第63話:孫
リアース歴3236年 6の月26日8時半。
「私の出生に係わる事?」
まさか、ここでアイシャの出生の話に切り替わるとは思ってもいなかった俺とアイシャである。
「そうで御座います。実はその件でこのイスカル様もお連れした次第でして。
イスカル様、アイシャ様はお嬢様に似ていらっしゃいますでしょうか?」
何で、ここでイスカルが出て来るんだよ。
そこを説明しろよマルタのオッサン。
「ど・どう云う事ですの?」
アイシャも流石に訳が分からない様だ。
そうだよねぇ、これじゃ訳分からんままや。
「あ!これは申し訳御座いません。少し説明不足で御座いましたな。
え~、まだここだけの話にして頂きたいのですが、実はアイシャ様はバニング伯爵様のお孫様であられる可能性が御座います」
へ!今何て言った?
「わ・私がバニング伯爵の孫?」
流石に驚くアイシャ。
俺もビックリ~。
「ハイ、今のところその可能性が高いので御座います。
そして、このイスカル様はバニング伯爵夫人の甥御様で御座いまして、アイシャ様のお母様とはもしかしたら従弟であるかもしれない方です。
イスカル様はお嬢様の顔を見知っておられますので、アイシャ様のお顔を拝見して頂いて、似ているかどうかを見極めて頂きたかった次第でして・・・」
なるほどね!
「イスカル様、どうで御座いますか?」
マルタは再度イスカルに尋ねる。
「う~ん、似ている様でそうでない様で・・・」
思わずズッコケる俺。
オイ、お前が来た意味ないじゃねぇか。
「何しに来たんだよお前!役立たねぇな」
黙っていられず、つい突っ込みを入れてしまったよ。
「君は先ほどから貴族に対して随分な態度だなぁ。
英雄か何かは知らないけど、少し口を慎みたまえ!」
気分を悪くしたイスカルが再び俺に挑発的な態度を取る。
役に立たないからそう言っただけじゃないか。
「貴族様ってそんなに偉いんですかねぇ?」
イスカルの言葉に反応する俺。
これだから貴族って嫌なんだよなぁ。
面倒だけど、俺もいい加減頭に来ているから喧嘩だったら買うよ。
「マルタ、やはりアイシャ嬢を一度、伯爵様の所までお連れしよう。
伯爵様と伯母上様に確認して頂こうではないか?その方が何かと都合が良い!」
イスカルが俺を見てニヤリと笑う。
こいつ、何が何でもアイシャを連れ出すつもりか。
「私は行かないわよ!」
アイシャはピシャリと言う。
これにはイスカルも苦い顔をする。
「アイシャ嬢、お爺様とお婆さまが待っておられるのですよ。
さぁ、私と一緒に帰りましょう。その方が貴女のためです」
アイシャの手を再び取ろうとするイスカル。
そうされない様にアイシャは俺の影に隠れる。
「行かないと言っているでしょう。本当にしつこい方!
それにまだお爺様とお婆様である可能性だけの話でしょう。
ルークと結婚したらいずれ旅に出るのですし、その時にでも顔を出すわよ」
イスカルはアイシャに完全に拒絶されたな。
アイシャも、もうウンザリした顔をしている。
「それでは遅いのです。さぁ、私と一緒に行くのです」
強引にアイシャの手を取ろうとするイスカル。
俺はそれを阻む。
「邪魔をするな!」
怒りに身を任せ、剣の柄を握るイスカル。
でも、まだ抜いていない。
俺はワザと余裕がある様に見せかけて正面に立つ。
「抜けよ貴族様。それとも怖くて抜けないのか?」
挑発する俺。
街中では先に人に向けて武器を構えたら負けだ。
何を言っても先に抜いた方が罪に罰せられるのだ。
重苦しい雰囲気が流れる。
「双方、それまでにいたせ!」
そこには意外な人物が立っていた・・・
話が長くなったので急きょ2話に分けました^^;
さて、意外な人物とは誰でしょうか?
次回『第63話:元副宰相の威厳』をお楽しみに~^^ノ




