第26話:父の師匠
人の縁とは、何とも不思議な巡り合わせであろうか?
大切な人とは、魂で繋がっていると言う。
人は縁によって成長する。
縁によってしか成長できない。
必然の縁。
それは与えられた縁。
生まれてきた親の下も必然の縁。
父ロディの刀術の師匠とロディの息子のルーク。
ロディが結んだ縁。
これも又必然の縁なのかもしれない・・・
リアース歴3233年 10の月20日。
俺は今エターナの町に来ている。
先ほど到着したばかりである。
今回が4回目の訪問だ。
日が暮れるのが早い季節となり、19時はもう真っ暗だ。
「お!坊主、来ていたのかい。今日も買って行くかい?」
露店の肉の串刺しを売っているおっちゃんだ。
もうすっかり顔なじみである。
「今日は串5本頂戴!今着いたばかりでさぁ~、もう腹ペコだよ」
俺のお腹は鳴りっぱなしです。
イナリもね。
「毎度あり~。銅貨5枚な」
銅貨5枚を渡して串を受け取る。
「アチっ!」
「ワハハハハ!焼きたてだぞ。火傷に気を付けてな」
「ハ・ハイ!アチっ、ハフハフ・・・」
イナリにも分けてあげて、何時もの様に食べながら歩く。
お!あれは焼き芋かな?
季節だねぇ~。
脂ののった秋刀魚食いてぇなぁ。
この世界にも秋刀魚っているのかなぁ?
そんな事を思いながら冒険者ギルドに着いた。
「こんばんは~!ルタの村のルーク、只今到着で~す」
ドアを開けて入ると、フロアにいる人の目が一斉にこっちに向く。
ありゃ!目立ってしまった。
「「「お!坊主、元気だったか?」」」
あちこちで返事が返って来る。
最近、結構有名な俺であった。
「坊主!商人ギルドのギルド長が、顔出せって言っていたぜ!また、書類の計算の依頼だろうよ!」
「土建屋のオヤジも顔出せって言っていたぞ!また、水路の仕事じゃないのか?」
「「「嫌、どこどこの・・・」」」
依頼殺到である。
こっちに来た時、ベルクーリさんの紹介で短期の仕事を何回かやらせて貰っていた。
評判が良かったのだろう。
前回来た時くらいから、この様に再度の依頼が舞い込む様になっていたのだ。
こりゃ、今回は3泊くらいしなきゃダメかな?
「お!ルーク来たか。ちょっとこっちへ来い。例の人物が見つかった」
ベルクーリさんだ。
お!例の人物。
刀使いの人だな。
「ハ・ハイ!」
ベルクーリさんの後に着いて行く。
ギルド長室と名札が書かれた部屋へ入って行く。
立派なソファが置いてあるな。
贅沢してんじゃないのさ、ベルクーリさん。
「まぁ、座れ!茶でも入れさせる」
「あ、有難う御座います!」
ほどなくして、お茶を持った女性と副ギルド長のステイさんが入って来た。
ステイさんは40代くらいかな?
黒い髪を肩まで伸ばしたイケメン風の男性です。
身体が細いけど、レイピアの使い手なんだってさ。
モテそうな人です。
敵です。イケメンは皆敵だぁ~。
「ギルド長!お呼びですか?」
「急に呼び出してすまなかったなステイ!クロード様の件はどうなっている?」
「クロード様は、先月居場所が分かりまして、クの国にいらっしゃいました。
今は国境の森を抜けて、交易都市ルーラに向かって来ているそうです。
ルーラを経由して、直接ルタの村に向かって頂けるよう手筈しております」
「え!直接来て下さるように、もう頼んであるんですか?」
話がそこまで決まっちゃっているんですか?
お願いはしたけどさ、もう少し俺に話を通して欲しかったわ~。
「そうだ!見つかった時点で、刀術の教えの依頼をお願いする様にしておいた。
依頼の報酬は俺からすでに払ってあるから安心してくれ」
ベルクーリさん払いですか。
ラッキー!
後で請求するのは止めてね。
「でも、いきなり見ず知らずの僕に教えてくれるんですか?
普通はまず最初に会ってから・・・」
「あぁ、その辺は全く心配ない。お前の事はすでに先方に話が伝わっている。
クロード様はお前の父ロディの師匠だった人だからな。
ロディの息子なら鍛え甲斐があると言っていたそうだ」
ヒョエ~!
鍛え甲斐があるってスパルタ決定じゃないっすか。
父の師匠だった人か~。
俺の人生ここまでだったりして・・・
4回目となるエターナの町の訪問は、今回も又慌ただしかった。
昨夜はベルクーリさんに付き合い夜遅くまで飲まされた。
俺、一応未成年の12歳なんですけどね・・・
途中、父の知り合いの冒険者も加わり、もう大宴会。
相変わらずフォッカーさんとは会えていません。
あの人、きちんと生きているのかな?
父が救った命なんだから大切にしてくれよ。
翌日は教会に行って手紙を届け、4カ月振りにアイシャと対面をする。
お互いに気まずい~。
俺、謝ろうと思ったんだけど謝れなかった。
結局、会話らしい会話は出来なかった。
俺、嫌われてみたいだしね。
くすん!
教会の後は、何時もの様に商人ギルドでポーションなどの薬品を治める。
ポーションは本当に良い小遣い稼ぎになります。
後は再依頼の短期の仕事を3件ほどこなした。
商人ギルドでは書類の計算。
こっちの世界って掛け算や暗算の仕方なんて勉強しないんだってさ。
俺、天才扱いだよ。
土建屋の仕事は水路の修理でした。
土の精霊術は土建作業には必須ですからのう。
社長にこのまま就職しないかと誘われましたよ。
倉庫の整理の依頼もありましたよ。
倉庫の整理は鉄人君がいるから楽々。
俺はただ鉄人君に命令していただけっす。
仕事の合間をみて、公園でミネバ婆ちゃんと会ってお話もした。
ミネバ婆ちゃん少し元気になっていた。
俺に会うのを楽しみにしてくれているらしい。
嬉しいな!
ミネバ婆ちゃんとはいろいろなお話をします。
不思議と何でも話せるんだよなぁ。
アイシャとの事も相談しちゃった。
早く謝りなさいと怒られました。
明日にでも行って来ます。
イナリもミネバ婆ちゃんが大好きで、膝の上で丸くなってすぐ寝る。
まるで猫だよ・・・
ミネバ婆ちゃんもイナリをモフモフするのが大好きなんだって。
何かホッとする時間です。
こうして4回目のエターナの町の訪問は終わりました。
毎回しんどくなって来ています・・・
夕方もう1話投稿します。
次回『第27話:武蔵』をお楽しみに^^ノ




