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勇者の母ですが、魔王軍の幹部になりました。  作者: 野山 歩


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選ばれし者4

 見習いであるエルマーは、まだ騎士の証であるマントを羽織る事も、帯剣も許されていない。

 しかし、支給された制服を着て街を歩くだけで、羨望の眼差しで見られる。聖騎士の空色の制服は、少年達の憧れなのだ。

 普段は訓練場のある東のエリアから出る事は無いのだが、ある日、レンから北のエリアに一緒に行って欲しいと頼まれた。


「今度の休みに、祭事に使うクリスタルを貰ってくるように言われたんだ。地図は書いてもらったんだけど、俺一人では不安で・・・。休みの日に悪いんだけど、一緒に行ってくれない?神官様にはもう許可は取ってあるんだ。神殿の遣いだから、日当がもらえるよ」


 神殿の遣いなんて名誉な事だ。エルマーは快諾した。


「それなら、制服で行ったほうがいいな。レンも着た方がいい」


「何で?」


「北のエリアはここに比べると治安が良くないんだ。俺達二人だと舐められるけど、聖騎士見習いだったら一目置かれるから、面倒に巻き込まれずに済む」


「ふ〜ん」


 レンの反応は、首都の事情をよくわかっていないからだろう。

 北のエリアは首都で一番貧しく、スリや恐喝など日常茶飯事だ。

 見習いとはいえ、女神様の加護のある聖騎士に無体な仕打ちをする輩は少ないはずだ。


 エルマーの考えは決して間違ってはいなかった。

 しかし、市民の聖騎士に対する期待を甘く見ていた。というか、知らなかった。

 二人は恐ろしい目に遭わない代わりに、人助けをするハメになったのだ。

 この出来事がきっかけで、エルマーだけではなく、多くの人間がレンの真価を知る事となる。

 エルマーは聖騎士の見習いになれた事で、自分は選ばれた人間だと自負していたけれど、レンは次元が違った。女神様に愛され選ばれた人間というのがどういう者なのか、初めて知った。

 果たしてそれはレンに取って良い事だったのか、エルマーには今でもわからない。

 その日を境に、彼の小さな背中には、周囲から大き過ぎる期待がかけられたのだから。

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