック調の服を見てアイシャが喜んで見ている。
あっ、クレープ屋発見!
早速購入して食べる。
中身は苺の様な物とホイップクリームか。
懐かしい!
イナリも満足そうに食べているよ。
「あっ、調味料があった!」
アイシャが調味料を見つけたらしく、俺の腕を激しく引っ張る。
「本当だ!」
そこには、砂糖や塩は勿論、醬油もどき、味噌もどき、ソースもどき、マヨネーズもどきまである。
香辛料やハーブまで置いてあるぞ。
すっげぇ~!
地球の何でもパラダイスだぁ~。
アイシャは買い物籠を手に持ち、あれやこれやと籠に入れて行く。
え!え・え・え~~~!そんなの買うの~?
そんな量の荷物、旅に邪魔になるんじゃ・・・
アイシャの目が必死だ!
これは何を言っても無理そうだ。
逆らうの止めようっと・・・
アイシャがいろいろな調味料や香辛料を籠に放り込んでいる間に、俺は何気に通りの向かいのお店を見た。
あっ、オカリナ!嫌、ハーモニカかな?
「アイシャ、俺向かいのお店に行って来るね!」
「ル・ルークちょっと・・・」
俺はアイシャの止めの言葉を聞かずに向かいのお店に走る。
笛だ、太鼓もある、これはウクレレもどきかな?
俺は先ほど目に入ったオカリナとハーモニカが混じり合った様な楽器を手に取る。
俺は前世の時、一人でオカリナを吹くのが好きだった。
愛子を無くして、悲しみを紛らわすために一人で吹いていたんだ。
「いらっしゃい!」
お店のお爺さんが声を掛けて来る。
「これは笛の様に吹く楽器ですか?」
「そうですよ!これはオカニカと云う楽器です。
「やっぱりそうなんだぁ・・・音色ってどんな感じです?」
「私のが有りますので吹いて上げましょう!ちょっとお待ちになっていて下さいね」
お爺さんは店の奥に楽器を取りに行く。
待っている間に周りの他の楽器も見てみる。
このお店のお爺さん、きっと音楽が大好きなんだろうなぁ。
「お待たせ致しました!では吹いてみますね」
戻って来たお爺さんが早速1曲披露してくれた。
綺麗な音色だ!
うん、オカリナの音色に近いよ。
何時の間にかアイシャが買い物を済ませ、俺の元にやって来る。
「綺麗な音色ねぇ。あれってオカリナ?」
「オカニカって言うだって!たぶんオカリナで間違いないと思うよ!」
「あれ?随分詳しいのね?」
「うん!実はさぁ、前世で愛子が居なくなった時に、寂しい気持ちを紛らわすために、ちょっとハマった時期があってね」
「そうなんだ・・・」
「あれ、買って良いかなぁ?」
「勿論良いわよ!」
「有難う!」
丁度お爺さんが1曲吹き終わった。
「お爺さん、オカニカ買うよ!」
「ハイ、有難う御座います!大銅貨3枚になります」
俺はお金を払い、オカニカを手に取り早速吹いてみる。
綺麗な音色が出る。
基本、オカリナと変わらないな。
これも転生者の誰かが作った物だろうか?
俺は適当に1曲吹く。
「お客さん上手いですねぇ!」
楽器屋のお爺さんが感心する。
アイシャもウットリと聞いている。
俺は妙に嬉しくなった。
これがあれば、これからの旅の道中も楽しそうだ!
俺はそう思い、吹き続けるのであった・・・
それにしてもこの量の荷物どうすんだよ。
軽く20㎏あるんじゃないのか?
俺は思わずため息が出てしまうのであった・・・
次回『第90話:ルーラの町で』をお楽しみに~^^ノ




