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勇者の母ですが、魔王軍の幹部になりました。  作者: 野山 歩


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氷の魔鉱石2

「ブリザード!?首都では冬でもそんな現象が起こった事はないぞ」


「盗まれてからここに来るまで、どれくらい時間がかかった?」


一時(いっとき)(約二時間)位だが、それがどうかしたのか?」


「・・・今から首都に戻っても半時(約一時間)はかかるな。

 気の毒だが犯人はダメかもしれない」


「ダメとは?」


 警備員の問いに、シヴァは眉間にしわを寄せながら答えた。


「今頃、魔鉱石を中心に暴風雪(ブリザード)が吹き荒れているでしょう。

 人は氷点下の冷気に一時半(いっときはん)(約三時間)以上さらされると凍傷になるし、運が悪ければ死に至る事もある。特に今は夏だ。犯人は軽装でしょう。自業自得とはいえ、自殺行為だ」


「大変だ。すぐに戻らないと」


 警備の人達が慌てて立ち上がったが、シヴァはまったりとお茶を飲んでいた。


「シヴァ、のんびりしている場合じゃないぞ」


 憤慨するダンをちらりと見て、シヴァは軽くため息をついた。


「ダン、私は結構腹を立ててるんだ。お茶でも飲んで気を静めないと、冷静な対処が出来る気がしない」


 決して声を荒らげたり、物に当たって暴れたりする訳ではない。

 けれどシヴァが静かな怒りは、完全に周りを圧倒していた。


「ドルチェが屋台を出して、まだ一年もたってない。

 にもかかわらず、何度も酷い営業妨害にあっている。

 二ヶ月前は屋台で男が暴れてダンの母君が怪我をし、小麦粉が手に入らなくなった。

 この影響を受けて、西のエリアでの営業も一時中止に追い込まれた。

 一ヶ月前は、その男の殺人容疑でダンが濡れ衣を着せられそうになった。

 一連の犯人が捕まってホッとしたのも束の間、今日は機材を破壊され、高価な魔鉱石を盗まれた。運良く怪我がなかったようだが、もし犯人に遭遇していたら、最悪の事態になっていた可能性もある。

 我々に対して悪意を持っているとしか考えられない。

 キーナ人が成功しているのが気に食わないのか?」


 シヴァの言葉に、誰も何も言えなくなった。


「今回の件でも我々は被害者だ。

 だが、もしも犯人が死んでしまった場合、世間はどう感じる?

 危険な代物(しろもの)を国内に持ち込んだと弾劾(だんがい)されるかもしれないな」


 警備員がばつが悪そうな顔をして俯いた。


「気は進まないが、犯人を死なせるわけにはいかない。

 冷凍庫の修理が必要だな。ラーソンを起こしてくる」

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