#32 美穂の告白
「あいつ、上手くやったみたいね。」
「うん。良かった。」
雨宮社長の家に入っていった総一の姿を見届け、真琴と美穂は安堵の言葉を吐いた。
「真琴ちゃん?」
「ん?どうしたの?」
「全然関係ない話してもいい?」
中の様子が見えないかとチラチラと伺っている真琴に美穂は話し掛ける。
「ん?話って何?」
「真琴ちゃん、栂屋さんここと、好きでしょ?」
美穂の全然関係ない話に真琴は心底驚いた。
「な、なによ。いきなり。」
「真琴ちゃんを見てたら、何となく分かっちゃって。」
「そ、そんなことないってば。あんな頼んなくて、弱っちくて、頼んない奴なんか。」
「頼んないって2回言ってるよ?」
そう言って、美穂は笑う。
「でもね?今、栂屋さんが頑張って社長さんに会いに行ってるのは真琴ちゃんの為だと思うよ。」
「そ、そうかな?」
「そうだよ。だから…」
──私は先に星の国に戻って真美施設長に何か言い訳しとくから、真琴ちゃんは栂屋さんのこと、見ててあげてね──そう言って、真琴の制止も振り切り、美穂は手を降り、その場を離れた。
「私のためか…。」
真琴が美穂の言葉を噛み締めているとき、美穂は来た道を引き返しながら
──そう、これで良かったんだよね。
「きっと、栂屋さんも真琴ちゃんのこと…。」
──初めて会ったときから、優しい笑顔に惹かれてたな。確かに頼んないとこもあるけど、凄く優しくて一生懸命で、そういうとこが素敵だったな。
「やっぱり、私も美穂って呼び捨てで呼ばれたかったな。」
涙が溢れるのを我慢していた美穂の前を乗るべき電車が通り過ぎる。
──でも、私は栂屋さんも真琴ちゃんも大好きだから。
美穂の日課である今日の″未来日記″にはこう記してあった。
──真琴ちゃんと総一さんが幸せになりますように。──と。