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7.事情と、人に向き合うこと。

魔王討伐の功績も、良いものじゃないよ……って話。

_(:3 」∠)_


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あとがき参照!!








「まったく、どうして師匠は言われっぱなしで……ぶつぶつ」

「俺は目立ちたくないんだ、って言ってるだろ?」

「そういう話じゃないだろ!?」




 ――翌日、リリスはまだ文句を言っていた。

 日課のスライム狩りに向かう道中で、彼女はプリプリと怒り続けている。俺がそれとなく事情を説明したが、やはり納得はできない様子だった。

 だがそれも無理はないか、とも思う。

 流れから師弟関係を結んだというものの、俺は彼女にすべてを話していなかった。



「師匠は強い! アタシの父よりも、だ! それを何故、誇らないんだ!?」

「ははは……人間の世界だと、強いってのは良いことだけじゃないんだよ」

「どうしてだ? 良いことばかりじゃないか」

「まぁ、軽く話しておくか……」



 周囲には誰もいないし、良い機会だろう。

 俺は一つ息をついてからリリスに向き直った。そして、



「これは俺がお前の父親を倒して、王都に報告しに行った時のことだ……」




 軽く昔話をする。

 それは少しばかり、胸糞が悪い内容であった。



 





「……魔王討伐の報酬が『王都に拘束』だって?」

「そういうこと」



 一通り話し終えると、リリスは眉間に皺を寄せる。

 その反応も無理はないだろう。俺が話したのは、力ある者に忠誠を誓うのが常識、となっている魔族にはあり得ない話だった。

 もっとも、魔族でなくとも嫌悪感を抱くだろうけど。



「そんな馬鹿な話があるか! どうして魔王を超越した者たちを縛り付け、飼い殺しにする!? 貴族と結婚させて地位を与えるといえば聞こえは良いが、望まぬ報酬など報酬とは呼ばない!!」



 だから、魔族である少女にとってはなおのこと。

 人間という生き物の考え方に、相容れないという反応を示した。



「そういうものだよ、人間って。表向きは歓迎してくれているけど、裏では魔王以上の力を持つ俺たちのことを恐怖していたんだ」

「でも、身分で行動を縛るなんて……!」



 俺の言葉にリリスは憤慨している。

 思い出して考えると、尚更に彼女の言う通りと感じた。

 要するにあの日、俺に与えられた選択肢は二つだったのだ。一つは貴族の女性と結婚することで地位を得て、王国に盾突かずに一生を終えること。そして、二つ目が――。




「だから俺は、もう一つの選択肢を取ったんだよ」

「――あらゆる権利を捨て、辺境にて生涯を過ごすこと……か?」




 俺はリリスの言葉に頷いた。

 つまりは田舎に引きこもって、目立つことなく余生を過ごすこと。これには行動の制限はつかないが、魔王討伐の報酬らしいものは得られない。仲間の間でも様々な議論が交わされて、結局は半々に分かれることになった。

 俺はもちろん後者であり、だからいまこうやってカディスにいる。



「………………人間は身勝手で、薄汚いな」

「良いんだよ、別に。俺は元から故郷に帰りたかったんだからさ」

「…………でも、それだと師匠は……!」

「ただ、な。リリス、これだけは覚えておけよ」

「え……?」



 我が事のように唇を噛む少女に、俺はこう伝えることにした。

 きっとこれは、人間も魔族も関係のない話だと思うから。




「たしかに王都の奴らはヒドイ人間だった。でもリリスが俺の気持ちになって怒ってくれる魔族がいるように、カディスにだって俺に感謝してくれるボーガンさんみたいな人間もいる」

「………………」

「だから、さ――」




 ポン、と彼女の頭に手を置きながら。





「一括りには考えず、一人ひとりに向き合うのが大切なんだよ」――と。









「師匠は、強いな……」




 先を歩いているウィリスを見ながら、リリスはそう呟いた。

 魔族も人間も一括りに考えず、各々にしっかりと向き合う大切さ。その言葉を聞いて、少女は様々な気持ちが湧き上がるのを感じていた。




「………………」




 そして、少しだけ立ち止まって。

 一つ頷いてから、彼の元へと駆け寄るのだった。



 


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