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【S】  作者: マチカネ


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第4章 出会い

 南塚高校を追い出された秀介と弘一郎は……。

 南塚(みなみつか)高校から、逃げ出した秀介(しゅうすけ)弘一郎(こういちろう)

 この先の行く当てはなしの2人、町の中を進む、ただ進む。

「なんで、こんなことになったんだ?」

 学校だけのことではない、何故、アンデッドが生まれ蔓延してしまったのか? 全然、解らない弘一郎。彼以外もこんな事態を説明できる者など、おいそれとはいないだろうが。

「……テロと関係あるんじゃないかな」

 自分の考えたことを秀介は口にする。

「あのバケモンとテロが関係あるのか?」

「うん、だって盛綱市(もりつなし)で起きたことのないテロが起きて、その直後にアンデッドが発生したんだよ。この2つに関係があるんじゃないのかな」

 そうは起こらないテロが盛綱市で起き、すぐ後に起こるはずの無いアンデッドの発生が盛綱市で起こった。

「なるほど」

 言われてみれば病院でアンデッドになったのは、テロで命を落とした被害者たち。

「この2つを繋ぐものは何だろう」

 道を進んでいた秀介、

 「あっ」

 近くでアンデッドの気配を感じ取った。弘一郎も秀介の様子から察し、一緒に物陰に隠れる。


 どこにアンデッドがいるのか確認のため、こっそりと顔を覗かせた秀介と弘一郎は言葉を失う。

 倒れて痙攣している人を人の姿のアンデッドと異形の姿のアンデッドの群れが貪っていた!

 声を出したら気づかれてしまう、両手で口を押え、必死に叫びだしそうになるのを秀介は堪える。

 これは弘一郎にとっても凄惨な光景、ギューと口を閉じて堪えた、それほどのシーン。

 あれでは生存は絶望、助け出すのは不可能な上、無茶過ぎる。

 アンデッドどもは、まだこっちに気が付いていない、痙攣を止めた人間に蹲って貪り喰い続けていた。

 心苦しいが、逃げ出すのは今。

 秀介と弘一郎の防衛本能が活動する。お互いの意思を確認、音を立てないよう、そっとそっと、ゆっくりゆっくりと後退。十分に距離を稼ぎ、一気に走り出す。



 辺りにアンデッドの気配のない公園で一休み。

 ここでも体力の崩れは起こらず、おかしいとは思わないで秀介は受け入れることにした。

 公園の水道で弘一郎は水を飲む。

 一息つき、袖で口を拭き、辺りを見回してみると、自分たち以外には人の姿は見えない、いい天気なのに。

 普段ならば砂場や遊具で遊ぶ子供たち、見守る親たちの姿があっただろう。

 普通の日常を当たり前のように送っていた。それが本当に普通で当たり前だと思い知った。

 公園に2人っきり、なんとしても弘一郎は、幼馴染は自分が守らないといけないと決意を固める。

 ガサッと物音がして、様子のおかしい男たちが公園に集まってきた。好意的ではない連中だというのは容易に解る。

「お前ら、ガキのくせに可愛い子を連れているじゃないか、置いて行けよ」

 そしてアンデッドじゃないことも。

 様子が学校にいた教師たちと似ている、目付きが正常な人とは違うもの。

 ヤバイ、この連中はヤバ過ぎる。そう感じた弘一郎は秀介を守るように立ち、金属バットを構える。

「ナイト気取りかよ」

 せせら笑う連中、アンデッドでないので人数が多いというのは怖くはない、これぐらいだったら弘一郎は何とかできる。怖いのは連中の纏っている異常な雰囲気。

 それは秀介も感じ取っていた。

「僕は男だよ」

 男だと分かれば引いてくれるかと期待。

「男だろうが女だろうが、関係ない」

「今更、道理や道徳なんか、知ったことか」

「どうせ、世界は終わってしまったんだ」

 “世界は終わってしまったんだ”この言葉にドキリとする弘一郎。どんなに否定しても頭の片隅にはあった言葉、恐れ。アンデッドは世界に広まってしまった、世界の終わり。

 弘一郎は心身ともに強い男、それでも盛綱市市内で起こっていることが、市外、はたまた国外、世界に広がっているとしたら、背筋が凍える。

「テレビも市内放送しか映らない、ラジオも同じ、電話もメールも市外には通じはしない」

「市外もここと同じなんだ。ゾンビで溢れかえっちまったんだよ」

「世界中、ゾンビだらけになってしまった、だから連絡が取れない」

「世界は滅んだ、滅んでしまったんだ」

「もう法もルールも意味は無いんだよ」

 動揺が抑えきれない、意図せず、金属バットを持つ手が震えた。

「そんなことあるものか、世界は終わってなんかいない。でたらめを言うんじゃない!」

 秀介が吼える。ごまかしや逃避ではない、強い信念より、発せられた言葉。

 その言葉を聞いただけで失いかけた勇気を取り戻し、再び強く金属バットを握り締める。

「ガキのくせに、生意気言いやがって」

 恐ろしい状況の中、連中は理性を失っていた、理性を失った相手に正論は逆効果。

「秀介、俺の後ろに隠れていろ」

「僕はここにいるよ」

「そうか、ならこれを持ってろ」

 金属バットを渡し、得意の空手の構えを取る。

 へっぴり腰ながら、秀介は金属バットを持ち上げた。

 連中の1人がサバイバルナイフを抜く。

 見れば連中の中には、服に返り血がかかっている奴らがいる、何をやったかは一目瞭然。

 法も秩序も失ってしまった連中、アンデッドとは違った意味で危険な相手、“きれい”に撃退するのは無理かもしれない。

 パチパチパチパチ、突然、拍手が起こり、場の空気を粉砕。

「いやはや、立派な子供たちだね」

 そこには警官の制服を着た男と、イケてる感じのする茶髪の女性がいた。

「――に比べて、大の大人が何だ、刃物まで出して、みっともないったらありゃしない」

 警官の制服は着崩しているので、だらしなく見える。

「何だと、このポリ公がぁ」

 サバイバルナイフを片手に襲い掛かろうとした。

 鳴り響く銃声。

 警官は手にしたSIG SAUER P230を上空に向け発砲。横にいた茶髪の女性は両手で耳を塞ぐ。

「まだまだ弾はあるぞ、警官だからって遠慮はしない。もう遠慮必要はないんだろ、お前らの理論では」

 銃口をサバイバルナイフを持った奴の眉間に向け、引き金に引こうとする。

「10、9、8、7……」

 カウントダウン、0になったら引き金を引くぞ、ニヤッと笑った怖い表情、本気で撃つ気満々に見える。

 この脅しは効果覿面。まずはサバイバルナイフを持って奴が逃げ、それに釣られて連中は逃げ出した、蜘蛛の子を散らすように。

「あの―」

 助けてくれたお礼を秀介は言おうとした。

「場所を変えよう、さっきの銃声でゾンビどもが集まってくるかもしれない」

 SIG SAUERを懐にしまい、さっきとは変わって温和な笑顔。



 パトカーの後部座席に乗せてもらった秀介と弘一郎。刑事ドラマぐらいでしか見たことのないパトカーの車内、2人とも男の子、何だかちょぴり得した気分。

 金属バットは弘一郎に返しておく。

「自己紹介をしておこうか、俺は杉本(すぎもと)巡査、コイツは連れの(みさき)だ。今のところ、内縁の妻だが、結婚する予定だぞ」

 警官の杉本巡査は運転席に座り、シートベルトをする。

 “結婚する予定だった”ではなく、“結婚する予定だぞ”と言い切った。

「岬です、よろしくね」

 助手席に座ったイケてる感じのする茶髪の女性、岬は後ろを向いて挨拶。

「俺は竹野功一郎(たけの こういちろう)

「僕は藤崎秀介(ふじさき しゅうすけ)です」

 それぞれ自己紹介、2人もシートベルトを着けた。

 胸ポケットからタバコの箱を出し、杉本巡査は一本銜える。

「ちょっと、あなた、子供の前でタバコは厳禁よ」

 窘めた後、岬もシートベルトを着ける。

 罰が悪そうな顔をして、銜えたタバコを箱の中に入れて胸ポケットに戻す。

「さてと」

 アクセルを踏み、パトカーをスタート。


「なんか情報が入ってきているかもしれないから、取り合えずは警察署へ行くぞ」

 町中をパトカーが走る。サイレンは停止したまま、この状況下、サイレンを鳴らして目立つのは愚行。

 窓から見える町並み、いつもと変わらないようで変わってしまった町並み。

 日本人離れした人相の良くない一団が、店から金目の物を持ち出す。

 他人を見下すようにニヤニヤしていると、そこへ獲物を見つけたアンデッドの群れが襲い掛かった。

 金目の物を捨てれば逃げれるかもしれないのに、何故か持ったまま逃げたので、一団はアンデッドに捕まってしまう。

 一気に群がるアンデッド、車内には悲鳴は聞こえてはこない、ただ風景の1つとして、窓の外を過ぎ去っていく。

 歩道や道路を徘徊していたアンデッドの群れがパトカーに気が付き、向かってきた。

「飛ばすぞ」

 スピードを上げる。数は多くとも動きの鈍いアンデッド、たちまち引き離す。

 ところどころに乗り捨てられ、道路に放置された車をパトカーは器用避け、前進。



 夕暮れ時、盛綱市警察署に到着。

 地下の駐車場にパトカーを止め、まず杉本巡査が降り、周囲の様子を確かめ、降りるように秀介たちに合図。

 岬、弘一郎、秀介の順番でパトカーを出た。

 駐車しているパトカーの数が少ないのは、出払っているせいだろう。

 おかけで駐車場を広く見渡せた。かと言って油断大敵、どこかにアンデッドが潜んでいる危険性はある。SIG SAUERを抜き、安全を確認しつつ、階段を上り、その後に秀介たちは着いていく。


 5階まで上り、そこにあったドアの前へ行き、杉本巡査は開けて中に入った。

 四方を見回す、室内は無人、あるのはシーンとした静けさだけ。

 物陰にいる可能性もあったので、しばらくはSIG SAUERを構えたまま。

 何にも出てくる気配なし。

 安全だと解ると、SIG SAUERを懐に入れ、

「大丈夫だ」

 入ってくるように促して、本人は戸棚をごそごそ。

 パトカーと同じ順番、岬、弘一郎、秀介で署内に入る。

「お邪魔しまーす」

 何となく弘一郎は言ってしまった。

 最後に入った秀介はドアを閉めた。こんな状況なので戸締りは厳重にしておかないと。

「まずは腹ごしらえをしよう」

 杉本巡査が戸棚から出してきたカップラーメンとポットを机の上に置く。

 弘一郎と秀介、パンを食べてた後、何もお腹には入れていなかったので、ごちそうになることにした。



 食後、杉本巡査は無線機で連絡を取る。

「……」

 ここも通じるのは市内だけ、何人かの同僚とは連絡が取れ、仕入れた情報を手帳に纏める。

「いろいろ解ったぞ」

 無線機を切り、秀介たちのところへ。

「盛綱市が自衛隊に封鎖されている。境界まで行った同僚が、直接、話を聞いた確かな情報だ」

 仕入れたてのホカホカの情報。

「さて、何故、自衛隊が盛綱市を封鎖しているのか解るか?」

 唐突に質問してきた。

「えっーと、あのゾンビを市外に出さないため?」

 弘一郎に答えられるのはここまで。

「世界は滅んでいないってことだね」

 秀介の出した答えに、?を浮かべる弘一郎。

「市外にも化け物が蔓延っているんだったら、態々、封鎖する必要はないでしょう。市外に連絡が取れないのも電波が封鎖されいるからじゃないのかな、化け物のことを外に知れ渡らないようにするための」

 ここまで聞き、なるほどと弘一郎も納得できた。

 体力で優れている弘一郎に対し、秀介は学力に優れている。いつも成績は上位、それでいじめられることもあるが。

「可愛い顔して、賢いのね、君」

 岬はパチパチと拍手、からかっているのではなく、素直な賛辞。

「正解だな、自衛隊と話した同僚も似たようなことを言われたよ」

 どんな困難な状況下だろうと、デマに惑わされず、正しい情報を手に入れることが肝心。

「後、政府が特殊部隊を派遣してくれたそうだ」

 特殊部隊、このワードは男心をくすぐる。

「つまりだ、ここで籠城していれば、いずれは特殊部隊に救出されるということだ」

 ニッとにこやかに微笑む。

 世界は無事に続き、特殊部隊派遣の話は、一同に希望を持てたらす。

 杉本巡査に引きずられるように全員の表情が、パッと明るくなった。


 今晩は警察署に泊まることになった。事件によっては泊まり込みになることもあるので、ちゃんと仮眠室があり、人数分の布団一式が揃っている。


 仮眠室に敷いてあった布団に入るなり、疲れていた弘一郎は眠りに落ちた。

 布団の中で秀介は考える、道端で言ったテロとアンデッドの関係を。

 この2つを繋ぐ、キーワードとは?

「……ウィルス」

 ウィルスが頭の中に思い浮かぶ、実際にサルモネラ菌や炭疽菌でテロを行ったテロリストはいる。また映画やゲームでのゾンビ発生の原因がウイルスであることは多い、人気のゾンビゲームのゾンビ発生の原因もウィルス。

「だとしたら、盛綱市が封鎖されている理由は化け物を外に出さない以外に、ウィルス拡散防止の意味もあるんだ。電波封鎖もウィルスの情報を外部に洩らさないための処置」

 いろいろ考えている内、自然に秀介も眠りに落ちていった。



「あの子たち、寝たわよ、疲れていたのね」

 窓を開け、タバコを吸っている杉本巡査の横へ岬がきた。

 窓の外は夜の(とばり)。昨日までは、まだ人が出歩いている時間、でも今日は違う。

「ああ、大変な一日だったからな、俺たちも正気でいられるのは運が良い方だ」

 連絡の取れた何人か以外の同僚とは音信不通、この事は杉本巡査の中だけにとどめて置いた。

 音信不通の理由は1つ。同僚を失う悲しみ、それを秀介と弘一郎の前ではおくびにも出さなかった。

 同棲中の岬、静かに杉本巡査の隣に寄り添う。

「まっ、何がどうなろうと、あの子たちは守って見せるさ、それが警官としての俺の務めだからな」

「ええ、私も力を貸すわ」

 フゥーと、杉本巡査は窓の外に煙を吐いた。夜の中にタバコの煙が漂って消えて行く。



       ◆



 境界に配置されたバリケード、ずらりと自衛隊が立ち並び、盛綱市には何人も入れないように封鎖している。

 三車線の道路の内、中央の車線には車止め置かれ、使えない状態。

 左右の車線の端には、何台もの車が止められ、集まっている一般の人たち。

 みんなテロのニュースを見て、家族、親類、知人が心配になり、来てみても盛綱市は封鎖され、入れてはもらえず足止め。

 日が落ちても誰もが帰ろうはせずに残っている、それだけ心配なのだ。

 集まってきている人の中に秀介の父親、和人(かずと)もいる。

 いてもたってもいられなくなった和人、自衛隊員の元に行き、

「子供がテロに巻き込まれたんだ、通してくれ」

 訴えかける、昼間から繰り返してきた行為。

「今、盛綱市に立ち入ることはできません」

 直立不動のまま、表情を変えず、きっぱりと自衛隊員は言う。自衛隊員も同じ返答を繰り返していた。

「息子が重体だと聞かされたんだ、突然、電話も通じなくなった。頼む、通してくれ!」

 殆ど泣き声に近い頼み。

 どんなに同情心を持とうとも、外部の人間を市内に入れてはダメ、入れてしまえば被害が拡大してしまう危険性大。

 昼間から境界では、同じ光景が何度もあり、ついには自衛隊員に食って掛かるものも現れてしまう。

 一足即発、悪意が起こす行動ではない、心配な気持ちが引き起こす行動。

 突然、クラクションが鳴り響く。一足即発も吹っ飛び、集まってきた人たちは、一斉にクラクションが聞こえてきた方向に視線を向けた。

 車止めの置かれた中央の車線を、ヘッドライトを光らせ、走ってくる黒塗りのワンボックスカー、ナンバープレートまでも黒、文字の色は赤。

 その後ろを黒塗りのワンボックスカーが列を成し、中には黒塗りのハンヴィーやジープの車両もある。

 黒い車両の一団を見た自衛隊員が車止めを移動させ、中央の車線のバリケードだけを解いた。

 自衛隊員たちは一斉に敬礼。

 黒いワンボックスカーが停車、助手席の窓が開き、

「ご苦労」

 黒いサングラスをかけたレディ・オーガが敬礼を返す。

 一部だけ、封鎖が解かれた。うまくすれば侵入できるかもと、車に乗り、隙を伺う人たち。

 和人は先頭の黒いワンボックスカーに駆け寄る。

「妻と息子が中にいる、お願いだ、私を盛綱市に入れてくれ」

 涙の訴え、運転席の柿木園(かきぞの)も困ってしまう。

 バタン、助手席のドアが開き、レディ・オーガが降りると和人の前へ。

 おもむろにサングラスを外し、真剣な目で和人の目を見る。

「盛綱市ではテロリストにより、ウィルスがばら撒かれた」

 この発言を聞いた柿木園や自衛隊員たちはドキリとした。自衛隊はバイオテロが起き、感染拡大を防ぐために盛綱市の封鎖せよとの命令を受けて派遣され、同時に情報の封鎖の指令も出ている。

 電波封鎖もそのため、盛綱市の現状を外部に洩らしてしまえば、パニックになりかねないので緊急処置。

 なのに、あっさりとレディ・オーガは話してしまったのだ。

「下手に隠すから、こんな騒ぎになるんじゃねぇか」

 黒い車両の一団、特殊部隊 《ダーククロウ》の隊長はレディ・オーガ、自衛隊も彼女に従うようにとの指示を受けていた。

「今、盛綱市ではバイオハザードが起きているんだよ、市内に入りでもしてみろ、感染しちまうだろうが」

 感染する、この一言が盛綱市に入ろうとしていた人たちに躊躇を持たらす。

「だがな、心配する必要はねぇ、私たちはそのプロフェッショナルだ。生きている奴は、全員、救出してやるぜ、そのために、ここへ来たんだからよ」

 わざとここにいる、みんなに聞こえるようにしゃべる。

「本当に妻と息子を助けてくれるんですか」

 和人の言葉には期待と希望が溢れていた。

「ああ、さっきも言っただろ、生きていていたなら助けるさ」

 ニヤリと笑うレディ・オーガの口に光る八重歯。

「これが妻の幸乃と息子の秀介です」

 スマホを取り出し、待ち受け画像を見せた。

「この子が息子……」

 目が丸くなり、伸びる鼻の下。

「隊長」

 柿木園に呼ばれ、いかんいかんとレディ・オーガは頭を振り、

「盛綱市のことは、プロに任せておけ」

 とサングラスをかけ、黒いワンボックスカーに戻る。

「良いのでしようか、バイオハザードのことを話しても」

「構わねぇだろ、話せる範囲のことは話した方がいいと思うぜ、私はよ」

 話した結果、騒動は落ち着きを見せている。もし問題があるなら、全部、自分が責任を取るつもり。

「解りました」

 アクセルを踏み、黒いワンボックスカーをスタートさせた。


 列を成し、黒い車両の一団 《ダーククロウ》は盛綱市に入っていく。

 みんなは見送る、もう強引に突破しようといるものはいなくなっていた。




 ニューナンブは製造が終了していたんですね。それでも使っている人はいられるようで。

 今はSIG SAUER P230やSAKURA M360Jを使っているそうです。

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