第65話:老人二人
リアース歴3236年 6の月26日時過ぎ。
ご老公様の仕置きによって、マルタ達はエターナの町を出て行った。
イスカルはアイシャに未練タラタラの様だったけど、マルタに引きずられて連れて行かれた。
「アイシャ嬢は魔性の女子じゃのう。次から次へと・・・」
ご老公様は笑いながらアイシャをからかう。
「もう、ご老公様ったら!」
アイシャがプンスカした顔で答える。
「これはスマンスマン!許しておくれ、この通りじゃわい」
頭の上に両手を合わせ、頭をペコペコ下げるご老公様。
先ほどとはエライ違いっすね。
ようやく元の好々爺らしいお姿です。
「ご老公様、先ほどは誠に有難う御座いました。アイシャもほら、きちんとお礼を言おうよ」
俺はご老公様に頭を下げる。
続いてアイシャも頭を下げた。
「ワシはお前達二人の後見人じゃ。気にする事はない。
何かあったら遠慮なくワシを頼ってくれい」
ワッハッハッハ!と水〇黄門の様に高笑いを上げるご老公様。
今回は助かりました。
本当に有難う御座います。
「おや!ルークとアイシャかい?」
振り向くとミネバ婆ちゃんが立っていた。
「「「ミネバ!」婆ちゃん!」」
ん?俺とアイシャ、そしてご老公様もミネバ婆ちゃんを見て反応した。
「おや!ビルギット様もいらしたのですか?」
ミネバ婆ちゃんはご老公様を見つけて驚いた顔をしている。
「ミ・ミネバよ、息災であったか?」
ご老公様は優しい顔で答える。
ミネバ婆ちゃんはコクリと頷く。
ん~!何だこの二人の雰囲気、怪しいぞ。
「ご老公様、ミネバ婆ちゃんと知り合いなのですか?」
俺は遠慮なく聞く。
だって、先ほど遠慮はいらんって言っていたからね。
「ワ・ワシとミネバは・・・その・・・昔、恋人同士の間柄での・・・」
頬を赤くしてご老公様が照れながら答える。
「「え~~~!」」
俺とアイシャは驚きの声を上げる。
こ・このエロ爺~!何が恋人同士じゃ~。
「この子達の前で、何を恥ずかしい事をおっしゃるのですか!」
ミネバ婆ちゃんも頬を赤くなる。
婆ちゃん、急にしおらしくなってどうしたのさ。
「まぁ、良いではないか!
それにしてもルークとアイシャ嬢がミネバを知っておった事の方がワシは驚きじゃがの?」
ご老公様はミネバ婆ちゃんと俺の顔を交互に見る。
「俺とミネバ婆ちゃんは・・・ん~、ちょっとした縁で話友達と云うか、祖母と孫に近い関係みたいな? アイシャはその後で一緒に同じ様な関係にね」
ミネバ婆ちゃんはウンウンと頷いている。
俺の横でアイシャも頷いている。
「ほ~、そんな間柄であったか」
ニコニコとして答えるご老公様。
「嫌、俺達とミネバ婆ちゃんの間柄より、ご老公様とミネバ婆ちゃんの間柄の方がショッキングだからね。そっちの方が摩訶不思議だよ。ね、アイシャ!」
「そうそう!恋人同士だったってかなりショッキングな話よね」
相槌を打ってアイシャが話に加わる。
興味津々って感じですよアイシャさん。
女性は恋バナって大好きそうだもんねぇ。
「ん!ワシとミネバの事がそんなに気になるか?別に隠す様なことでもないから話しても構わんぞ」
サラッと言うねぇ。
でも、ミネバ婆ちゃんの了解も得ないで、そんな事言って良いの~?
「ビルギット様!」
ミネバ婆ちゃんは恥ずかしそうだね。
「まぁ、良いではないか!ワシ達がお前達の歳くらいの時じゃったかな。
父に連れられてこのエターナ町に視察に来た時に、偶然ミネバを見かけての。
一目ぼれじゃったわい!」
「まぁ!」
アイシャの目が輝いているわ~。
本当に恋バナが大好きなのね。
「それからワシの方から猛アタックしての。
なかなか難攻不落であったが、やっとワシの気持ちが通じての」
「キャー!それでそれで?」
アイシャが身を乗り出すように食いつく。
ちょっとはしたないですよアイシャさん。
ミネバ婆ちゃんの顔真っ赤やんけ。
「でも、恋人として居られたのは2週間くらいであったかの・・・」
「そうでしたわね・・・」
ミネバ婆ちゃんがちょっと悲しそうな顔になった。
急にしんみりとした空気になる。
「ワシとミネバの事が父にバレテの。
強制的に別れさせられて、ワシは首都に連れて帰られたのだよ」
「そ・そんな!」
アイシャの顔も急に悲しそうになる。
俺も空気を読んで悲しそうな顔をした方が良い?
「ビルギット様は貴族、私は平民・・・仕方がなかったので御座いますよ」
ミネバ婆ちゃんがワザとらしく笑って答えた。
うぅ、なんか見ていて痛々しくなって来たよ~。
「ワシはその後、親の進められた縁談で結婚をした。
風の噂でミネバも冒険者と結婚したと聞いた。
ミネバよ、今はどうしておるのじゃ?幸せに暮らしておるのか?」
「夫は結婚して3年後に傷が元で亡くなりました。
一人息子も戦争に行って帰って来ません・・・」
再び悲しそうな顔になりミネバ婆ちゃん。
「そうであったか・・・なぁミネバよ、もし良かったらワシの元に来ぬか?」
「「「え?」」」
俺とアイシャ、ミネバ婆ちゃんと3人同時に声が上がる。
「ワシは5年前に妻を無くしての。
その影響もあって、当主を息子に譲って隠居したのじゃ。
隠居すると話し相手が減ってのう。
ワシの話相手として一緒に来てくれぬか?」
照れ臭そうにご老公様は言った。
「まぁ、素敵!」
アイシャの目がランランと輝き出した。
ドウドウドウ!少し興奮を抑えようねアイシャ。
「ミネバ婆ちゃん、俺もそうした方が良いと思う」
俺はポツリと言った。
皆の視線が俺に向く。
「ルークや、お前までどうしたんだい?」
ミネバ婆ちゃんが聞いて来る。
「俺とアイシャは結婚してしばらくしたら旅に出るって前に話したよね?
実はミネバ婆ちゃんを残して行くのが気がかりだったんだ俺。
もし、ミネバ婆ちゃんがご老公様と一緒だったら、安心してアイシャと旅に出られる。
どうかな?その方が幸せと思うは俺の身勝手かな?」
「ルークお前・・・」
ミネバ婆ちゃんがボロボロと泣き出した。
俺ってやっぱり自分勝手かな?
でも、その方がミネバ婆ちゃんも幸せじゃないのかな?
「私もそう思うわ。ミネバ婆様どう?」
アイシャが俺の意見に賛成してくれる。
「ルークとアイシャ嬢もこう言ってくれておる。
ワシと一緒にいるのが嫌と云うなら無理にとは言わないが、考えてみてくれないかの?」
ご老公様はミネバ婆ちゃんの手を取り、優しく問いかける。
その光景をウットリとした目で見るアイシャ。
乙女モードに入っちゃったかな。
「す・少し考えさせておくれ・・・」
ミネバ婆ちゃんは泣きながら、声を絞り出すように言った。
後日、ミネバ婆ちゃんはOKの返事をした。
良かったねご老公様、ミネバ婆ちゃん。
次のお話はいよいよルークとアイシャの結婚式だよ~^^
次回『第66話:結婚式』をお楽しみに~^^ノ




