忘れていたこと・・・
翌日、学校では、真里菜と例の彼との噂で持ちきりとなっていた。相手の彼自身ももう真里菜は自分の恋人とてっきり勘違いしていたようだった。そんなこととは露知らず俺はいつものように学校に出ていた。
「あきら、知ってるか?」
だれだ?と思いきや普段は俺に話しかけてこないお調子者の伸一だった。
「何を」
「陽太の妹のこと」
陽太の妹だ?あいつ俺が陽太と仲がいいから聞いてんのか?
「陽太の妹!?それがどうした?」
「昨日の告白!!!」
その言葉に俺はドキッとした・・・俺が真里菜と話していたのを見たのか?こいつら?
「それって?」
「お前もいたじゃん?校門で」
「ああ・・そんなことか・・」
門でのことね。そう思うと俺は胸をなでおろ、しばらく、伸一から目をそらし、自分の席に向かった。無視していく俺を呆然と見送る伸一
「おい・・あきら・・待て・・」
俺は自分の席に座り、窓の方を見た。結局昨日もちゃんと言えなかった。自分が情けない・・そう思い机に伏せた。
「あきら!!」
そんな時だった。陽太に呼び出されたのは、
「あきら・・ちょっと・・」
「なんだよ~陽太」
「お前・・・真里菜のことどう思ってるんだ?」
そう言って陽太は俺の胸をドンと叩いた。
「どうって・・・?」
陽太の奴一体何のつもりだ?
「はっきりしろよ。このままじゃ・・・真里菜はやつのところへ行ってしまうぞ。」
「えっ?」
「好きなんだろう?」
陽太の一言に俺は驚き、慌てふためいて。
「ま・・真里菜は・・だな~・・い・・妹・・み・・みた・・」
俺が言う前に陽太は、背中をバンと叩いた。
「いい加減にしろ!!」
そして、俺の襟首をつかんで
「真里菜を泣かせたら・・・ただじゃ・・・おかねぇから・・」
そういうと襟首をつかんでいた手を振り払って、教室に戻っていった。
放課後、俺が校門まで行くと目の前で真里菜の例の男が話をしていた。
「なぁ~真里菜、今日どこ行く」
「行かない」
「何つれないの?ひょっとして、恥ずかしいの?」
「何言ってるのよ。」
「どうして?」
そいつも半分怒り気味で真里菜を見ていた。そこへ通りかかった俺を真里菜は見つけて、俺のほうを見つめた。俺に助けを呼んでいるかのようにそいつも真里菜の視線に気付き俺のほうを見た。
どうしよう・・・そう迷っていると
「あ・・あきらさん」
そう言って真里菜は俺に近づいてきた。その男は俺と真里菜の間に入り、俺に睨みをきかせた。
「貴様、誰だ?」
「誰って?」
「真里菜とどんな関係なんだ?」
この質問に困った俺は、ふと真里菜の方を見た、真里菜は俺の方を見ているだけだった。答えに困っていると後ろから声がした。
「何やってんだ、真里菜」
俺達が振り返ると陽太がそこに立っていた。その男は真里菜を呼び捨てにされたのがよっぽど気に食わなかったのか。俺達をおいて、陽太の前にまで行って睨みながらこういった。
「真里菜って?お前こそ一体誰なんだ!!」
その様子を見た陽太は、そいつを指差して、ちらっと俺達の方を見た。
「一体誰なんだって聞いてんだろ!!」
その時だった。
「お兄ちゃん!!帰ろう!!」
そう言って真里菜は、陽太を呼んだ。
「えっ!?おにいちゃん!?」
その男は目が点になっていた。
「おう、真里菜、あきら、帰ろうか」
そして、陽太は、その男の肩を叩いて、
「そういうことだ・・じゃぁな!!」
俺達3人は、家路についた。
「もうっ・・最低!!」
「真里菜が悪いんだろ!!」
そう突っ込みをいれる陽太に
「悪くないもん!!」
「まぁ~まぁ~」
俺が二人をなだめようとすると
バン!!
陽太が俺の後頭部を鞄で叩いた。
「痛って、何すんだよ」
「お前が一番悪い!! あっ・・・俺、用事があるから」
そういい残し俺達を置いてその場から去っていった。