第53話:祝福
リアース歴3236年 5の月22日19時過ぎ。
エターナの町に着いた。
正門を抜けて本通りを歩きながら今後の事を考える。
俺はしばらくの間、この町で冒険者としての力を身に付けようと思っている。
勿論、アイシャと二人で。
冒険者として本登録がなり、新人冒険者としてEランクからスタートとなる訳だが、見習い時代のポイントが加算されるので、Dランクに上がるのは1年もかからないはずである。
Dランクに上がれば、世間的には一人前の冒険者扱いとなるので、アイシャと二人でDランクなったら念願の旅に出るつもりである。
力を身に付けるのは当たり前だけどお金も稼がないとなぁ。
皮の袋に手を入れて持ち金を調べる。
手持ちのお金が銀貨3枚(3万円)と大銅貨と銅貨が数枚ずつ。
確かギルド貯金が金貨3枚(30万円)くらいだったかなぁ?
手荷物の中には、質の高そうな魔石が10個以上あるので、売れば金貨1枚にはなるだろう。
総資産は金貨5枚くらいになるか。
アイシャと二人でやって行くにしても貯金がもう少し欲しいよなぁ。
お金を優先するとなると薬草を取って来てのポーションを作って売るのが一番お金になるだろうな。
しかし、そうなるとDランクになるためのポイントが稼げないし・・・
ん~、バランスを考えないと。
アイシャと合流して二人で決めないアカンな。
あ~、今晩は冒険者ギルドで寝るとして、明日からアイシャと一緒に住む場所も決めないとなぁ?
アイシャと一緒に住む・・・あ!スケベな想像しちゃった。
ヤベ~、息子がいきり立って来た。
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏~♪
ハァ~、煩悩退散!
バカな事をやっていたら冒険者ギルドが見えて来た。
アイシャは待っていてくれるかな?
俺の足取りは早くなる。
「新人冒険者ルーク、到着であります!」
俺は冒険者ギルドの玄関ドアを勢いよく開けた。
ギルド内の視線が一斉にこっちを向く。
オーノー!又やっちまった。
必要以上に目立ってしまった。
「ルーク!」
アイシャだ。
アイシャが勢いよく抱き着いて来た。
「お待たせアイシャ!」
俺はアイシャを抱きしめる。
あ~、幸せだぁ。
この胸の感触が特に溜まりません。
「「「ヒューヒュー!」」」
「「「見せつけてくれるぜ!」」」
「兄貴のスケコマシ!」
周りからヤジが飛ぶ。
でも、何だか温かいや。
皆、笑顔で祝福してくれている。
しかし、一人だけ変な事を言いましたよね。
マシュー君、君だと云う事は分かっていますよ。
後でお仕置き決定だからね。
「いよいよ成人したか!おめでとうルーク」
ギルド長のベルクーリさんが寄って来て、俺の頭を撫でてくれる。
ベルクーリさんよ、成人しても子供扱いじゃん。
「ギルド長、有難う御座います!」
アイシャを抱きながら挨拶を返す。
ベルクーリさんにはお世話になったからきちんと挨拶はしないといけないよね。
「早いもんだなぁ!この間冒険者見習いになって現れたばかりだと思っていたのに、あっという間に成人か・・・ロディもあの世で喜んでいるだろうな」
ベルクーリさんの瞳に涙が。
ベルクーリさん、父さんの代わりにいろいろと面倒見てくれたよなぁ。
ギルドの皆も優しく接してくれたしね。
皆には感謝感謝です。
「ギルド長には、まるで父の様にして頂きまして、本当にいろいろとお世話になりました。
こうして無事に成人を迎える事が出来たのもギルド長のお陰です。
そして周りの皆も有難う。孤児の俺に優しく接してくれて・・・感謝しています。
本当に有難う御座いました」
皆、照れくさそうな顔をしている。
ちょっとしんみりさせ過ぎちゃったかな。
あ~あ、ベルクーリさんはとうとう泣き出しちゃった。
「俺は結婚もしていないし独り身だからな。
ロディには申し訳ないが、今ではルークが本当に自分の息子に思えてならないんだ。
こいつらだって似た様に思っているはずだぜ。
これからも何かあったら遠慮なく言って来い。
俺達はお前の、嫌、アイシャも一緒だな。俺達はお前達の味方だ!」
「「「その通りだぜ!」」」
ベルクーリさん、皆、本当に有難う。
「よ~し、今日は俺のおごりでルークの成人祝いだ~!
皆、迎えの酒屋に行くぞ!ガンガン飲めよ~!」
ベルクーリさんは急に泣き止み、皆に向かって宣言する!
「「「いよ!流石ギルド長!」」」
「「「太っ腹!」」」
「「「飲むぞ~!」」」
皆から歓声が上がる。
ん~、実は酒を飲む口実が欲しかっただけではないの?
まぁ、祝ってくれているから良いか。
俺はベルクーリさんに襟首を引っ掴まれて連行される。
抱きしめていたアイシャとは離れ離れになる。
あ~ん!アイシャが~。
何が本当の息子の様にだよ。
だったら俺の心情を察してくれってばよ。
アイシャと一緒に居たいんだってば~!
誰かヘルプミー!
こうして俺はギルドの皆に一晩拘束される事となる。
アイシャとマシューは途中で孤児園に帰って行った。
それからが本当の地獄となる。
皆から、次々と酒を注がれ俺の意識は無くなった。
朝、酒場で気づくと全身裸で寝ていた。
他の何人もが裸で寝ている。
何ともおぞましい風景だ。
な・何があったんだ?
俺の身体は大丈夫なのか?
身体を隅々まで調べると、何処も何ともなさそうだ!
お尻の穴も心配ない。
少しホッとする。
だが俺に又一つ、忘れたい黒歴史が増えたのは確かであった・・・
次回『第54話:新居』をお楽しみに~^^ノ




