予感
処女作です。よろしくお願いいたします。
その一室は王族が住むのに相応しい場所だ。部屋の調度品は一目でお高いものだと分かるようなものばかり、しかも女性用の大きな鏡が印象的な化粧台からも分かるように、ここの部屋の住人は女性である。ついこの前までは緊張していたのだがその気持ちはすでに遠いかなたに吹き飛んでいる。
「はーっ」
この部屋の主であるお姫様を見た途端大きな溜息が出てしまった。この姫様は床に何も敷かず座り込み、全裸でこの国の国旗をカーディガンのように纏いボードゲームを楽しんでいらっしゃる。しかもボードゲームはチェス、将棋、リバーシに囲碁を対局者なしで同時に行っている。
「何その大きな溜息?悩み?私が解決できることなら協力するけど。疲れない程度に」
「じゃあ服着ろ」
「それは疲れるの範疇、協力なーし」
この女腹立つ。姫様の得意分野は人を小馬鹿にすることだと再認識する。俺に手があれば頭を思いっきり引っ叩いていただろう。女性の部屋でドキドキしていた純真な頃の自分が懐かしい。
「そういえばスズキっち、最近見ないけど。どしたの引きこもった?」
「あいつは姫様が仕事に行かせたまま戻ってきてないよ」
そういうと「ふーん」と興味なさげにボードゲームに興じ続ける。姫様は下々の者にもう少し心配りができないモノなのだろうか。
「俺はスズキを探しに行くから国外へでる、姫様国境越えの許可をくれ」
その言葉を聞いた姫様はボードゲームの手を止める。俺は国境越えの申請書を出そうとするが姫様はすくっと立ち上がり、豪華なクローゼットから外出用の服を着始めた。
「面倒じゃなかったんですか?」
「今、私の中でビビッときた。きっと私が行く価値のある出会いがある」
姫様はパパッと服を着替えていく。男の前で平気な顔をして着替えている、本当に羞恥心皆無だな。
「それに国境越えの許可の手続きの時間を考えたら、この国の王族である私が行った方が時間短縮になるんじゃないの」
あんたの道中の世話よりは楽だけどな。
簡単に着替え終わった姫様が振り返る。髪は整えていないが外用の高価な黒い服に見劣りしない灰色が印象的で、宝石と見違えんばかりの金色に近い黄色の瞳は俺を捉えている。そして口裂け女ではないかというほどに満面の悪だくみしてますと表現する笑みをするが、俺はその顔に美しさを感じてしまう。この笑みをしているときには面倒毎ばかり起きるのだ。
「さあ、行きましょうか、私の仲間を探しに」
俺はこの人を引き付ける魔性の笑みをする姫様を見るたびに思う。
この女性は美しく、不気味だと・・・。
投稿は気分次第なので不定期です。




