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そこにくるみの木があったから  作者: タラ吉の助
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みなさんひどくないですか

入院して次の朝

5時半くらいには廊下をわらわらと老人達がある方向に向かって歩いていた

昔の病院は部屋に洗面台がなく学校みたいに廊下に長い流し台があり我先に顔を洗いに行っていた。

そんなに元気なら入院しなくていんじゃない?

こっちは昨晩から眠れなくてやっとうとうとしてきた所なのに

何度も部屋のドアを閉めても看護師がやってきて

「空気がこもって嫌だから」と言って閉めているドアを開けにくる

(入院してるんだからゆっくり寝させてよ)と思っていたら鼻の辺りがツンと感じた

そっと指先を鼻にあてたら少し血が出ていた

鼻血はそれくらいだったが一応鼻にティッシュを詰めていた

6時半看護師が来た くるとすぐにカーテンを開けながら

「具合はどうですか?」と雑に言ってきた

「さっき鼻血が少しでました」と私が言うと

「そりゃそうよ!下からでなくなったんだから鼻からでたのよ」と、知らなかったの?の、ノリで言ってきた

「そんな事って…」

私があっけにとられていると

「そりゃそうよ。下からでなくなったぶん、どこへでるの?」と。       看護師が去ったあと私はまたカーテンを閉めた。


朝ごはんが持って来られた

食べようとした時カーテンの向こうのおばあさんらしき人がボソッと

「腹減った」と力なく言ったのが聞こえた

(えっ?おばあさんごはんないの?)   一気に食べる気がなくなった

元々、食欲はなかったが、食べなきゃという気持ちだった

私は少し口にして食べるのを辞めた

普通ならまだ食事中と時間だというのに2人の看護生が入ってきて

「はーい かんちょうしまーす」    と、明るく言った

多分、市内の看護学校の実習生だ

おばあさんは寝たきりなのかそのままおむつの中でしているようだった

(ちょっと待ってよ 普通なら私食べてる時間なんですけど)

どうも会話から聞こえてくるにはおばあさんは糖尿病らしい

それに関係するかは分からないが、絶食をしてかんちょうをしていた。

他にどんな病気があるかわからないが時々、聞こえてくる

「腹減った」は少なからず私のストレスになっていた。

10時過ぎた頃に、両親と旦那が見舞いに来た。

父はお気に入りの九谷焼の骨董品の蓋付きの湯呑みを持って来た

昔の病院は、大きいやかんで熱々のお茶を1人1人に配っていたため、それ用のコップをみんな用意していた。

「こんなのいらない」

ここは江戸城じゃないんだぞ、そんな殿様が使うような湯呑み。

24歳には渋過ぎるだろ

父は、高価な物を貸すのだから喜ぶと思ったのにといった顔で、渋々袋にしまってした。

次に母が近づいて来て

「さっき、役所に行って籍を入れて来たから」と言った

私はこの人のこういう所が本当にキライだ。

書類は出来上がっていた

ロマンチックな事は考えていなかったが覚えやすくする為、旦那の誕生日に入籍するつもりだった。         あと5日後だった。

喪失感?それとも激怒?

この次は勝手な事しないでね。それもおかしいだろ。

是非もなし。

織田信長もそう言ったみたいだ。

彼の思いに比べたら、私の入籍ごときで世の中が変わるわけでもない。


昔の病院には備え付けのテレビがなかった

必要な人は自分で持って来る。

隣のおばあさんもテレビがなかった

父が持って来てやろうかと言ったがすぐに退院するつもりだったから断った。

一日中シーンとしている部屋で時々聞こえてくるつぶやき

「腹減った」

でも、私には食事がやってくる

私は3口ほど口に入れるとすぐ、廊下にある配膳カートに戻していた。



次の日の朝もまた5時半頃から1日が始まる。

そして6時半には検温が来る

ここは入院患者に厳しい病院だ。

「具合はどう?」

「少し、熱があります」

「妊娠してるからね」

相変わらず私は妊娠病らしい。


10時過ぎに父が来てくれた

その当時、うちで流行っていた瓶の中で特別な水で飼う小さな魚。

熱帯魚なのか水替えもあまりしなくていい飼育方法。

ベッドの上のキャスター付きのテーブルに置いた、それと父の好きなアンパン。

私はあまり好きじゃなかったけど、何しろ食べる物がなかったので有り難く思った。


父が帰っあと、暇だしそのアンパンを食べる事にした

袋を触ると音がした。           私は布団の中に潜って袋をあけパンをちぎって食べた。

コソコソ食べたって美味しいわけがない。

私は食べるのを諦めた。

2人部屋は常にシーンとしていた。



その夜おばあさんの家族が見舞いに来た

会話を聞いていると思われたくなかったのでトイレに行ってみた        トイレから帰ると、私の話題になっているようだった

カーテンの向こうから

「何処が悪いの?」

「さぁ、つわりがひどいみたい」

と、おばあさんが、言うと

「つわりは病気じゃないのにねぇ」「だよねー」

と、話しているのが聞こえた。

ここでも私の居場所はないんだ。


私は次の朝、看護師長に全てを話し

て退院できるようお願いした。

「私は内科に入院してるんです。何もかもつわりだの妊娠だのと言われ、点滴もできないのだから帰らせてほしい」と。

師長は

「まー、そんなに怒らないでお腹の子によくないから」と私をなだめた。

もう帰る。こんな所いたくない。

その訴え後も2.3日いたような気がする。

胃の痛みの原因がわからないからだった。


その間も隣のおばあさんは絶食だった。

ようやく明日退院という前日、いとこのお嫁さんが会いにきてくれた

彼女は母のお姉さんの旦那側の姪で私とは小さい頃からの顔見知り

おばさんの家でよく会っていた    そこでおばさん側の甥と仲良くなり結婚した

私が入院した頃3人目をこの病院で出産していた。

「今晩から普通食なんだ ずっとおかゆだったから楽しみ」と言っていた。

出産したらおかゆなんだ…


結局なんだったんだろこの入院

とモヤモヤの中私は退院した。

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