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本作を見つけて頂きありがとうございます。
異世界恋愛のジャンルは初挑戦です。
初日は7話の投稿を予定しております。
結末まで構想はできておりますが、書き溜めが十話しか書けておりません。
毎日更新を続けていくためにも、皆様の応援をいただけるとありがたいです。
「嗚呼、神様。わたくしが一体、どのような罪を犯したと言うのでしょうか」
真夜中の街道を走る馬車の客室で、私は思わずそう言葉を漏らした。
今から数時間前。床に就いたばかりの私は、この国の宰相だったお父様に叩き起こされる。
それからすぐに、わけも分からぬまま屋敷の外に連れ出された。
玄関を出ると、ロータリーには一台の馬車が停まっている。
寝巻きのままだけど、これに乗れっていうことなのかしら。既にスーツケースと鞄、愛用している剣がキャビンの中に積み込まれていた。
戸惑う私に、父はこう言った。
「アリーシア。お前だけでも無事に逃げ延びてくれ……」
その言葉を聞いて私は全てを悟る。
宰相の座を追われたお父様が、ここのところ立場を危うくしていたのは知っていた。
そんな状況でも未だ公爵としての力を持つお父様を、更に追い落とそうとしている人間が王宮内に多いことも。
何か良からぬ状況になってしまっているのだけは確か。
きっとこのままでいれば、私もお父様も命に関わるような事態になっている。だからこそお父様は、今ここで私を逃がそうとしているに違いない。
「お父様は……」
そう言いかけて、言葉を飲み込む。
父は最後まで、自身の立場を貫き通そうとしているのだ。
最後にお父様の顔を見た私は、一体どんな顔をしていただろう。
「さぁ、お嬢様。お急ぎください!」
そう言って手を差し出す御者のロビン。
二月ほど前から我が家に勤めるようになった、三十代半ばの男性。
彼は、塞ぎ込んでいる私を、よく気にかけてくれていた。
父の気持ちを察した私は彼に手を引かれ、何の躊躇いもなく馬車に乗り込んだ。
「もし私に何かあっても、復讐など考えるな。お前は家の事など忘れて、これから向かう先で自分の幸せだけを考えれば良い」
扉が閉まる直前、お父様がかけた言葉が心に刺さる。
(わたくしが、殿下の心を繋ぎ止めることさえできていれば……)
後悔の念が頭を過る。
一筋の涙が頬を伝った。
思えば、全ての災難の始まりはあの時からだった。
学園に入って二年目の秋。終業式の後で行われたダンスパーティー。
婚約者であるレオナルド殿下が、エスコートしてくれるはずだった。ところが、彼が私を迎えには来ることはなかった。
一人で向かった会場には既に彼の姿が。その隣には、子爵家のエリーナ嬢が寄り添っている。
「アリーシア・ミザエル・ラヴィーヌ! 本日この場をもって、お前との婚約を破棄することを宣言する!」
問いただそうと近づいた私に、いきなり殿下はそう冷たく言い放った。
そのあと告げられる、エリーナ嬢に対して私がしたとされる罪状の数々。
私にとって、どれも全く見に覚えのないものばかりだった。
廊下でわざとぶつかり、転倒させ足に怪我を負わせた。
私が影でエリーナ嬢の悪評を広め、そのことで彼女は深く傷ついている。
主だったものとしては、そういった内容のものが殆んど。
いずれも目撃者がいて、証言もあると言う。
確かに彼女は、よく私の周りを彷徨いていた。
私の近くで勝手に転んで、こちらを睨み付けながら走り去ることもしばしば。
親しい御令嬢と話をしている最中。彼女の殿下に対する接し方について、少しは自制できないものか、くらいに苦言を呈したこともあった。
しかし、悪評を広めようとした事なんて一度もないと断言できる。
言いたいことは山ほどあったけど、あまりのショックに言葉が出てこない。
わざとらしく浮かべるエリーナ嬢の悲しげな表情。
一瞬、私と目が合い、隠れるように手と頬を殿下の胸に寄せた。
私にも甘え下手なところはあったかもしれない。
だからといって、本人を目の前にそれを見せつけるなんてあまりにも酷すぎる。
しかも、こんな公の場で有りもしない罪を着せようとするなんて……殿下は私の事をそこまで嫌っていたというの?
ショックのあまり両手で顔を覆う。
けっきょく私は何も言えず、その場を走り去る事しかできなかった。




