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雪解けの白雪姫  作者: ユイ
第1章
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第1話  降りられない白雪姫

 じりじりと照りつく太陽の下、篠原碧は制服を着ながら下校していた。


 途中までは友人たちと下校していたものの、つい十分前に分かれ、一人ゆっくりと歩いていた。


 空を見上げると、夕方なのにまだ明るいのは、これからどんどん夏に向けて季節が変わってきている証拠である。気温はまだ、それほどまで高くないが、日中の気温二十度は超えているので、冬が過ぎ、春の途中である。


 だが、ここ最近の気象状況に置いて、本当に春と秋があるのか疑わしいものである。


 早く帰って夕食の準備をしないといけないな、と頭の片隅に考えていた碧は、真っ直ぐ自分の家がある方向へと目を向ける。


 歩いていると、碧の通り道には子供達が遊んでいる公園があり、敷地内は割と広く遊具が多く設置されており、その隣の面積にはボール遊びが十分にできるくらいの広さが備わっている。


 つい視線が公園の方に向けていると、一つ気になる点があった。


 この公園の中で一番に目立つ大きな木の下のベンチにバックがぽつんと置かれてある。近くにはその持ち主らしき人物がおらず、だが、何故か、人だかりが出来て、数人の子供たちが上を見上げていた。


 碧も何事かと思い、気になってその木の下へと歩み寄った。


「何してんの?」


 と、子供たちに話しかけてみると、皆、気の上にいる人物の方を指差す。


「………」

「………」


 碧が上を見上げると、見慣れた制服が太い枝に載ってしゃがみ込んだままこちらの方を見下ろしてくる。


 見慣れた制服とはいえ、男子生徒が着用する制服ではなく、女子生徒が履くスカートがひらひらと小さくなびかせていた。


「えっと……」


 同声を掛ければいいのか戸惑っている葵は、次の言葉が出てこない。


 顔をよく見ると、見知った顔立ちをしており、赤髪の入った茶髪で、腰まで伸ばしたそれは綺麗に整えられている。


 だが、今回は木に登っていたのか、長い髪を傷めないように一つに結んでいる。


「なによ……」


 碧に反応した人物は、頬を赤らめ、恥ずかしそうに返事をする。


 この場合、どう返せばいいのかさすがの碧でも困るわけで、そもそも彼女がどうしてここに登っていたのか、全く理解が出来ない状況である。


「そこで何をしているのかなぁと思って……」


 愛想笑いをしながら見上げる碧は会話を続ける。


「ボール……とっ……」


 小声で何を言っているのか聞こえづらい。


 そもそも、彼女の体はなぜか震えており、木に必死になってしがみついている。


「そのー、もしかして降りれなくなったとか?」


 碧は直球で彼女に対して答えを聞く。


「ぇぇ……」

「え? なんて?」


 返事が全く聞こえてこない。


 彼女の必死に聞こうという姿勢はあるのだが、当の本人である声が小さくて聞こえてこないのだ。


 彼女はぷるぷると震えながら、少し怒った表情をして、葵の方を睨みつけた。


「ええ、そうよ。子供たちのボールを取ってあげたら今度は自分が高いのが苦手なのを忘れて降りれなくなったのよ! わ・る・い⁉」


 先程よりかは声を上げて、口調も強めになっていた。


 だったら、登らずに別の方法を考えればよかったのでは、と思った碧は彼女の優しさには関心していた。


「いや、悪くないです……」


 彼女の圧に負けたのか、碧はそれ以上追及しなかった。


 追及しなかったのはいいのだが、この後、彼女はどうやって木から降りるのだろうか。


 一応、スカートを履いているので、このまま、同じ学校の生徒である碧に恥ずかしい姿を見られるにはいかないだろう。


 うーん、と碧は首を傾げながら頭の思考を巡らせた。


 すると、その女子生徒は立ち上がって、生まれたての小鹿のようにぷるぷると体を震わせながら、少し涙目で何かを決心したかのようにこちらを見下ろして言った。


「ねぇ……」

「はい?」

「その……」

「なんでしょうか?」

「受け止めてくれる?」

「はい?」


 その瞬間、碧が答える前に彼女は目を瞑って木の上から地面に飛び降りてきた。


「え、えぇぇぇぇぇええええええっ‼」


 さすがの碧も急な出来事だったので、びっくりして降りてくる彼女を受け止める余裕もなく、そのまま飛び降りてきた彼女にもろ全身にダイレクトアタックされたのであった。


 全身に走る衝撃はあまりにも痛く、けど、ここで自分が下敷きにならないと彼女の方が大きな怪我をしてしまうと思い、そのまま体ごと全身地面にクッション代わりに倒れた。


「ねぇ、大丈夫? ねぇってば!」


 彼女の落下する衝撃と背後から痺れが走る地面からの衝撃で意識の遠のく中、彼女の心配する声が小さく段々聞こえづらくなってきた。


 これが篠原碧と橘白雪の出会いである。

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