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第42話:無様と呼ばれる



水晶柱から離れた広場の隅。


ざわめきはすでに次の受験者へ移っていた。


アルノーの記録は、淡々と帳面に記されたままだ。


「平均以下か。」


声がかかる。


振り向くと、深紅の外套をまとった少年が立っていた。


胸元の紋章は、ヴァレリウス家より明らかに格上だ。


背後には従者が二人。


「三流貴族の割には、面白い光を出すかと思ったが。」


少年は口元を歪める。


「無様だな。」


周囲に小さな笑いが起きる。


アルノーは視線を水晶柱に戻す。


「平均以下。それだけです。」


それだけ答える。


少年は眉をひそめる。


「言い訳もせんのか。」


「量は、事実です。」


静かな声だった。


挑発に乗らない。


それが余計に相手を苛立たせる。


「総合評価だと聞いた。」


別の受験者が会話に入る。


「一つが低くても挽回できるらしいぞ。」


「理論と体術だな。」


「だが量が低ければ体術戦は不利だ。」


深紅の少年が鼻で笑う。


「次は体術だ。」


ちらりとアルノーを見る。


「逃げるなよ。」


その言葉は、宣言に近かった。


係官が声を張る。


「次の種目は体術試験! 対戦形式で行う!」


広場の空気が変わる。


ざわめきが広がる。


「おい、見たか?」


近くで別の受験者たちが話している。


「スカウト組は免除だとよ。」


「例の“空から来た”一団か。」


「ああ。魔力量と推薦だけで内定だと。」


羨望と嫉妬が混ざる。


「最初から席が決まってる奴もいるってわけか。」


アルノーはその言葉を聞きながら、広場を見渡す。


浮遊術で到着した一団の中に、スカウト組がいるのか。


だが確かに、列に並んでいない者がいる。


総合評価。


だが最初から測られない者もいる。


それもまた事実。


「不公平だと思いますか。」


じいやが小さく問う。


アルノーは首を振る。


「今は、わからない。」


その答えに、じいやは微かに目を細めた。


深紅の少年が再び近づく。


「対戦相手は抽選だが、お前と当たるやつは幸運だな。」


唇に薄い笑み。


魔力量の差。


家格の差。


体格の差。


どれも覆しがたい。


だがアルノーは、少年の立ち姿を見ていた。


踏み込みの癖。


重心の置き方。


右肩がわずかに下がる。


「……歪んでいる。」


小さく呟く。


じいやだけが聞き取った。


係官が番号を読み上げる。


対戦組み合わせが決まっていく。


アルノーの番号が呼ばれた。


相手の番号。


ざわめきが走る。


深紅の外套の少年が、ゆっくりと前へ出る。


口元の笑みが深くなる。


「面白い。」


体術試験。


魔力量とは関係ない。


だが量の差は、力の差として現れる。


それが常識。


アルノーは一歩、前に出た。


測られたのは量だけだ。


まだ測られていないものがある。


空は高く、雲は静かに流れている。


整ってはいない。


だが、崩れてもいない。

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