第41話:測られる者
王立学園の門は、思っていたよりも高かった。
塔がいくつも空に突き出し、石壁は均一に積まれている。
広場にはすでに多くの受験者が集まっていた。
数百では足りない。
千を超えるかもしれない。
じいやが小さく息を吐く。
「毎年、入学できるのは120名ほどと聞きます。」
アルノーは視線を巡らせる。
貴族の紋章を掲げた馬車が並ぶ。
中には空から降りてくる者もいた。
浮遊術式でゆっくりと着地する一団。
家臣に囲まれ、道を空けさせる。
一方で徒歩の者もいる。
旅装束のままの平民らしき少年。
アルノーとじいやもまた、徒歩だった。
「世界は広いですな。」
じいやが穏やかに言う。
自嘲でも卑屈でもない。
事実として。
アルノーは頷く。
「形は様々です。」
広場の中央に水晶柱が立っている。
魔力量測定用の装置。
最初の試験はそれだ。
「総合評価だ。」
近くの受験者が話している。
「一つが低くても、他で補えばいい。」
「だが魔力量が低ければ話にならん。」
笑い声。
アルノーは水晶柱を見る。
光は静かに脈打っている。
順番が来る。
前の受験者が触れる。
強い光が走る。
ざわめき。
「上位だ。」
係官が記録する。
次。
また強い反応。
歓声。
そしてアルノーの番が来た。
水晶に手を置く。
冷たい。
魔力を流す。
いつも通りに。
だが水晶は、わずかに淡く光るだけだった。
ざわめきが一瞬止まり、すぐに別の方向へ流れる。
「……平均以下。」
係官が淡々と告げる。
それだけ。
否定も、軽蔑もない。
ただ記録。
アルノーは手を離す。
光はすぐに消えた。
広場の空気は変わらない。
誰も長くは見ない。
次の受験者が前へ出る。
強烈な光が再び立つ。
歓声。
アルノーは水晶をもう一度見た。
均等が取れている。
だが測っているのは量だけだ。
質ではない。
じいやが隣に立つ。
「坊ちゃま。」
声は穏やかだ。
「諦められますか。」
アルノーは首を振る。
「無様には落ちない。」
それだけ言う。
広場の向こうで、空から来た一団が高らかに笑っている。
到着の仕方は様々。
力の見せ方も様々。
だが。
形は一つではない。
魔力量は低い。
事実だ。
だが崩れたわけではない。
アルノーは次の試験会場へ歩き出す。
1つ目が終わった。
だがまだ、全ての試験が終わったわけではない。
空を見上げる。
昼の空には月はない。
それでもそこにあることを、彼は知っていた。




