選ばれし者5
北のエリアまで乗り合い馬車で行く事にしたのだが、レンは相変わらず世間知らずだった。
「あれに乗りたい」
そう言って蓮が指差したのは、赤と青のツートンカラーの馬車だった。
「アレは反対方向の南行きだよ。馬車は行き来するエリアのシンボルカラーで色付けされてるんだ。俺たちが乗るのは、緑と青のツートンカラーだ」
「へ〜、行き先で色分けしてるんだ。解りやすいね」
「ああ。字が読めない人も多いからな」
二人はターミナル駅から乗ったので、屋根のついた一階の快適な席に座る事が出来た。
初めて乗り合い馬車に乗るというレンは、小さな子供のようにはしゃいでいた。
窓から見える色んな物に興味を示しては、エルマーに説明を求めてくる。
そんなレンの様子が微笑ましいのか、それとも田舎者と馬鹿にしてるのか。
周りの人間にクスクスと笑われて、エルマーは少し恥ずかしい思いをした。
(制服を着てきたのは失敗だったかな。変に悪目立ちしてしまう)
特別騒いだわけではなかった。聖騎士見習いが二人もいたので注目されたのだろう。車内の雰囲気が和やかだったのが救いだった。
そんな乗客の様子が一変したのは、中央エリアにある停車駅での事だった。
馬車が停まったまま、なかなか出発しなかったのだ。
どうやら一人の男が、馬車に乗るのに手間取っているらしかった。
一階席がないため二階に上がろうとしてるのだが、男は少し体が不自由らしく、階段を上手く登る事が出来ないでいた。
乗客達がイライラしている中、男の様子に気付いたレンが席を立ち、入り口まで歩いていった。
「あの、良かったらあちらの席に座って下さい」
「え?君はここで降りるのかい?」
「いいえ。実は二階の席に乗ってみたかったんです」
レンは笑顔で手を差し出し、男が乗り込む手助けをした。
「ありがとう。でも本当にいいのかい?」
「はい。今日は天気もいいし、上からの眺めもいいでしょうから」
そう言うと、レンはエルマーに向って手を振った。
「俺、これから二階席に行くけど、エルマーはどうする?今なら貸し切りだよ」
「一緒に行くに決まってるだろ」
(あんな風にスマートに席を譲ることができるなんて、すごいな)
そう思ったのはエルマーだけではなかったようだ。
降車する乗客は皆、二階席のレンに向って帽子を取って挨拶したり、手を振ったりした。
レンは彼らの賞賛の眼差しに気付く様子もなく、会釈を返していた。
ごく自然に他人を思いやれる少年と友達になった事を、エルマーは誇らしく思った。
これまでレンについてほとんど触れてなかったので、エルマー視点でレンの活躍を書いています。
もう少しおつきあいください。




