第15話:レベッカを救え
コンコンコン!!!
夜の十時半、ジュリアンはジャニーの宿舎のドアを激しく叩いていた。
「ジェニー先生、私だ。開けてくれ」
薄手の寝巻きだけを身にまとい、まだ眠そうな目をこすっていたジェニーが、ゆっくりとドアを開けた。ジュリアンだと分かると、彼女はドアをさらに大きく開け、手招きで中に入るよう促した。ジュリアンは何も言わず、自分の軍用外套を脱いでジェニーの肩にかけ、そのまま彼女の手を引いて連れ出そうとした。
部屋を出て二歩ほど歩いたところで、ジェニーが大声で言った。
「ちょっと待って、靴を履いてないわ!」
ジュリアンは彼女が裸足で連れ出されたことに気づき、「すみません」と一言謝ると、彼女の部屋に戻った。すぐに一足の靴を持って戻り、ジェニーの前にしゃがみ込んで、彼女の足に靴を履かせた。
靴を履き終えると、ジュリアンはすぐにジェニーの手を引き、薬局へ向かって速足で歩き出した。
「レベッカが突然高熱を出したんだ。でも手足は冷たくて、呼吸が速くて苦しそうだ。目は虚ろで、誰の呼びかけにも反応しない。何の病気だと思う? どんな薬がいる?」ジュリアンは歩きながら尋ねた。
ジェニーは事態の深刻さを悟り、真剣に答えた。
「あなたの説明からすると、急性肺炎の可能性が高いわ。でも、はっきりさせるには直接診察しないと」
「時間がない。彼女の母親は、娘が部屋でぐっすり眠っていると思っている。つまり、この状態はかなり前から続いているかもしれない。これ以上待てない。必要な薬と器具を予測して、一気に村へ持って行ってほしい。使わなかった分は後で返せばいい」
そう言っているうちに、二人は薬局の前に着いた。
「分かったわ。一分、二分だけ時間をちょうだい。外で待っていて」
ジュリアンは自分がまだジェニーの手を強く握っていたことに気づき、すぐに手を離して言った。「すみません、痛くなかったか?」
「少し痛かったけど、大丈夫。分かってるから。でも今度はもっと優しくしてね」
一分後、ジェニーは薬の入った箱を抱えて出てきて、自らジュリアンの手を引き、駐車場へ向かって速足で歩き出した。
途中、前回衛生部の警備を担当していたあの兵士に出くわした。兵士は二人を見ると、ジェニーが抱えている箱をじっと視線を注いだ。
幸い、兵士は箱の中身を調べようとはせず、ジュリアンにウインクしながら言った。
「もうそんな段階まで進んだのか? 道具を使うとはな。安心しろ、秘密は守るから」
緊急事態だったが、二人は思わず笑いそうになった。無事に通過を許されると、すぐに駐車場へ向かって足を速めた。
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マーティン夫人がドアを開けると、彼女は明らかに泣いていた。隠そうともせず、ジュリアンとジェニーの姿を見るなり、さらに大声で泣き出し、ついには地面にひざまずいてジェニーの両手を握りしめた。
「先生……どうか娘を助けてください。私には娘しかいません。もう夫を失いました。これ以上、娘まで失うわけには……」
「心配しないで。薬は持ってきました。ジュリアン中尉から症状は聞いています。薬があれば、きっと大丈夫です。立ち上がって、娘さんのところへ連れて行ってください」
ジェニーが実際にレベッカの状態を目にした時、その容態が先ほどの説明よりも遥かに深刻であることに驚かされた。額の熱は非常に高く、おそらく40度以上あった。鼻翼が喘ぐように動き、鎖骨のくぼみが陥没しており、呼吸が非常に苦しいことを示していた。目は開いているが、外部の刺激にまったく反応しなかった。幸いなことに、すべての症状が典型的であり、急性肺炎とほぼ確診できた。
ジェニーは箱を開け、注射器を取り出し、軍隊の高級士官専用の抗生物質特効薬をレベッカの体に注射した。
「今、特効薬を打ちました。このままいけば、徐々に良くなるはずです。次に解熱剤を打ちます。マーティン夫人、冷たい水を用意して、レベッカの体を拭いて熱を冷ましてください」
マーティン夫人が部屋を出て行くと、ジュリアンが近づいて尋ねた。
「状況はどうだ?」
「思ったより重症だけど、幸い必要な薬は全部持ってきたし、症状も典型的な急性肺炎だから、おそらく大丈夫だと思う」
「いつ良くなるんだ?」
「普通は三十分から一時間で熱が下がり始めるわ」
「今、何かできることはあるか?」
ジェニーはジュリアンを見つめ、静かに言った。
「今はただ神に祈ることだけよ」
「でも私は『殺すなかれ』の戒めを破った罪人だ。神は私の祈りを聞いてくれるのか?」
「試してみれば分かるわ」
ジェニーの励ましを受け、ジュリアンはレベッカのベッドの前に両膝をつき、目を閉じて祈りを捧げた。そしてポケットからハーモニカを取り出し、レベッカの父親が娘のために書いたあの曲を、何度も何度も吹き続けた。
レベッカに対するジュリアンの深い慈しみを目にしたジェニーは、母性本能を刺激されたかのように、この男への愛おしさをいっそう抑えきれなくなっていた。
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約一時間後、レベッカの熱はようやく下がり始め、呼吸も以前ほど苦しそうではなくなった。そして、自分の体を拭いてくれている母親を見つめ、かすかな声で呟いた。
「……ママ」
マーティン夫人はその声を聞いて、ジェニーの方を見た。
ジェニーは言った。「状態は明らかに良くなっています。特効薬が効いた証拠です。ただ、熱がすぐに完全に下がるわけではありません。しばらくは38度前後の微熱が続くかもしれませんが、それは正常な経過なので心配いりません」
マーティン夫人はジェニーを見つめ、次にジュリアンを見て言った。
「本当にありがとうございました。あなたたちが娘を救ってくれたのです」
ジュリアンとジェニーはレベッカのそばに座り、彼女の状態を注意深く観察した。二時間後、レベッカの容態が落ち着いたのを確認して、二人は帰ろうと立ち上がった。別れ際、マーティン夫人はジュリアンを少し脇へ呼び寄せ、しばらく躊躇してから言った。
「あのことは永遠に許せないと認めます。でも、今夜のことを経て、もうあなたを憎むことはできません。娘を救ってくれて、本当にありがとう」
「……あのことに関しては…実は私も永遠に自分を許せません。お礼を言うべきなのは私の方です。神が私の祈りを聞いてくれたこと、そしてレベッカが強く生き抜いてくれたことに感謝しています」
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深夜三時、ジュリアンはジェニーを宿舎まで送り届け、帰ろうと振り返った時、くしゃみを一つした。そこで自分の軍用外套がまだジェニーの肩にかかっていることに気づいた。彼は顔を上げてジェニーを見つめ、外套を返してほしいと合図した。
「夜は冷えるから、ここで脱いで返したら私が風邪をひいちゃうわ。中に入って、脱いで返すから。あなたはそれを着て帰ればいいでしょ?」
ジュリアンはそれも理屈に合っていると思い、おとなしくジェニーの部屋に入った。ジェニーがドアを閉めると、カチャリと鍵をかけた。





