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愛しのショートケーキ ~隠されていた力~

 俺は家に帰る道をひたすら歩いていた。夏恋に飛ばされた公園は家から約3kmくらいの距離にあるので今日はそのまま家に帰ることにしたのだ。今から学校に戻っても、今日は国語と英語しかないので結局寝ることになってしまうだけである。

 それに俺はある大事なことをを思い出したのだ。

 昨日、学校の帰りに夏恋が「学校の近くに新しくできたケーキ屋さんがあるんだけど一緒に行ってみない?」と誘ってきたので仕方がなく、俺は夏恋と一緒にそのケーキ屋に行ったのだが、その店に入った途端に俺の心が甘くていい匂いに踊らされたのだ。しかもそれだけではない。俺の目にはショーウィンドウの奥にある、赤と白が創り出すもはや芸術と言っていいほどの品物<イチゴのショートケーキ>がたくさん並んであったのだ。

 俺は幼い少年がはじめておもちゃ買ってもらったレベルで目を輝かせていたに違いない。まさか俺もショートケーキくらいでここまで感動するとは思わなかった。

 「九頭龍君、ねえ九頭龍君ってばー!!」

 夏恋の呼びかけで俺は正気に戻った。ショートケーキで意識が飛んだのは初めての経験であった。それだけ気持ちが宙に浮くほどのいい匂いをしたショートケーキだったのだ。。

 俺はこの匂いにつられ一個500円もするショートケーキを2個も買ってしまった。夏恋はシュークリーム、ミルフィーユにイチゴのタルトなどを買っていた。女子はこんなになんで甘いものが好きなのかといつも思う。

ケーキを買った後、俺は夏恋と別れてからすぐに家に帰り、待ってましたと言わんばかりにショートケーキを一つ食べてみた。俺はほっぺたが落ちるというのは本当にあるんだなと思った。口の中にイチゴの甘酸っぱさとクリームのなめらかさが絶妙に広がり俺をやさしく包み込んだのだ。

 俺は一つ目のケーキをペロリと平らげてしまい、すぐさま二つ目のケーキを食べようとしたが俺はそのケーキを冷蔵庫に慎重に置いた。今ここで2つ目のケーキを平らげるのは簡単だが、この幸せを明日も味わいたいと思った俺は心を鬼にして我慢した。

 今まさに俺の家の冷蔵庫の中には俺が買った、絶品のイチゴのショートケーキが俺の帰りを待ちわびているのだ。そう思うと俺は一刻も早く家に帰ってショートケーキを頬張りながら、今日起こったことをさっぱり忘れようと心に決めたのである。

 俺は足を急がせ残り1km位の道のりを頭の中をケーキのこと埋め尽くしながらで進んだ。

 楽しい時間は早く過ぎると言うが本当ににこんなに早く時間が過ぎるとは…

 気が付くと俺はもう家の前までついていたのだ。欲望というのは恐ろしいものだ…そんなことはさておきケーキだケーキ!!

 俺はスキップでも刻むかのようにご機嫌な足取りで冷蔵庫までの道のりを進んだ。

 この扉を開ければ俺を楽園へといざなってくれるというのは大袈裟かもしれないがそれに近い幸せを得られるのを予想して俺はその扉を幸福に満ちた顔で開いた。次の瞬間俺の顔は希望から絶望に変わった。

 「そ…そんな、そんな馬鹿な…」

 俺は目にとらえた光景を見て愕然とした。昨日までそこにあったイチゴのショートケーキが今ではイチゴのへたへと変わり果てていたのだ。

 「くそがぁ!!俺のショートケーキを食いやがったのはだれじゃあ!!」

 俺が目を見開いて俺のショートケーキを食われた怒りを叫んでいたら「うるさいよ~、もう!!」という声が聞こえその声の主が現れた。

  はげかかっている髪にたるんでいる腹、残念だが俺の親父だ。

 「こんな時間に帰ってきてなにやってるん?」

 「そんなことはどうでもいいだろ!それより冷蔵庫に入ってたショートケーキ知らない?」

 「し、知らない…甘くてとてもおいしかったショートケーキなんて知らないよ~」

 突っ込みどころが多すぎて一瞬呆れてしまったが、俺はあるものを見てまた怒りがふつふつと煮え滾ってきた。

 「親父…口にクリームがついてんだろうがぁ!!何、漫画みたいなことしてるんだよぉ!!」

 俺は怒りにまかせてアッパーを繰り出そうとした。怒りの力なのかパワーがどんどん俺の拳にたまってきている。いや…待て!これは怒りのパワーだけじゃない。もっと別の大きな力が…

 次の瞬間俺の拳が白い光に包まれた。俺はアッパーを繰り出すのをやめようと思ったが拳が言うことを聞かない。そのまま俺は、親父にアッパーを繰り出してしまった。

 親父はすさまじい勢いで家の屋根を突き破って空の彼方へ消えていった。

 俺は口をポカーンと開けたままその場で立ち尽くしていた。俺のアッパーで…親父がぶっ飛んで…いった…?

 視界がくるくると回りだし、そして暗転した…


 気が付くと俺は自分の部屋のベッドに寝かされていた。

 「やっと気が付いたみたいだな」

 「!?」

 俺は誰だと思って横を向いてみると兄貴が椅子に座って漫画を見ていたのだ。

 「な…なんだ兄貴帰ってたのか、驚かせるなよ」

 「とっくの昔に帰ってるわ、今もう夜の9時だぞ」

 俺は左手の出時計を見てみると確かに9時を過ぎていた。俺が家に帰ってきたのは朝の10時くらいだから俺は11時間も寝ていたのか!!

 「というか、お前何やったんだ?俺が大学から帰ってきて見てみるとお前は倒れてるし、キッチンの天井が吹き飛んでたぞ。まあ、俺が軽く直しておいたけど」

 俺は兄さんがrebuild (リビルド)を使えて良かったと心から思った。rebuild (リビルド)とは、壊れたものの破片から物質を再構築して元の形に直すという魔法である。

 兄さんが直してくれていなければキッチンから今頃夜空が見えているところだった。

 それよりも兄さんに本当のことを言うべきか悩んでいた。本当のことを兄さんに言って信じてくれるかも分からないし、俺が親父にアッパーをくらわしたことがばれれば何を言われるかもわからない。でも、この問題は一人で解決できるようなものでもないし兄さんに頼った方がよいと考え、俺は兄さんに朝に起こったことを包み隠さず話した。

 すると、兄さんは小刻みに震えだして

 「ぷ…ぷっはははは!!ケーキの恨みで親父殴ったら何かすごい力が出てぶっ飛んでった…か、漫画かよ…ぷっぷは」

 兄さんは笑い転げながら俺の話を繰り返して言ってまた笑い転げた。

 「嘘じゃないよ!!すべて事実なんだよ」

 「分かった分かった、天井を見れば本当のことだってわかる。親父はどうでもいいとしてお前の拳に宿った光の正体はなんなのかということだな」

 親父はどうでもいいのかよ!!って突っ込みたいところだが、本当に親父はどうでもいいことに気付いたので黙って聞いていることにした。

 「魔法や超能力が使えないお前が、どうしていきなり魔法みたいなことが使えたのか、それには必ず原因があるはずだ。なんか心当たりはないか?」

 兄さんが俺に真剣に聞いてきたので、俺も考えてみたのだが心当たりと言われてもショートケーキのことくらいしか…まさかね…

 でも、もしこれが本当のことだったらなぜだか知らんが俺はショートケーキのことを考えると魔法が使えるようになるってことか?

 ばかばかしいがやらないよりましだろうから考えているか。

 イチゴのショートケーキはとろけるようなクリームとイチゴの甘酸っぱさが絶妙な関係を気付いている神の食べ物…

 すると今度は両手に何か得体の知らない力が宿り光に包まれた。

 「こ…これは!?」

 兄さんは光りだした俺の手を見てすこし見て考えた素振りを見せたあと、ゆっくりと口を開いた。

 「予想だが、お前の拳に宿っている白い光はプラズマだ」

 「プラズマ?」

 俺はプラズマという言葉は聞いたことがあったのだがその意味まで深く理解していなかったのでプラズマがどういうものか知らなかったのだ。

 「プラズマっていうのは、ある一つの物質を表す言葉じゃなくてある物質の状態を表しているんだ。例を挙げるとすれば、雷や炎、オーロラといった気体、固体、液体のどれにも当てはまらない第4の状態なんだ。」 

 「なんかオーラをまとったみたいな感じでかっこいいな」

 「そんな甘いものじゃない。プラズマは使い方によっては非常に危険なものになる。プラズマを圧縮して放てば高出力のプラズマ砲を放てるし、プラズマを高速で振動させて爆発させることだってできる。

確かに身近にあるものにもプラズマが利用されているが一歩間違えば周りの人間を危険にさらしてしまうことだってあるんだ!!」

 「!?」

 俺はどういう反応をすれば良いのかわからなかった。俺の行動次第でもしかしたら他人を死に追いやってしまうのかもしれない。

 俺はこれからどうすればいいんだ…

 「お…おい、太郎大丈夫か?」

 「はっはっは大丈夫だよ!!ちょっと疲れたから眠るから」

 「分かった…」

 兄さんは察してくれたのか俺の部屋から出て行った。

 俺は11時間も寝たあとなのに自然とまた眠りについて行った。

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