第46話:ご老公
リアースの貴族世界では、〇〇の『ご老公』という言葉がある。
ご老公とは、貴族当主を引退して、次代へ引き継いだ元当主の事を言うのだ。
エターナ家のビルギット・エターナ子爵も先年、長子に当主の座を譲り、エターナのご老公と云われている
エターナのご老公ビルギットは、リの国王とは学生時代からの友人であり、国王が信頼する数少ない人物の内の一人としても有名である。
ルークは今、そのご老公と対面しようとしている・・・
リアース歴3235年 7の月18日。
「おっと、ご老公がお待ちだ!ルーク急ぐぞ。
そうだ、クロード殿も一緒に如何ですかな?」
ご老公!
何だか水戸黄門みたいだね。
(この紋所が目に入らぬか~! by 格さん)
目に入ったら痛いじゃねぇか!って、いちゃもん言っていたよなぁ。
「エターナ元子爵殿ですか・・・まぁ、知らぬ仲でもないし、ご挨拶しておくでござるかな」
師匠はご老公様の事を知っているんだぁ。
あ!確か師匠は伯爵家の3男坊でしたっけ。
「ぼ・僕はどうしたら良いでしょうか?」
ジークが恐る恐る聞いて来た。
そう言えば、お前居たんだっけ。
「だったら、ハンナ師匠に頼まれていたポーションの売却に行ってくれば?
場所は・・・そうだ!イナリ一緒に着いて行ってやれよ。
お前なら場所知っているし、護衛にもなるだろ」
「キュ!」
(分かった~!)
イナリが俺の肩からジークの頭に飛び乗る。
ジークって女の子に間違われるほどの美形だからなぁ。
悪いおじさんに悪戯でもされたら大変だ。
イナリが一緒なら安心安心。
「え!僕一人で行くの?こ・怖いよ~」
上目使いでお強請りポーズは止めなさい。
可愛い女の子にしか見えんわ。
つい悪戯しそうになるから止めて~。
「お前も、もうすぐ12歳で冒険者見習いになるんだろ!
俺が成人したら、郵便の依頼はお前が引き継ぐんだし、しっかりしろよ」
そうなのだ!
ジークは11の月4日で12歳になる。
12歳になったら俺と同じ様に即冒険者見習いになるらしい。
俺が成人してルタの村を離れたら、ジークが郵便の依頼を引き継ぐ事もすでに決まっているのだ。
「わ・分かった・・・行って来るよ・・・」
「終わったら、この冒険者ギルドで待ち合わせな!」
イナリを頭に乗せてトボトボと歩いて行くジーク。
頑張れジーク!
早く兄離れをしてくれ・・・
ベルクーリさんに案内されて、俺と師匠は子爵家の屋敷に向かう。
エターナのご老公と現当主様は、普段は首都ザーンに住んでいるらしく、領内にはたまに戻って来る程度らしい。
この領内の事は領政管に丸投げなんだってさ。
そんなんで大丈夫なのか?
屋敷の中に案内され、応接間で待たされる。
うわ~、鉄で出来た全身鎧や立派な剣が飾ってある。
ソファがフッカフカだよ。
貴族ってやっぱり金持ちなんだなぁ。
ガチャっとドアが開いた。
「待たせて済まなかったな!」
白髪の混じったベージュ色の髪で、小太りの好々爺。
これがエターナのご老公の第一印象である。
「ご老公様。エターナの小さな英雄ルークとその師匠で御座います剣聖クロード様をお連れ致しました」
ベルクーリさんが椅子から立ち上がり、ピシっとした直立姿勢で話す。
俺と師匠も椅子から立ち上がる。
「剣聖クロードじゃと?」
「懐かしいでござるな、ビルギット!」
ビルギット・エターナ、これがご老公様の名前だ。
二人とも随分親しい間柄の様だね。
「旅を続けていたと聞いておったが、まさかこの少年の師匠であったとは・・・
お主・・・全然変わらんのう」
昔からこのままなのね師匠。
本当に怖い人・・・
「ビルギットはすっかり太って変わったでござるなぁ。
ご老公って・・・クスクスクス!
ダメだ!笑いが止まらんでござる」
師匠が大爆笑である。
失礼ですよ。
「う!煩いわい・・・まぁ、お前の話は後でじゃ。
オッホン!ルタの村の少年ルークよ」
急に真面目な顔になって俺に話を振って来た。
「ハ・ハイ!」
緊張するよ~。
「まぁ、そんなに緊張せんで良いわい。
エターナの奇跡の事は、隣りにいるベルクーリから詳細を聞いた。
ルークよ!この度はエターナの町を、エターナの住民を守って貰ってくれて本当に有難う!
今回の事は国王陛下も殊の外お喜びであった。陛下に代わって改めてもう1度言う。
本当に有難う!」
ご老公様が頭を下げた。
「そ・そんな・・・あ・頭を下げないで下さい!」
偉い人に頭下げられてパニック~!
俺、どうしたら良いの~?
「お主はそれだけ偉大な事をしたのじゃぞ。
頭くらいなら何度でも下げてやるぞ、ホレ!」
又、頭を下げる。
ギャー、止めて~。
「ご老公様!悪ふざけは止めて上げて下さい。ルークが困っております」
ベルクーリさんが、クスっと笑って手助けしてくれた。
ベルクーリさん有難う!
「そうかそうか!これはスマン。
ところで、何か感謝をしたいと思うのが、何が良いであろうかのう?
陛下からも宜しく頼むと言われておるでのう。
金銭か何かとも思ったが未成年だしのう・・・そうだ!成人したらエターナ家に仕えぬか?」
キョエー!
「み・身に余るお心使い・・・た・大変有難う御座います。
私は成人致しましたら、師匠と同じく旅に出ようと決めておりまして、誠に有難いお話なのですが・・・」
もうパニック全開です!
敬語これで合っている?
失礼な事言っていないかな?
でもさ・・・
助けてケロ~
「そうか!クロードと同じで修行の旅か・・・若いとは良いのう。
まぁ、気が向いたら何時でも訪ねて来ると良い。
しかし、そうなると金が良いかのう?」
腕組をして考え始めたご老公様。
「お金の方もお断り致します。
町の被害と云うか、今回の事でかなり赤字って聞いています。
だったらその分、街の復興とか皆のために回して上げて下さい。
僕は、嫌、私は何もいりません・・・」
素直な気持ちだ!
食料や薬品でかなり赤字だって聞いている。
参加した冒険者の報酬だってバカにならないって聞いたしさ。
特別扱いで一人だけ貰うのって、気が引けちゃいます・・・
「こ・こんな若いのに言葉使いと良い、しっかりとした考えが出来る子じゃ・・・」
あ!何かスイッチ入れちゃった?
ご老公様が目に涙を貯めている・・・
「ビルギットよ、こう云うのはどうでござるか?
旅はいろいろと面倒な出来事が沢山起こるものでござってな。
特に若い者は軽い目で見られたりして困る事が多いでござる。
そこで、バックにエターナのご老公が着いているんだぞ~と云う印みたいな物を渡すと云うのは。
ルークの旅に心強いものになると思うでござるよ!」
「お!それは名案でございますな」
師匠の意見にベルクーリさんも賛同する。
まぁ、それだったら何かあった時に助かるし良いか。
印籠にでもしてもらう?
この紋所が~・・・って、このネタ2度目か。
「うむ!そうしよう。流石クロード、名案じゃ」
これで1件落着!ワ~ッハッハッハッハ!
て水戸黄門ネタはもう要らんよ。
俺はこうしてエターナ家の紋章の入ったメダルを貰った。
メダルの裏には「この者、エターナの町を救った英雄なり!エターナ家はこの者の後見なり!」と書かれていた。
ありがとう御座いますご老公様。
これって凄く助かります。
西村晃さんの水戸黄門が一番好きだったでござる^^
次回『第47話:少年期の終わり』2章のラストです、お楽しみね~^^ノ




