第三話 仲間と共に
追記:2025.2/17
新ストーリー追加に伴い、このストーリーの導入を全カットしました。大胆な改変、大変申し訳ございません。
私達は冒険者ギルドの前まで来た。古びた木製施設のボロボロの扉のノブに手をかける。
緊張する。なんて言ったて冒険者なんてやったことがない。ただ今回は冒険目的というより生活費稼ぎのためなのだが。
ガチャっという音と共にドアにかかっていた鈴がカランカランと音を立てる。
「いらっしゃいませ」
受付にまだ若い女の人が立っていた。スラリと背が高く、ラインの美しい女性だ。
周りには誰もいない。ギルドというぐらいだからもっと騒がしいのかと思ったが、誰もいなかったので逆に怖い。本当にここは大丈夫なのだろうか。
………………私達はどう見えているだろうか。
子供……いやただの子供ではないななどと思われているだろうか。
スケールはすごく荘厳な金色の鎧を身につけていて背中には先を布で巻きつけた大きな槍を身につけている。
それに比べて私は薄汚れた白シャツ一枚。今更ながらなんだか恥ずかしい。
「えっと、何かお困りですか?」
どうやら普通に思われているみたいだ。特に何も変わったことは聞いてこない。それは冒険者ギルドだからスケールみたいな格好をしている人は珍しくはないのか。
「この子に冒険者登録をしていただけないでしょうか?」
「分かりました。では登録しますのでお名前を」
受付の人が手にカードのようなものを持って私をみる。スケールが持っているカードと同じものだ。そして紙は薄汚れた茶色。最初からこの色だったらしい。
「リトルと申します」
「リトルさんですね。そしたらこのカードに手を触れてください」
言われるがままに手を触れる。するとカードが明るく光った。文字が刻まれる。名前と年齢、種族、ランク。その四つの情報が刻まれた。ランクはD。最初はDらしい。
種族は…………一応人間だ。………人間でよかった………
今更思ったのだが、私達は人間にはない成分が体の中に巡っている。だから、人間という言葉は合わないと思う。
幸いこの世界には魔法が存在している。回復力を使うぐらいなら魔法だといっても大丈夫な気はしなくはない。だが、このカードに能力者などと書かれてしまっては……誰かにそのカードを見られた時に私達の存在が特別であることがバレてしまうだろう。
「それでパーティはそこの冒険者さんと組む形でよろしいでしょうか」
そこの冒険者さん。スケールのことだ。スケールはすでに冒険者登録を済ませてある。
「はい、それでお願いします」
「パーティ名はどうされますか?」
あ……パーティ名………考えていなかった……。
ちらりと横に立つスケールの様子を伺う。
「じゃあリカバリィで」
私はそれを聞いて、一瞬動きが止まった。もう名前を決めていたことに対する驚きではない。そのネーミングセンスに驚いた。リカバリィって私達回復できますって言っているようなものだ。
……などと考えているとカードに新たに文字が刻まれてしまった。パーティ名『リカバリィ』と。
「あと今更ですけど…規約書に同意をお願いしますね」
これもまた古びた紙とボロボロの鉛筆を渡された。
規約書の内容はざっくりとこんな感じだ。
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規約書
冒険者になるものはこの規約に同意するものとする。
(1)武器や装備を持たないものは貸し出しを行える。
故意に破損した場合は修理費を徴収することがある。
(2)登録を済ませた冒険者にはある程度の宿舎の提供、必要な物品の提供を受けることができる。
(3)冒険者登録は誰でも行うことができる。ただし犯罪組織を除く。
冒険者登録を行なったものには冒険者カードが渡される。紛失した場合は再発行が可能。
ランクはDからとなることがある。
冒険者カードを持つものは冒険者特典を受けられる。(割引サービスなど)
(4)依頼を二ヶ月以上達成しなかった場合、受けなかった場合冒険者資格は剥奪される。
一年間再登録ができなくなる。
(5)ランクの違うもの同士がパーティを組む場合もランクはそれぞれのランクになる。
依頼はランクごとに一個上のランクもしくは下のランクのものを受けられる。
自分のランクの一個上のランクを受け、三回連続で失敗した場合、ランクが低下することがある。
(6)脱退する場合は申し出るだけで脱退が可能。脱退後すぐには再登録できない。
(7)主に他の冒険者の妨害行為やギルドの品位を損なう行為をした場合には、強制的に冒険者資格が剥奪される。
(8) 危険を伴う依頼には保険制度適用あり。
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私は無言でそれに目を通した。こういうもの、見たことも読んだこともない。六歳までは教育を受けていたので、文字は読める。言葉も話せる。でも、誓約書、という言葉の意味は正直よく分からない。難しい言葉になると、分からない言葉も多い。スケールに意味を尋ねると、誓約書というのは「ルール」と同じ意味だと教えてくれた。誓約書、などと言われるとよく分からないが、「ルール」という言葉なら知っている。
私は何度もスケールに言葉の意味を尋ねながらも一個ずつ丁寧に確認して読み進めた。
私は全ての項目に目を通し、紙の一番下、『同意します』のチェックボックスにチェックを書き込んだ。
次は装備のレンタルか。
私は慎重に受け付けに立つ人に尋ねた。
「あの……いきなりで申し訳ないのですが、私こんな軽装な格好でして、その……貸し出しをお願いできますか?」
「大丈夫ですよ。そこのハンガーにかかっている装備の中で良さそうなものが有れば受付に持ってきてください」
受付の端にハンガーにかけられたたくさんのレンタル用装備があった。
手にとって一つずつ確認する。素材はどれもしっかりしている。紙や建物はボロボロだが、こういうところがしっかりしているのなら文句もない。
私はスケールのようなガチガチの装備をしたくない。とは言っても薄すぎたら防具にすらならない。
私は茶色の首にフサフサした毛皮のようなものが付いたローブを借りることにした。色はダサいがあまり目立たないので着ていても恥ずかしくはない。それにかなり分厚いから防寒にもなりそうだ。
言っていなかったが、この地域はものすごく寒い。研究員にほんの少し天気について教えてもらった時、この星の気候は、晴れか、雪か、曇りの三種類だと聞いた。ここのような平地でも零度を下回るのが普通だという。
でも、私の今の服は、とても薄い。私達は治癒力のおかげで風邪を引かない。だからと言ってずっとこのままでいるわけにもいかない。外の世界でこれからたくさんの人に出会う。その時にこれだけ薄い服で長時間接すると、それだけで何か異変に感じさせてしまうかもしれない。
私が今こんな軽装な格好をしているのは、何より一歩も外に出ないレベルの施設暮らしだったし、研究に使うエネルギーを採取するのに服を何枚も重ねていては脱ぐのに時間がかかりすぎるから。だから肌が透けてしまうぐらい薄いシャツで無ければいけなかったのだ。
「じゃあこれでお願いします」
受付に持って行くと何やらその装備にタグのような物が付けられる。
「そのタグは…?」
「これは貸し出し用の意味です。誰がいつ貸し出したのかの記録用でもあります」
装備のレンタル手続きも済み、私はそのローブを受け取った。すごく暖かい。手触りも最高だ。私はそのローブのふわふわの生地に顔を埋めた。最高に気持ちいい。そしていい香りがする。羽織ってみると、ちょうど裾が膝下あたりにきて、引き摺らない、ちょうどいいサイズだった。
「ではこれで登録は終了です。登録ありがとうございました。くれぐれもお気をつけて」
「ありがとうございました」
私達は受付の女性に頭を下げてその場を後にした。
✳︎
「ねぇ、スケール。そのさ、パーティ名リカバリィって大丈夫なの?私達の存在、バレちゃいけないんでしょ?」
私は薄暗い部屋をロウソクで照らし、依頼が貼ってある掲示板を見つめながらスケールに問う。
「パーティ名なんて別に聞かれることなんてまずないんだし、リカバリィ程度で怪しむ人なんていると思う?」
「うーん、ま、まぁ…?別に君が良ければ良いんだけどさ」
よくよく考えてみたらパーティ名は飾りみたいなものだから問われることも少ない。とりあえず、そう思っておくことにした。
気を取り直して依頼の内容を確認する。随分とどうでも良い依頼が並んでいる。
主なDランクの依頼内容をざっと目で流し読みする。ゴミ処理、買い出し、運搬……。そればかりであった。Cランクになれば最弱モンスターの討伐があるようだ。
でも私はDランクぐらいの依頼がちょうどいいと思った。大体、討伐なんて私にはできない。私が知っているのはこの世界に魔術が存在している、という情報と知識だけで、それを自分が使えるわけではないのだ。しかも武器も借りていない。
私は素直にDランクの依頼書に指を掛けようとした。
しかし……その時、Cランクの依頼のうち、一件が、他の同ランクの依頼書には感じられないような、異様な気配を纏っているのに気がついた。
「ねぇ、スケール、こ、これは一体…」
「………………これは……」
私が指差した先をスケールも一緒に見た瞬間、スケールも何かを感じ取ったようだ。険しい表情でその依頼内容を読む。
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依頼内容 ランクC
少女の救出求む。
長い間行方不明になった少女の捜索をお願いします。
見つかった場合は連絡をお願いします
報酬 500ビズ/時給
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少女の救出…?
これがCランク……?
「これ、受けてみるか?」
スケールはその依頼書に手をかけて、私に尋ねた。いきなり救出。“救出”。その二文字が強く響いた。救出とはつまり、困っている人を助けるということ。今回の依頼は、読んでみるに、行方不明らしいから、いるかどうかもわからない。それに、もし、怪我をしていたなら。私の能力を、使うことになる。
「どうするか?リトル。この依頼はきっと、君の治癒力を使うことになるだろうから、君が決めてくれ」
言われて、私はしばらく悩んだ。
でも、スケールとは約束した。一緒に冒険者となって一緒に行動すると決めた。スケールと一緒なら、大丈夫な気がした。
「じゃあ受ける。治癒力は抑えめに……なるべく、魔法だと言ってもらえるように気をつけないといけないけど……」
でも、行方不明の者を探すというのはやりがいがありそうだ。だからこそ、言った。
「それでも、受けたい」
その答えを、スケールは最後まで聞いていた。
「分かった」
お互いに頷き合う。私達はその依頼書を剥がし取った。
私にとっては初めての依頼。その初めてがいきなり救出作戦となった。
今日はもう辺りが暗い。出発は明日。緊張もするし不安もある。 だけれど私は自然に大丈夫だと思えた。
スケールという仲間の存在。
出会ってから僅か数時間。それでも私は心から信頼している。




