新しい生活
「では、ガロンの事を頼む」
「ああ、任せておけ。きっちり仕込んでやるよ」
「ガロン、頑張ってね。週に二日は会いに行くわ。ご飯はしっかり食べるのよ」
私はガロンに抱きついて別れを惜しんだ。
「うん。いってきます。じいちゃんとミホも頑張って。いってらっしゃい」
ガロンとベルガーに別れを告げ、私とシヴァは魔王様とラーソンの待つ部屋へと急いだ。
魔王様はすでに人間へ化けて私達を待っていた。
「お待たせしました。準備はできてるのでいつでも出発できます」
「そうか。ではさっそく出発しよう」
外に出ると荷馬車が2台用意してあり、どちらにも荷物が沢山積んであった。
「当面の食料や生活用備品を積んである。シヴァとミホは後ろの荷馬車に乗ってくれ」
「わかりました」
(う、早速シヴァと二人きりか・・・)
少々気まずい思いをしながら荷馬車に向うと、シヴァはさっさと空いているスペースに自分の荷物を積んでいた。そして私の手から荷物をとると同じように荷台に積んだ。
「荷物はこれで全部か?」
「うん」
「よし、じゃあ乗れ。その様子じゃあまり寝てないんだろう。向こうに着くまで荷台で眠っておけ」
「・・・うん、そうする。ありがとう」
シヴァの態度はいつもと変わらなかった。
(変に意識することはないか)
私は大人しく荷台に座り、荷物にもたれて目を閉じた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ミホ、起きろ。着いたぞ」
シヴァの声で目覚めた私は、両手を組んでう〜んと伸びをした。
数時間眠ったおかげで頭はスッキリしたけれど、長時間同じ姿勢でいたせいで身体のあちこちが痛かった。
首の後ろを揉みながら荷台から顔を出すと、ドルトの巨大な扉が目に飛び込んできた。
「想像していたよりも大きいな。まるで要塞だ」
「そうね。私も初めて来たときはビックリした」
あの時は、子供達を助ける為にこの門をくぐったのだ。
まさかこんな形でここに戻ってくる事になるとは思わなかったな、と思いながら外壁を見上げていると人影が見えた。ダンだ。私は手を振った。
「ダンさん、お久しぶりです。お元気でしたか〜?」
ダンも手を振って答えた。
「おお、すぐに扉を開ける。待っててくれ」
巨大な扉が開き、中に入るとダンが笑顔で迎えてくれた。
「若様、お久しぶりです。お待ちしてました」
「ああ、留守の間ここの管理ご苦労だった。あとでゆっくり話を聞こう」
シヴァは御者台から降りると手を差し伸べて私が降りるのを手伝ってくれた。
「ダン、紹介しよう。私の右腕のシヴァだ。ミホの夫でもある。シヴァ、こちらがダンだ」
若様に紹介されたシヴァは微笑を浮かべてダンに挨拶をした。
「初めまして。シヴァだ。これからよろしく頼む」
一方ダンは口を半開きにしてシヴァの顔を凝視して、独り言のようにポツリと呟いた。
「すげぇ・・・キーナ人てのは、美男美女ばかりなのか?」
その言葉にラーソンが笑った。
「わははははは、その中にはもちろん俺も含まれてるんだろうな?」
ラーソンに背中を叩かれ、はっと我に返ったダンが、あわててシヴァに挨拶を返した。
「失礼した。ダンだ。こちらこそよろしく頼む。何でも聞いてくれ」
「食堂に移動して話そう。ミホ、お茶を入れてくれるか」
「はい」
かつては冒険者で溢れ活気のあった食堂には誰もおらず、テーブルや椅子も少なくなっていた。
「備品を売却するように言われたから食堂のテーブルや椅子もほとんど売ったんだ。
キッチン用品はそのまま残してあるから、好きに使ってくれ」
私はケトルを火にかけ、お茶の準備をした。
前も思ったけれど、うちの台所と勝手が違うので使いづらい。
なんていうか、動線に無駄があるのだ。
(ここも改造の必要があるな)
私の脳内で、某リフォーム番組のテーマ曲が流れた。




