第2話:これは、片思いじゃない
大佐の車が近づいてくるのを見て、ずんぐりしたクラウス少尉は、すぐに気をつけの姿勢をとり、敬礼をした。彼は、今回の任務を無事に果たせたことを、誇りに思っていた。
任務とは——新しく来た三人の獲物を、狩人が来るまで見張っていることだ。
フリッツ少佐が先に車を降り、大佐のために後部座席のドアを開ける。彼は、へつらうような笑みを顔に貼り付けて言った。
「今回は三人だけでしたが、約束通り、一人ずつ分け合えるかと思いますが、いかがでしょう?」
大佐は何も言わない。懐中時計を開いたまま、じっと文字盤を見つめながら、車を降りた。
無視されたフリッツ少佐は、その瞬間、顔から笑みを消した。その目つきが、陰険なものに変わる。だが、それはほんの一秒足らずのことで、彼はすぐに、あのトレードマークの笑顔を貼り付け直した。
「ご安心ください。一番いいものは、大佐のために取ってあります。あの三人のうちの一人は、我々が今まで見てきた中で、最も美しい女です。きっと、驚かれますよ」
大佐は懐中時計をパチンと閉じた。それでも、沈黙を保つ。
夜の闇のせいで、目の前の建物が何なのか、正確に見極めることはできない。おそらく、人がめったに訪れない倉庫なのだろう。
フリッツ少佐は、うやうやしく大佐を鉄扉の前へと案内し、目配せでクラウス少尉に扉を開けさせた。
鉄の扉が開けられると、フリッツ少佐は手慣れた様子で明かりをつけた。
目に飛び込んできたのは、三人の若い娘たちだった。
大佐の視線は、抗いがたく、真ん中にいる長い髪の娘に釘付けになった。
(なんて整った顔立ちだ……透き通るような白い肌……)
(本当に、美しい)
(もしベルが大人になっていたら、彼女のように美しくなっていただろうか?)
その時だった。彼女のほうも、まるで大佐の心の声が聞こえたかのように、まっすぐに大佐を見つめていた。
二人の視線が、絡み合う。
五、六秒ほど、そうしていただろうか。先に目をそらしたのは、大佐のほうだった。
大佐には分かっていた。フリッツ少佐が言っていた「驚き」とは、間違いなく彼女のことだ。
彼らは当然、この最も美しい娘を大佐に譲るつもりでいる。しかし、万が一にも邪な考えを起こさせないために、大佐は素早く彼女のそばへ歩み寄った。
そして、左手を彼女の腰に回し、自分のもとへ引き寄せる。これは、二人の部下への「所有権の宣言」だった。
これで、彼らはもう、彼女に手出しはできない。
軍手越しの左手に、彼女の腰の細さが伝わってくる。
無駄な肉は、一切ついていない。
一方で、フリッツ少佐とクラウス少尉は、それぞれ別の少女を捕まえ、今にもその汚い手で、彼女たちの体を弄り始めようとしていた。
そんな中で、大佐の腕の中にいる娘は、少しも抵抗しない。とても落ち着いているように見えた。
だが、彼女の右手だけは、正直だった。
大佐の左手を、痛いくらいに強く握りしめている。
隣にいる美女とは対照的に、目の前の二人の少女は、泣き叫び、もがいていた。
大佐は、わざと二人から視線を外したが、不意に、そのうちの一人と目が合ってしまう。
彼女の目は、恐怖と絶望に満ちていた。
しかし、それ以上に——怒りだった。
燃え盛るような怒りの炎が、その目には宿っていた。
まるで、その目の主である少女の代わりに、この世界の不条理を訴えているかのようだ。
彼女は大佐を睨みつけ、その怒りの炎を、大佐の脳裏に焼き付けた。
大佐は彼女たちを無視することに決め、彼女の細い腰を軽く押して、この場を離れるよう促した。
彼女は、まるで通じ合っていたかのように、素直に大佐に従い、倉庫をあとにした。




