第8話 今度は私が
ショッピングモール内は多くの買い物客で賑わっていた。
週末の土曜日と関係しているのか、ほとんどの買い物客は家族連れが多い。
「で、どこを回って買い物をするんだ?」
碧は隣で歩く白雪に訊いた。
「そうね。普通はゆっくりと見て回りたいところだけど、とりあえず、三階から一階へと順に買い物して回ろうかなと」
「へぇ、その心は?」
「だって、その方が効率良くないかしら? 荷物もあるんだし、一階から見て回って二階や三階を上り下りして変なルートで見て回るのは好ましくないでしょ? 荷物を持つと考えたら先に三階に上がってから下の階へ進むのが適切よ」
「なるほどね。それなら他の店舗によっても大丈夫と」
「理解が早くて助かるわ。ありがと」
「いや、説得力のある意見だったから賛同しただけだよ」
「あら、そう」
二人はエスカレーターに乗り、三階へと一気に上がる。
三階は一階とは違い、主に衣類や靴類、雑貨が多く置いてある店舗が並んでいる。
とりあえず、最初の目的地である店舗に入った。
この店舗では、スニーカーや運動靴などが置いてあり、男性ものから女性ものまで異なるサイズが置いてある。見たことのあるシューズのメーカーも置いてあり、二十%オフと表記されている。今がお買い得というわけだ。
碧が普段使用している某スポーツメーカーのスニーカーが置いてあり、これは安いなと思った。買うべきかは迷ったが、家にまだ新しい靴が何足か置いてあるので、要らないなと秒で考えた。
白雪はじろじろと女性ものの動きやすい靴を並べてある靴を見比べながら難しそうな表情をしていた。おそらく何にするのか迷って決まらないのだろう。
「うーん、デザインはいいんだけど……どっちも捨てがたいなぁ。篠原くんはどっちがいいと思う?」
「俺は普段、晴れの時なら薄茶色に近い色を選ぶし、雨なら紺色か黒かな。運動靴は動きやすいもので選ぶけど」
「そう、意外と派手にならないようにしっかりと選んでいるのね」
「と、言うよりも母親と行くときにしか買わないけどな。俺にはファッションセンスがないらしい」
「でも、今日の服装は決まっているように見えるけど?」
白雪に指摘された自分のファッションセンス。もちろん、碧自身がコーディネートしたわけではない。友人のいろはによって着せ替え人形にされつつ改造されたものである。
「これは俺のセンスじゃないんだ。知り合いに相談して、これが合うんじゃないかって言われたからこの組み合わせになっただけで」
「そうなの。その人、いい線してるわね。感謝した方がいいわよ」
「ああ、不甲斐なく。感謝はしているつもりだ」
「でも、今度は篠原くん自身が選んだ服が見たいわね」
いたずらっぽく白雪は碧を覗き込むように見てくる。
「あ、うん。機会があればな」
自信なさげに返事をする。自分が来ている家での服装といったら地味系の何もない服がお安く買える人気メーカーのものとは言えない。
「もしくは私がコーディネートしてあげようか?」
「え?」
「『え?』じゃないでしょ。別にいいじゃない。私がしたら何か嫌なわけ?」
「い、嫌じゃないけど……」
「本当に?」
「本当本当」
白雪に言い寄られて、視線を合わせられない碧は、彼女から放たれるオーラに当てられる。
こう、ぐいぐい来られると、断るに断れない彼女の何かが分からない。
「どうだか」
ポンッ、と右手の拳を握って、碧の胸に当てる。
この可愛らしい訴え方はギャップがあるのでやめて欲しいところである。
そんな冗談なやり取りをしながら、白雪は自分の靴を二足分選ぶ。
店舗の外で待っていると、レジから両手で抱えながら二つの箱を運んでくる白雪を見て、碧はさり気なくそれを白雪から奪い取る。
「ありがとう……」
碧の行動に白雪は礼を言う。
「いいさ、これくらいは別に構わないぞ。重くないし」
「そう……」
頬を指でポリポリと搔きながら、眉がへにゃりとなる。
そんな白雪を見て、碧はくすくすと笑った。




