第45話:剣聖
リの国では4年に一度、国中の1番の強者を決める『天下一精霊武術大会』が開かれる。
武術あり精霊術ありのこの大会は、上位に食い込めば国や貴族達への士官の可能性が有り得るとあって、国中は勿論、他国の冒険者や傭兵も参加する大イベントとなっている。
20年くらい前の大会で、一人の若者がこの大会で優勝した。
その若者は、精霊術は使えず、剣術のみでこの大会に優勝したのだ。
人々は彼の事を褒めたたえた。
『剣聖』と云う名で・・・
リアース歴3235年 7の月18日。
エターナの町のベルクーリさんから、緊急に来て欲しいと連絡があった。
いつもは1人で行くのだけれど、今回は3人で出かけた。
師匠とジークが着いて来たのだ。
ジークは初めてルタの村を出たのだ。
道中、ずっと興奮していた。
そして今も・・・
「師匠、兄さん!エターナの町ってデカいんだねぇ」
正門を見て目を丸くしているジーク。
御上りさん丸出しだね。
まぁ、俺も最初に来た時はそうだったっけ。
「大きいでござろう。だけど、主要都市や首都ザーンはもっと大きいでござるよ~。
人間がもっと沢山いて、人に酔いそうでござるよ」
「「へぇ~!」」
俺はエターナの町以外はまで行った事がないので、ジークと一緒に師匠の言葉に素直に驚く。
3人で大扉を潜った。
いつも通りの活気だな。
先月、スタンピードがあったなんて嘘の様だ。
正門から続く大手通りを歩く。
町の中の華やかさに更に驚くジークである。
本当に御上りさん丸出しだね。
「お!エターナの小さな英雄殿じゃないか。今日も肉の串刺し買って行くかい?」
露店のおっちゃんだ。
相変わらず元気な人だなぁ。
「その英雄殿は止めてよおっちゃん!」
キャー!その呼び名止めて~!
メッチャ恥ずかしいわ。
「ん!ルークのお知り合いでござるか?」
「いつもお世話になっている人です。師匠、ここの肉の串刺し美味しいんですよ!」
「ほ~、では10本ほど貰うでござるよ!1本幾らでござるかな?」
何だか師匠の機嫌が良いな。
師匠も久しぶりの町で興奮しているのかな?
「お!毎度あり~。大銅貨1枚になります。
英雄殿の知り合いみたいですから3本サービスしときますぜ。
熱いから気を付けて下さいね」
おっちゃんの機嫌も良いな。
3本もサービスだなんて気前が良い~。
いよ!太っ腹!
「どうもでござるよ!村に帰る前に又寄らせて頂くでござるよ」
「毎度あり~!」
3人と1匹で肉の串刺しを食べながら大手通を歩く。
ジークが「美味しい美味しい!」って煩ぇ~。
「お!英雄殿だ」
「鉄壁のルークじゃん」
「イナリちゃん、モフモフさせて~!」
町の皆から声を掛けられる。
イナリもすっかり人気者だ。
声を掛けてくれるのは嬉しいんだけど、英雄だの鉄壁だの中二病っぽくて恥ずかしい。
お願いだから止めてケロ~!
冒険者ギルドに入ると、掛け声は一層増えた。
「お!ルーク待っていたぞ。これからすぐに一緒に子爵邸に行くからな」
ギルド長のベルクーリさんが、ギルドで俺を待ち構えていた。
これからすぐに領主の所ですか?
着いたばっかりなのに~。
少しは休憩させてよ・・・
「ん?もしかして剣聖クロード様で御座いますか?」
ベルクーリさんが師匠に気が付いて話かけて来た。
「そうでござるよ!」
いつも通り、間の抜けた顔でニコニコと返事をする師匠。
ん!今何て言った?
剣聖?
又このパターンか~い!
「「え~!師匠って剣聖なの~?見えねぇ~」」
俺とジークが同じ反応をした。
流石、心の兄弟だぜ。
剣聖って言われたらそりゃ驚くよな。
この人は何処まで驚かせるんだよ。
まるで人間ビックリ箱や~!
あ!何か『彦○呂」みたいな言い方してしまった・・・
「黙れ!馬鹿弟子共。確かベルクーリ殿でしたかな?
剣聖と言われていたのは数十年前の事でござるのでご勘弁して下され」
「あ!これは申し訳御座いませんでした。
しかし、私達の世代は、剣聖クロード様は英雄で御座いましたからねぇ。
『若き天才剣士』は何時まで経っても我々の中では同じなので御座います」
師匠って凄い人だったんだなぁ。
全然そんな風には見えないよな。
若き天才剣士か~
見た目は今も若いよね。
怖いわ~!
次回『第46話:ご老公』をお楽しみに~^^ノ




