1 転生しました
主人公の見た目は茶色い長い髪の毛、紺よりの青い目です。
デフォルトの髪型は頭の両サイドに細い赤いリボンが結んであります。
突然だけれど、私、リリアベル・ミシュフェニスは転生者だ。
フェンスターラーデン国のミシュフェニス侯爵家の娘として生まれ、3歳のころに転生者だと気付いた。
母が一瞬目を離したすきにベッドから落ちて頭を打って前世を思い出した。いろんな意味で衝撃の場面だった。
前世で一番印象的だったのは定期的な頭痛。悲しい。なんてシンプルな人生。
そして、ドはまりした乙女ゲーム。『ティアラを受け取るのはだぁれ?』という名前で友達からおすすめされたときは「うぇぇ?ほんとにおもしろいのこれ?」となったが、実際にプレイしてみると手が止まらなくなった。
『ティアラを受けとるのはだぁれ?』は王道なストーリーの乙女ゲームだ。
何十回も見たキャラブックのあらすじには
貴族学園、ホルツシュタブ学園に入学したヒロイン。彼女はかわいらしい外見、まぶしい笑顔、純粋無垢でまっすぐな女の子だ。子爵令嬢という低い爵位だけれど、そんなことは気にせず楽しく暮らしている。これは彼女が一生懸命に学校生活を過ごし恋をする物語だ。
と書かれていた。たしか、歌姫を目指すのと、好感度を上げるのを同時進行し、学園祭でティアラを渡すのがメインだった気がする。ほかにもノーマルバッドエンドとか特殊バッドエンドとかいろいろあったが。
毎日のように夜遅くまでプレイした。今思えばそれが頭痛の原因なのかもしれない。
思い出せないことがいくつかあった。
例えば攻略対象のこととか、前世の自分についてとか。
気にしてもしょうがなかったので、それは考えないようにしていた。
そして、見事に大人びた子供に成長した。
いや、だって子供の演技とかできないし!
7歳の春、ついに婚約者が決まった。名前はうとうとしてて聞きそびれたがどうやらこの国の第2王子らしい。
私は侯爵令嬢だし、身分的には王子の婚約者にはなれるのか。
数日後に会うことが決まった。
「うう、今から緊張する……胃が痛い…」
部屋の隅でうずくまってる私に専属侍女のマリーが声をかけてきた。
「大丈夫ですよ、お嬢様。第2王子殿下は噂だととてもお優しく穏やかな方だそうです。少しくらい礼儀作法を間違えても怒るような方ではないと思います」
「そう、よね」
そう、侍女たちに聞いた話だとその第2王子とやらは8歳にして文武両道、秀才、そしてすごく優しいらしい。私にはもったいない方だ。
せめて足を引っ張らないようにきちんと学ばなければ!
そして、面会の日がやってきた。
裏庭のテーブルで王子が来るのを待つ。
あー。テーブル白いなぁ
「お嬢様。そんなに見つめてると穴が開いてしまいます」
「ごめん、マリー」
どうやら私は緊張しすぎてテーブルをじっと見つめてたらしい。
「第2王子殿下がいらっしゃいました!」
そういわれて、私はあわてて立ち上がる。
ピシっと姿勢を正して目の前の人物を見つめる。
宝石のような黄緑の瞳、茶色がかった金髪。整った顔はどこか中性的だけど男の子っぽいところもあって、こんな美しい人を私は初めて見た。
「はじめまして、ミシュフェニス嬢。僕はウィリアム・クォーツェルフェン」
そういわれて頭に衝撃が走った。ウィリアム・クォーツェルフェン…『ティアラを受け取るのはだぁれ?』の攻略対象のひとりだ。
そうか、ここは『ティアラを受け取るのはだぁれ?』の世界だったんだ。
ウィリアムは攻略対象の中で一番人気だった。顔はよくて、文武両道で頭もよく、表向きは優しい。そう、表向きは。彼は腹黒執着溺愛王子枠だ。それも人気要素の一つだったのかもしれない。ちなみに、私はヒロイン推しだ。
そして、リリアベルは顔はいいのに地味すぎて婚約者に興味を持ってもらえずヒロインにあっさり奪われるかわいそうなモブ令嬢。
どうりで前世の記憶を思い出したときに気づかないわけだ。
「腹黒王子…」
そう呟いて私は意識を失った。
***
目が覚めると自分のベッドの中にいた。そうだ、気を失ったんだった。
体を起こして周りを見てみると、ベッドの横の椅子に私が気を失った原因がいた。
「あ、目が覚めた?」
ウィリアム・クォーツェルフェンだ。
「は、はい。」
そして、だんだん意識がはっきりとしてきて気を失う前の記憶がよみがえってきた。
私は顔から血の気がサーっと引くのを感じた。
私、本人に腹黒王子って言っちゃったよね⁉
「殿下…」
「うん?」
笑顔は優しいけど、目は笑ってない。やっぱり腹黒王子なんだ。
「気を失う前、失礼なことを申し上げたことをお詫びいたします。大変申し訳ありませんでした。」
私は頭をしっかり下げた。
頭上から降ってきた声はどこか楽し気だった。
「ふぅん?常識はあるみたいだね?ああ、顔を上げていいよ。」
「ありがとうございます」
顔を上げると面白そうに細められた黄緑の瞳がまっすぐ私を見据えていた。
「それで、どうしてあんなことを言ったのかな?」
ですよねぇ…聞かれますよねぇ…
どうしよう、どうしよう!?
そして私はとっさに
「あ、えっと、あ…頭痛が」
と言って毛布にもぐりこんだ。
「ふ…ふふふ」
王子が楽しそうに笑い出した。
笑い声だけ聞くと年相応のかわいらしいものだ。
私は頭痛がする設定なので何も返さない。
「まあ、とりあえずは許してあげる。またくるね、リリー」
きゅ、急な愛称呼び!?恐るべし攻略対象…




