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ZERO 第一部  作者: 栂屋総一
ZERO 第1部 栂屋総一編
19/37

#19 九曽神家にて part4

「恋人は…いません。」


あまりにも突然過ぎる麗子の問い掛けに僕は面を食らった。


「なら、安心ね。真琴さん?」


「う、うん。」


──安心?どういう事??


僕は状況が理解出来ずにキョロキョロしていると──実はね──と由紀乃が口を開いた。


「九曽神家はね、今跡目を受け継いでくれる方を探しているの。でも、私は体が弱いでしょ?」


要するに真琴が跡継ぎを産むという重責を担っているらしい。


「真琴ちゃんはママに無理言って、星の国で働かせてもらってるの。真琴ちゃんは子供が好きだから。ね?」


相変わらず俯いたままの真琴…だったが。


──ん?耳が赤い?


「真琴さん?もしかして、栂屋さんにご説明を差し上げてないのかしら?」


「あ、あの…。はい。」


「全く…。」


「ママ?真琴ちゃんの変わりに私が栂屋さんに説明しますわ。」


僕は状況が全く把握できない。いや、跡継ぎを探しているのは分かったが。


──僕への説明??


「星の国で働く変わりに、真琴ちゃんが選んだ方をママに会わせる約束だったの。でも、約束はしたものの、この子恋愛に奥手なのよ。」


──で、お連れしたのが栂屋さんなの──と説明を受けた。


「えっと、それってどういう意味でしょうか?」


──九曽神家には跡継ぎがいなくて、真琴がそれを見つける約束で星の国で働かせてもらって、連れてきたのが…僕?


「そういう訳だから、栂屋さん?」


──もう分かったでしょ?という表情の麗子が


「あなたの遺伝子を…」


そこまで口に出した時、今まで黙り混み、俯いていた真琴が叫んだ。


「ママのばぁかーーーーー!」


それを皮切りに、しばらく親子の言い合いが続いた。


「あなたが恋愛に奥手だから、ママはお相手を見付けるのを手伝ってあげようとしてるの。」


「だからと言って、この人はそういうのじゃないの。お祓いをして?って言ったじゃん。」


「なら、ちゃんとそう言いなさいよ。」


「何回も言ったじゃん。」


ポカンとそのやり取りを見ていると由紀乃と目が合い、その表情からは──いつもこんな調子なの──というメッセージが伝わる。


その瞬間、僕は「プッ」と吹き出してしまい、それに噛み付く真琴。


「あんた、何笑ってんのよ。」


「いや、大金持ちの名家でも、親子喧嘩はするんだなって。」


「は?そんなの当たり前じゃん。バカじゃないの?」


「は?バカって何だよ。」


「だいたい、勘違いしないでよ。あんたなんか九曽神家の跡取りに全然相応しくないんだからね。」


「は?俺だって、そんなつもりでここに来たんじゃないのは真琴も分かってるだろ?」


いつも通りの僕と真琴のやり取り。これが始まるとなかなか収集がつかないのだが…。


「あなた達、お似合いね?」


「え?」


由紀乃の一言に僕と真琴はハモっていた。


「そんなことない。」「です。」


僕だけ2文字溢れて。


それから、麗子は僕に頭を下げ──真琴さんをよろしく──と告げ、その発言を皮切りに真琴と麗子で一悶着あり、やっと本題へと辿り着いた。


「ごめんなさいね。では、栂屋さんのお祓いをさせてもらいますね。」


「あ、あの、僕そんなにお金ないんですけど、分割でも大丈夫ですか…ね?」


最大の不安はそこだった。ただ──真琴さんのお知り合いですし──ということで、タダ同然でお祓いをしてもらうことになった。


そして、お祓いをするのに場所を移動しようと席を立ち、麗子、真琴と順番に部屋を出ていく、それに引き続き席を立った僕に由紀乃が話し掛けた。


「栂屋さん?」


「はい?」


「今まで真琴ちゃんの知り合いの方も何人かはお祓いを受けたことがあるのよ。」


「そうなんですか。」


──ん?何の話だろう。


「でもね?家に連れてきたのはあなたが初めてなのよ?」


そう言って由紀乃は嬉しそうに部屋を出て行った。

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