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お婆さんはお爺さんの非難に負けじと目を吊り上げて
「いいんだよあれで!あの子が本当の事を知ってなんかいいことあんのかい!?あの子の母親を覚えてるだろ?上等の着物を着ていた。きっと名のある貴族かお武家様なんだろうよ。だから戦で矢を射られて川に落とされたんだ」
と言い返しました。
「だからって何もあんなふうに言わなくても…」
「桃太郎が自分の生まれを気にして調べたらどうする?それでどこかのお偉いさんの子供だってわかったらどうなる?きっと厄介に巻き込まれるに決まってる。偉い奴らはいつでもそんな事ばっかりしてるんだ。あの子は田舎の村のただ悪ガキだ。それでいいんだよ」
喜一は手を上げてお爺さんとお婆さんの言い争いを止めました。
「桃太郎の母親の事はワシ以外には話していないのだね?」
喜一が尋ねました。
「あたしと爺さんと和尚さんしか知らない。変な噂でもされたら面倒だからね。ぼろを着た女だった、と村人には言ってある」
お婆さんが答えました。
「けっこうだ。言い方は問題あるにせよ、出生の事は知らぬが仏だろう」
喜一はそう言うと、西の方角を見て目を細めました。
「和尚さん、桃太郎は西に旅に出たと言うてましたが大丈夫じゃろうか。戦が始まりそうじゃとみんな言うていますが」
お爺さんが心配げに喜一に聞きました。
「ワシも心配している。だが桃太郎も、もう大人だ。自分の道は自分で切り開かねばならん」
喜一が答えると、お爺さんもお婆さんも喜一の視線を追って西の方を見やりました。
三人の視線の先には山が見えます。その向こうにも山が連なっているはずです。
「無事でいてくれたらいいんじゃがのぉ…」
お爺さんがつぶやくのでした。
第21話 おわり




