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ゆっくり話して/婚約者の死刑待ち  作者: 香詠 Koei
第四章 再会……できるかしら
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第64話:別れの後、彼に何が起きたのか?

新南国暦1年(三年前のあの日)


先ほどまで恋人と別れたばかりの大佐は、深い悲しみのあまり全身の力が抜けていた。しかし次の瞬間、仲間が助けを必要としていると知ると、体に眠った軍人の魂が即座に呼び覚まされ、彼は叫んだ。

「止まれ!」


見れば、車の外には、ひとりの帝国軍兵士が足を負傷し、びっこを引きながらよろよろと步いているではないか。そしてその隣には、大佐の古參の部下であるフリッツ少佐が立っていた。


大佐はドアを開けて二人を車に乗せると、こう尋ねた。

「この近辺で、まだ他に兵士の姿を見かけたりはしなかったか?」

二人はともに首を振った。


ここで大佐は軍服を脱ぎ、ソフィーが用意してくれた私服に着替えた。フリッツは脱ぎ捨てられた軍服を素早く片付けた。それから大佐は部下たちに命じた。

「お前たちも今から軍服を脱ぎ、武器を全て外して、私と同じように地元の住民に成り済ませ。私服の用意はあるか?」

全員が首を振った。

「では、道端の死体から服を剥いで着替えろ。命令だ。男の死体からだけ剥ぐこと。女や子供の屍からは絶対にダメ。わかったか?」


四人の兵士は大佐の命令に従い、見渡す限りの男性の死体を調べた。しかし問題は、サイズが合わなかったり、血痕が目立ちすぎたりと、なかなか適切な私服が見つからず、皆とても困っていた。


突然、遠くから「助けてえっ!」という叫び声が聞こえた。大佐は皆を率いて声の主を探した。一軒の家のそばで、数人の帝国軍兵士が強盗を働いているのを目撃した。若い女性が一人の兵士に捕まり、口を手で押さえられ、指の隙間から微かなうめき声が漏れていた。その隣では、老夫婦が地面に跪き、涙ながらに兵士に娘を放してほしいと懇願していた。


大佐は直ちに「やめろ!」と命じたが、自分が軍服を脱いでいることを忘れていた。私服姿の大佐が余計なことに首を突っ込んだと思った一人の兵士が武器を抜こうとした。しかしその瞬間、大佐は素早く飛びかかり、その兵士の顔に力強い一撃を食らわせた。兵士はその場に倒れ、痙攣した後、意識を失った。


他の兵士たちが反応する前に、大佐は女性を捕まえていた兵士の顔に向かってもう一発、渾身の一擊を叩きつけた。数本の歯が口から飛び散っていった。その兵士はまだ立っていたが、顔中血まみれだった。彼は慌てて自らの拳銃に手を伸ばそうとしたが、大佐の目を見ると、恐怖のあまりその手を引っ込めてしまった。


「俺は、ジュリアン・シンクレア大佐だ! この命令に從い、今すぐこの場から立ち去れっ!」

こうして大佐は堂々と自分の名前と階級を名乗り、即座に立ち去るよう命令した。大佐の身分を知った兵士たちは、すぐに倒れた仲間を助け起こし、必死にその場から逃げ去った。


若い女性は大佐に命を救われたことに感謝し、その美しい顔を見て、お礼にキスをしようとした。大佐はそっと彼女を押しのけ、左手の薬指に嵌められた真鍮の指輪を見せた。女性はそれを理解し、微笑みながら大佐に「ありがとう」と言った。彼女の両親も立ち上がり、娘を救ってくれたことに深く感謝した。


状況が緊急だったため、大佐は老夫婦に、自分の部下に何着か服を譲ってもらえないかと尋ねた。老夫婦は快く承諾し、家の中に入り、数分後、何着かの服を持って出てきた。大佐は部下たちに軍服を脱いで私服に着替えるよう命じた。そして、少年兵たちの拳銃二丁をこの家の主人に渡し、これから身を守るために使ってほしいと言った。最後に、脱ぎ捨てた軍服を暖炉で燃やしてほしいと頼んだ。


この家の主人は、今夜は家の中で一晩を過ごしてもいいと申し出た。しかし大佐は、部下たちが女性にちょっかいを出すのではないかと心配し、丁重に断り、今夜は車の中で過ごすと言った。


まさに立ち去ろうとしたその時、大佐は自分の懐中時計が消え失せているのに気づいた。


車の中で、大佐は左手の薬指にはめた婚約指輪を指でくるくる回しながら、婚約者とのファーストキスを思い出していた。


(待っていてほしいとは言えない。でももし許されるなら、最後の任務を終えるまで待っていてほしい。そして、また君のもとへと帰るよ。)


***************************************


一方、モランお爺ちゃんの許可を得て、ソフィーは大佐の部屋に引っ越した。この部屋に入る前、彼女はいつもノックをした。大佐が昔のように、ノックの音を聞いてドアを開けてくれることを期待しながら。


ベッドの上で、ソフィーは薬指にぴったりと合った婚約指輪をくるくる回しながら、人生初の口づけを思い出していた。


(餡ちゃん、待ってるよ。あなたの婚約者として、ずっと待ってるから。)

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