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勇者の母ですが、魔王軍の幹部になりました。  作者: 野山 歩


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課題

 私の要望通りの工房を作ってくれるというのは大変有り難い。贅沢な話だ。

 が、しかし、それは同時に私が具体的な指示を出さなければいけないという事だった。

 まずはこの3点を明確にしてくれとシヴァに出された課題を前に、私は頭を抱えた。


 ・希望する工房の広さ

 ・業務に必要な道具(調理道具・調理器具・キッチン用品)

 ・器具の配置


「うん、そうだよね。工事に入る前に明確にしなきゃならないよね」


「ああ、ラーソンにも頼んである。あっちはモリスとニルスがついてるから大丈夫だろう」


「そっか、じゃあ私も頑張らないとね」


 しかし、何から手を付けていいか分からず白い紙を前に途方に暮れていると、シヴァが声をかけてきた。


「まずは分かる事からやればいい。菓子を作る時に使う道具なら書き出せるだろう?

 菓子を作る過程を考えれば、(おの)ずと器具や道具が出てくるはずだ。

 こちらにない物は作ればいい。分からない事はこちらも質問する。遠慮するな」


「そうね。それなら出来そう」


 私はまず売り出す予定の菓子のリストを作り、それぞれの製造過程で使う道具を書き出した。

 そして重複する物を消し、最終的に必要な物をリスト化した。


 (はかり)、温度計、タイマー、ボール、バット、ふるい、泡立て器、木べら、めん棒、はけ、スプーン、焼き型、抜き型、スケッパー、天板、包丁、まな板、ケーキクーラー、フライパン、鍋、蒸し器、石釜、オーブン、冷蔵庫、流し台、コンロ、作業テーブル。


 ざっとこんなもんか。

 さて、工房の広さはどうしよう。キッチンより広いくらいでいいかな。

 今まで趣味の範囲でやってきたから、正直よくわからない。


 私が一人でうんうん唸っていると、シヴァがまた声をかけてきた。


「お前の国には菓子店があるんだろう?それを参考にしてはどうだ?」


 成る程。でも菓子店では厨房を見る事は出来なかった。

 私が知ってるのは料理教室くらいだし・・・

 

 昔通っていた料理教室のレイアウトを思い出しながら図に起こしてみる。

 

 あれ?これ結構使いやすいな。5〜6人で作業しても十分余裕あったし。

 将来人が増える可能性もあるし、これを参考にさせてもらおう。


 私が再び紙にむかうと、シヴァはふらりと部屋を出て行き、しばらくするとお茶を持ってきた。


「慣れない作業で疲れたろう。休憩しながらでいいからな」


「ありがとう」


 私は感動した。


(的確なアドバイスにさりげない気配り、シヴァってば、やればできるんじゃないの。

 残念なイケメンとか思ってごめんね。さすが幹部だね。見直したわ)


 あ〜、一仕事終わった後のお茶って美味しいな〜と思いながらまったりとくつろいでいると、シヴァが紙に目を通しながら言った。


「休憩が終わったら、これらを全て読み上げてくれ。

 お前の国の文字は私達には分からんから、こちらの文字で書き出さなきゃならん。

 こちらにない道具については、どういう目的で使う物か詳しい説明も頼む」


「うわ、面倒くさい」


 思わず呟いたら、シヴァがニッコリと笑いながら私のほっぺをつねった。


「そうだな。その面倒くさい作業を私はお前達の何倍もやらなきゃならんのだ。

 なんせ魔王様は私に丸投げしてきたからな。

 統括責任者なんて聞こえはいいが、全てを決めなきゃならんのだぞ。

 お前達の作業が終わらないと、私の仕事は進められんのだ」


 経営管理や業務処理、予算の組み立てとか、私がやった事があると思うか?

 そう問うてきたシヴァの笑顔が怖かった。

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― 新着の感想 ―
[一言] シヴァよミホさんの中ではまた残念イケメンだった、
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