第25話:戦う覚悟
覚悟。
それは一歩を踏み出す勇気。
それは迷いを捨て決断をする時。
それは何かを捨てる事や諦める事。
それは全てを受け止める心構え。
人はそれぞれ何かの覚悟をして生きている。
ルークもまた同じである・・・
リアース歴3233年 9の月3日。
冒険者見習いとなって3カ月ほど経ちました。
怪我もする事なく、順調に稼いでいますよ。
そして、俺は今魔物との闘いの最中である・・・
「鉄人君は奴の突撃を何としても食い止めろ!
イナリは左側から狐火でけん制。
俺は右側から矢を射かける」
「キュ!」
イナリが左側に駆けだす。
俺は右へ。
鉄人君は腰を屈め、魔物の突進に備える構えをする。
ドスン!
大きな音が響いた。
口の両端に大きな牙があるワイルドボアと鉄人君がぶつかった音だ。
普通のイノシシより倍を大きさだ。
両者、力と力の押し合い。
お互いに一歩も譲らない。
「ブモーーーーー!」
ワイルドボアが叫ぶ。
「今だイナリ!奴の顔に狐火だ」
「キュ!」
直径20cmくらいの狐火が5つ、ワイルドボアを襲う。
それに合わせて矢を射かける俺。
最近、大分矢の命中度が上がって来た。
まだ、へっぽこの域は出ないけどさ・・・
矢がワイルドボアの首に刺さる。
「ブモっ!ブモー!」
ワイルドボアが暴れ出す。
「鉄人君、しっかり押さえこんで!」
俺は叫びながら、引き続き2矢目を射かける。
あ!外れた・・・
イナリの傍の地面に刺さる。
「キュキュキュキュ!」
ヤベっ!イナリが怒っている。
許してよ~。
ん~、暴れているから危なくて近づけない。
「土なる力を我に与え給え!大地を砂に!『ピーート!』」
俺は土の精霊術を詠唱した。
地面を砂に変え、足場を崩す補助術ピートだ。
暴れていたワイルドボアの地面が砂に変わる。
ワイルドボアの右前脚が砂に沈み、体勢を崩し倒れ始める。
鉄人君がその上に覆い被さる様に一緒に倒れる。
チャンス!
俺は弓を放り投げ、ワイルドボアに駆けだす。
左の腰にある脇差の柄を右手で握る。
どうする?居合抜きは無理だな。
刀はまだ抜かない。
ワイルドボアは鉄人君の下敷きになって、下でバタバタ暴れている。
「そのまま抑え込んでおいてくれよ!」
俺はワイルドボアの真上へジャンプする。
右手の柄を握り直す。
親指を鍔の方にではなく、小指を鍔の方に握る逆さ持ちだ。
ジャンプしながら刀を抜く。
左手も添えて、刀の刃を下に向ける。
ワイルドボアの頭目がけて落下した。
ズブっ!
両手に嫌な感触が伝わる。
仰向けになっていたワイルドボアの顎から、刀が突き刺さっている。
「ブモモモモ!」
ワイルドボアが小さな悲鳴を上げる。
4本の脚が空に向かって伸びる。
痙攣している様だ。
空に伸びた脚は急に力が抜け落ちる。
終わった・・・
(ワイルドボア、ゲットだぜ~! Byサトシ)
「ふ~!」
初めての大物である。
幾らになるかなぁ?
気持ちはすでに報酬に向いている。
刀を抜く。
刀の刃を振って血を飛ばす。
そして、クルっと回転してから鞘に納める。
(フっ、決まった!俺ってカッコいい!)
時代劇の侍みたいだぜ俺。
あ!後でちゃんと刃を拭き直さないと錆びちゃうな。
「イナリも鉄人君もお疲れ!」
「キュ!」
疲れた~と言っているように俺の元に戻って来るイナリ。
俺は水筒を取り出し、水を口に含む。
「生き返る~!イナリもほら」
左手の掌を丸くして水を溜まりやすいようにして、水を灌ぐ。
イナリが水を舐めるように飲む。
「キュキュキュ~!」
生き返る~!
イナリもそう言っているのかな?
今回も危なげなく魔物を倒せたかな。
だけど、決めてがなぁ。
一撃必殺みたいな技が欲しいっす。
俺は身の安全を第一としている。
鉄人君に壁役をしてもらい、イナリと俺は距離を取って攻撃する。
最後の・・・本当に最後の止めを刺す時に刀を抜く。
それは俺がまだ臆病だから・・・
まだ強くないから・・・
でも、魔物を殺す事に慣れて来てしまっているなぁ。
前世の俺は虫も殺せない男だったのにな。
剣道をやっていた時もそうだ。
回避や守るのは得意な方だった。
でも、攻撃は好きじゃない。
命を奪うのは怖いよ。
でも、そうしなきゃこっちが殺されるんだ。
やらなきゃいけないんだ。
戦う覚悟が必要なんだ。
命を奪う覚悟を。
俺は自分にそう言い聞かせている。
早く強くならなくちゃ。
そうしないと守れない・・・誰も・・・
愛子・・・
ルークは又狩りを続ける。
生きて行くために・・・
次回、第26話:父の師匠お楽しみに~^^




