第40話 アーケード街
テストの騒動も落ち着きを見せ始めた頃、日程より少し遅れてアーケード街が完成した。
当初の予算よりなぜか二千万ほど多くかかったが、そこは誤差の範囲内だろう。うちのグループで横領が発覚したことはないし、する人もいないと思う。なんせ皆僕に助けられ恩を返そうと必死な人達ばかりだ。
見上げたアーケード街は立派で日差しも防いでくれている。天井近くには送風機もあり、夏場の熱も逃がしてくれそうだ。
たださ、天井の所々に七宝グループのマークが入るステンドグラスがあるのかな?要らないと思うよ。マークは僕の横顔にポニーテールのシルエットなのだが。
今日僕がここに来た理由はアーケード街完成式典への参加。挨拶は辞退したがテープカットだけでも参加してほしいとの事。渋々参加を決めたのだ。
式典はアーケード街を抜けた先にある小さな広場。お偉いさんがいるテントに向かうとペコペコ頭を下げてくる県議会議員や市議会議員。お金に従順な人たち、正直関わり合いになりたくない。
その後は商店街のみなさんと今回アーケード街製作に係った七宝グループ会社の人たちだ。皆笑顔で温かく迎えてくれた。
それにしても広場に立派なステージが出来ていたが、この式典用に用意したのか?それなら勿体ない作りである。照明まで設置されたそこは音楽ライブや演劇にも利用できるのではなかろうか。
「優様。14時より式典開始との事です。はじめに簡単な挨拶があり、その後開通式と称したテープカット。最後に余興が用意されているとの事です」
秘書ちゃんの説明を受けながらご褒美コーヒーを飲んだ。香りが強く甘目に仕上げたコーヒーは6月の軽い炎天下の中、体にしみこむ美味しさだった。
「ねぇ秘書ちゃん。二千万ほど費用が増額したのは何か理由があるの?」やはり少し気になり尋ねる。
「それは・・・その・・急遽あのステージを用意することになり・・・」
「僕に相談なしで?」
「それですね、すぐにわかると思いますので、その~」
珍しく言葉を濁す秘書ちゃんに、これは何かあるのだなと察するがステージの増設? ステージを建設して得をする人を考えた。
まず思いつくのが音楽関係。次に演劇かな? ヒーローショーなんてのもできるし、政治家の挨拶なんてのもできるな。
商店街に人を呼ぶには良い施設なのかな?
テープカットも無事に終わり余興が始まるとのこと。6月にしては30度と暑い日なたを回避するように冷房の効いた仮設プレハブ事務所へ避難した。
エアコンの効く室内は快適で、外で聞こえる音楽ライブの音が耳に入る。
「私達新人アイドルユニットなので~~す」
「みんな~覚えてかえってねぇ~」
「今日はファーストシングル恋雨歌いま~す」
遠くから聞こえる新人アイドルの自己紹介だかを聞きながらスマホをチェック。特に何もなく視界を部屋に戻すとタイムテーブルと書かれた張り紙が目に入った。
今挨拶しているアイドルグループの他にもう一組ライブするようで、書いてある名前が・・・
ラビットテール。
このためのステージ建設かっ!
秘書ちゃんに目を向けるとさっとそらされる。まぁ言いずらいわな。
母の奇行はいつもの事だがステージ建設までやってくるとは・・・この費用僕が出したんだぞ! 完成日まで遅らせやがって!
それにしてもこれは二千万円着服なのではないだろうか? 逮捕できないかな。でも趣味で二千万以上の服を作る人が罪悪感など皆無なのだろう。どうせ逮捕しても保釈金ですぐに出てくるだろうし、コネを使ってうやむやにされるだけだな。はぁ~
止まらないため息の中聞こえてきたのは大絶叫の「私の歌を聴けぇぇぇぇーーーーーー!」だった。本当に自由人である。
「優様、外でご覧になられてはいかがですか?」正直行きたくないです。でも見ないと後でネチネチ言われそう。
「そうだね」重い腰を起こした。
ライブはと言うと大盛り上がり。あんたが知名度をメイド達と上げてもしょうがないでしょうが!
母の歌声にギシギシと振動するアーケードの天井。壊れないだろうな・・・
「ラビットテール初舞台だーーーー! みんな盛り上がっていくぞーーーー!」
なに立派にライブしてやがる。
衣装はドレスやメイド服ではなく少しパンクに見せたいらしく、皆レザーで作られたスカートドレスの衣装。いい年をして何やってるんだか。
今日の予定をスマホで確認したがこの後は予定がない。時刻もまだ4時半。ライブももうすぐ終わるし、育ての母の見舞いに行こう。
盛り上がる観客に普通と吉田君を見つけたが見なかった事にしよう。
明日、普通に弁当を作れば母の奇行の口止めできないかな。そんな事を考えながらライブを楽しむ母とメイドズをぼんやりと眺めた。
本日23時もう一本。
ブックマークありがとうございます。
この頃思うのですが自分の作ったキャラクターなのに、自分の制御を離れて暴走している気が・・・
小説あるある?




