第28話:プロポーズの実弾演習
翌朝、大佐はフィーちゃんがまた昨日のように自分の体を乗り越えてベッドを降りるのが心配で、わざと30分早く起きた。そうすればフィーちゃんはゆっくり寝ていられるし、後でベッドを降りる時も安全だからだ。もちろん、フィーちゃんがまた自分の上に覆いかぶさってくるのを心のどこかで期待していた。でも、彼女の安全を考えることが、何よりも大切だった。
起きると、彼は振り返って、まだベッドでぐっすり寝ているフィーちゃんを眺める。そして、二人の間に置いてある予備の外套が目に入った。
(もしこれがなければ、昨夜はきっと……)
大佐は慌てて首を振って、それ以上想像するのをやめた。すると、フィーちゃんの太ももが、大佐が起きたばかりのスペースに侵入しているではないか。なんと予備の外套を越えて、まだ大佐の体温が残っているはずの場所に足を伸ばしていたのだ。
(しまった。こんなに早くベッドを降りるんじゃなかった!)
大佐が自分の早まった決断を後悔していると、まだ夢の中のフィーちゃんがさらに彼のスペースに侵入してきた。手を伸ばして予備の外套を抱きしめ、そしてそれにキスをした。一度じゃない、二度も。
大佐は考えた。フィーちゃんを起こさずにベッドに戻る方法はあるだろうか? 答えはノーだった。彼はただ、その憎たらしい予備の外套を羨むしかなかった。でも、どうすることもできなかった。
立ちっぱなしで少し疲れたので、大佐はベッドの前に片膝をついた。そして、自分のプライベートスペースに侵入しているこの女性を、ただ眺め続けた。突然、この姿勢がプロポーズみたいだなと思った。フィーちゃんがまだ寝ているのを見て、彼はふと思いついた。実弾演習をしてみよう。
「け、けっこ……ん、して……くれ……るか……?」
緊張して言葉が出てこない。フィーちゃんが急に起きたらどうしようと怖かった。
「ええ、喜んで。あなたのためなら、なんだって」
まだ起きていないフィーちゃんが、そう答えた。少し寝ぼけた口調だったけど、一言一言はっきりと大佐の耳に入ってきた。
(ナニモイッテナイノニ……これってプロポーズセイコウってことになるのか? あとでお爺ちゃんに聞いてみよう。)
大佐は緊張のあまり、心の中の独り言にまで、あの酷い訛りが出てしまう始末だった。さらに彼の心臓の鼓動を速めたのは、フィーちゃんがその返事をした後、目をこすって、パッと目を開け、彼と見つめ合ったことだった。
大佐はびっくりして、すぐに顔をそらした。別の方向を見た。
「もしかして、また私、あなたを蹴り落としちゃった?」
フィーちゃんは上半身を起こして、自分がもう半分以上、中央線を越えているのに気づいた。申し訳なさそうに聞いた。
「違うよ。僕が早く起きただけだ。気にしなくていい。もっと寝ていていいよ」
大佐はそう答え、フィーちゃんが起きたら、さっきのプロポーズの実弾演習のことを忘れてくれたようで、ほっとした。
コンコンコン。 かすかに外で誰かがドアをノックする音が聞こえた。
「ジュリアン大佐。私だ。すぐに出てきてくれ」
この声の主、それはよりにもよって、シンクレア中将だった。





