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そこにくるみの木があったから  作者: タラ吉の助
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怖い話です。

ある夜、閉店後帰宅途中、店のすぐ近くの居酒屋の前を通ると、おじさんがあお向けで倒れていた。         面倒なので、私はおじさんのすぐ横を、バイクで通り過ぎた。      何メートルか、走り過ぎたものの、死なれては後味が悪いので、Uターンした。おじさんは、ひっくり返ったカエルみたいで、白目をむいた顔の横にメガネと入れ歯が、落ちていた。      「大丈夫?」私は、フルフェイスのヘルメットをかぶったまま仕方なく言った。おじさんは無反応だったけど、居酒屋から店員のおばさんが出てきて「大丈夫。大丈夫。」と、言ったのでそのまま帰った。           その居酒屋は、独身のおじさんが、ちょっとした料理を出して営業していた。                 ある人は、熱燗を呑んで、最後おちょうしを持って、おちょこに注いだら、ねずみのフンが出てきたとか。      まぁいい話は聞いた事がない。      その中での話のひとつに、母の店が開店して以来の常連客がいた。毎日のように呑み明かしていたある会社の社長が、1月1日に、その居酒屋の主人ら、数人でフグを食べる事になった。   店も営業せず、内輪だけの、呑み会だった。店主がフグをさばき、みんなで堪能していた。           フグの卵巣は、毒が有るから生で食べてはいけないのだが、少量食べると舌が痺れて、なんとも言えない感覚になり、中には、それが好きで食べる通がいるらしい。            その店主も、さばきながら卵巣をつまんでいたのだが、倒れてしまった。   フグ毒に当たってしまったのだ。     少し離れた病院へ、救急搬送された。    独身で、身寄りは年老いたお父さんしかいなく、その場にいた人達で病院に駆けつけた。             ベッドには、意識のない店主。      そこへ医師が来た。おもむろに人口呼吸器を外し、             「見てください。自分で呼吸できていません。脳死です!」と、言った。      そして、人口呼吸器を外したまま、説明をしているので、その社長が慌てて「三が日は、なんとか生かして下さい。」と、マスクを口に当てながら言った。正月早々逝かれては。       と、言っている横で父親は、        「この親不孝者が!」と、怒った。      さぁ、葬式の準備だ。自分達が仕切ってやらないと、あーだこーだ、とバタバタしている所、店主が意識を取り戻した。3日の事だった。         実は、全身麻痺で呼吸すらできなかったが、耳は聞こえていた。頭では     「俺は、生きてるんだ!」と、頭元で、父親が怒鳴っていた事。みんなが葬式の準備をしていた事も。すべて聞こえていた。「俺は生きてるんだよ!」と心の中で叫んでいたのです。            「脳死です。」             なんてあっさりした診断。        本当にこの病院は、悪名高き病院だった。                 この社長の、奥さんが体調が悪いのでこの病院で、診察してもらった際ロビーで待っていると、医師の方からやって来て、レントゲン写真を天井にかざし、               「見てくだい。これ、がんです。」と言った。                それを、聞いた私は、          「嘘でしょう?」と言った。       本当なんだ。俺は椅子から転げ落ち、嫁は泣き出すし、廻りの人等はみんな口がポカーンだった、とか。       40年くらい前の話だが、信じられない怖い話です。            余談ですが、子供の時見たドラマで、戦時中の話で、2人の男がよく当たる占い師に、自分達は爆弾に当たらないか占ってもらった。爆弾には当たらないと占い師に言われ、2人は大喜びだったが、数日後フグの毒に当たって死んだというドラマの中での話だったが、子供ながらによくできた話だと、感心してしまった。  

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