第58話:アイシャの初実戦
リアース歴3236年 5の月24日11時。
マシューと別れた俺達は、冒険者ギルドで依頼を受けた。
その依頼とはエターナ大森林でのビッグラッドの駆除である。
ビッグラッドとは、出っ歯が特徴でネズミより一回り大きい魔物の事である。
エターナの町の北に位置するエターナ大森林では、最近ビッグラッドが異常繁殖しているらしい。
原因は昨年のスタンピードでゴブリン達が激減した事にある様だ。
大森林で生息していたゴブリン達はビッグラッドを主食としていた様で、ゴブリン達が減れば、繁殖力が高いビッグラッドが増えるのは確かに当然と言える。
食物連鎖の影響って凄いよねぇ。
と云う事で、俺とアイシャとイナリはエターナ大森林にいるのだ。
「アイシャー!薬草どれくらい取れた?」
ビッグラッド狩りではなくて薬草集めをしている俺達でした。
「私は、すでに100は超えているわよ。ルークの方は?」
腰を屈めてせっせと薬草を摘み取っているアイシャ。
何処かの農家のお姉さんに見える。
「俺もすでに100束超えていると思う。
二人で200あれば充分だから、薬草取りはそろそろ終了して休憩しようか?」
そう云う俺も腰を屈めて汗を手で拭って農家の兄ちゃんみたいだわ。
「分かったわ!」
アイシャが腰に手を当ててウーンと背伸びをする。
皮のジャケットの上からでも胸がプルンと揺れるのがハッキリ分かる。
アイシャは薬草が一杯入っている袋を持って来た。
俺の袋と合わせて馬型の鉄人君の腰に括り付けてある荷物入れに袋ごと放り込む。
「半分はアイシャの冒険者ポイント用としてギルドに提出して、残り半分はポーションを作って販売するからね」
袋を荷物入れに放り込んだ後、自分の腰にある水筒に手をかける。
「これだけでお金の方はどれ位になるのかしら?」
アイシャも水筒に手を伸ばし、水を飲もうとする。
「アイシャの薬草だけの報酬が大銅貨3枚くらいで、俺のポーション売りなら銀貨1枚くらいかな」
軽く頭の中で計算した。
「え!そんなに貰えるの?」
驚きの声を上げるアイシャ。
「そうだよ!普通はこんな簡単に薬草何て見つけられないからね。
俺達はイナリの鼻のお陰で楽出来ているのさ。あ!イナリ、お前にも水な」
「キュ~!」
(わ~い!)
「そっか~、イナリちゃんのお陰で私達楽して稼げるのねぇ。
町に戻ったらイナリちゃんに沢山好きな物食べさせてあげないと罰が当たっちゃうね」
「キュキュ~!」
(やったやった~!)
イナリの奴大喜びしている。
確かにイナリにはお世話に成りっぱなしだよな。
「そうだね!帰りに露店のおっちゃんの所によって、肉の串刺しを一杯買って帰ろう。
さて、一休憩終わったし、依頼のビッグラッド狩り始めようか。
イナリ、申し訳ないけど又一踏ん張り頼むよ!」
「キュ!」
(お任せあれ~!)
「あぁ、緊張してきたわ!私、狩りって初めてだし」
アイシャが弓を取り出し弦の張り具合を確かめ出す。
顔が強張っているねアイシャ。
「まずは軽く戦闘フォーメーションと云うか決め事みたいな話をしようか」
俺は優しく笑顔で話す。
緊張感をなるべく解してあげないとね。
「うん!お願いするわ」
コクっと頷くアイシャ。
まだ表情は硬い。
まぁ仕方がないよね。
「まず、イナリはアイシャの傍に居て貰ってアイシャと後方で索敵をお願いね。
反応があったらアイシャが俺の方角を指示してね。
俺と鉄人君でその方向に向かうから。
ここまでは戦闘前の話だけど良いかな?」
「ハイ!」
「キュ!」
アイシャとイナリが同時に返事をした。
良々!
俺はこの後ジックリと時間を掛けて、地面に絵を描いたりしながらあらゆるパターンの説明をして行く。
アイシャは俺の説明を一つ一つ頷きながら真剣に聞いている。
アイシャが頭を押さえ出した。
ありゃ!軽くパニックになっている?
アイシャの頭からプシューと湯気が上がっている様です。
「まぁ、説明はこれくらいにして、まずは実戦してみようか」
「そ・そうね!そうしてくれると助かるわ」
ホッとした顔になるアイシャ。
長々と説明ばかりでゴメンね。
「まぁ、ビッグラッド狩りは基本俺だけで済むと思うけどね。
アイシャは見学だけで済むと思うよ」
「え!そうなの?」
アイシャが俺を軽く睨む。
そんな顔で怒っちゃイヤ~ン!
俺泣いちゃうよ。
「ビッグラッドは地中に隠れているのが多いからね。
俺の土の精霊術で掘り起こして退治するのが基本かな」
「何よもう~!」
アイシャがペタンと地面に崩れ様に座った。
見るだけなのに長々と本当にゴメンなさい・・・
その後、地中に居るビッグラッドを土の精霊術で掘り起こし退治して行った。
昼食休憩を入れながら、3時間くらいでビッグラッドを13匹狩った。
途中、一角ウサギが現れて3羽も狩りました。
一角ウサギの相手はアイシャがしましたよ。
アイシャの初の狩りです。
風の精霊儒を使った弓の攻撃は、命中力が抜群で凄まじい威力でした。
最初の1羽を倒した時、アイシャは微かに震えていました。
俺と出会う前は、狩りなんて野蛮って言っていたからねぇ。
命を奪った事への罪悪感があるんだろうな。
俺はアイシャをそっと抱きしめた。
「大丈夫?命を奪った罪悪感に押しつぶされそうなのかな?」
「う・うん!」
アイシャは弱弱しい声で答えてくれた。
「俺もそうだったよ!俺の場合は剣越しだったから手に相手の殺した感触がしばらく残っていてさ・・・
でも、強く生きなきゃって決めから・・・アイシャも少しずつで良いから慣れて行かなくちゃね」
アイシャがコクリと黙って頷く。
アイシャが落ち着くまで少しの間静かに抱きしめていた。
夕方にはエターナの町に帰って来た。
冒険者ギルドに報告行く。
ビッグラッドが13匹で銀貨2枚大銅貨6枚、一角ウサギは肉はお持ち帰りなので素材のみで大銅貨3枚、薬草100束で大銅貨3枚、俺が後でポーションにして売る分銀貨1枚と合わせると銀貨4枚大銅貨2枚の儲けとなる。
冒険者ギルドでマシューと再会したので、一角ウサギの2羽分の肉を孤児園の皆で食べてと渡した。
マシューは満面の笑みで喜んでいた。
それに比べてアイシャの表情は暗く元気がない。
まだ引きずっているんだろうなぁ。
精神的な事だから心配だなぁ。
帰宅すると、俺は背中からそっとアイシャを抱きしめた。
「ねぇアイシャ!今日はずっとこうして抱きしめていてあげるからね。
今晩はエッチしないでゆっくりと抱き合って寝よう」
「心配してくれてありがとう・・・でも、今晩も一杯エッチしてくれる?
狩りの出来事を忘れさせてくれる位に愛して欲しいの・・・」
アイシャが恥ずかしそうに頬を赤らめながら静かに言う。
お任せあれ~!
俺は自分の服を投げ捨てる。
「分かったよアイシャ!任せておいてくれ」
戦闘モードは準備OK!いつでも良いぞ~。
「バカ!」
アイシャがクスっと笑った。
その笑顔にホッとする俺であった。
その後、何度も深く愛し合ったのは言うまでもない・・・
後で寝ている所をイナリに噛まれた。
「キュキュキュ!」
(ご褒美の肉よこせ~!)
「あ!」
すっかり忘れている俺とアイシャであった・・・
結局最後はエッチで閉めてしまいました^^;
次回『第59話:願望』をお楽しみに~^^ノ




